万博(2025年大阪万博)-1
2025年大阪・関西万博-(井上浩平)


2024.03.28-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240328-IGHKCZED4BKJJNGIMEOO3P4DVY/
<独自>能登被災者を万博に招待へ 大阪府の吉村知事が方策検討 特産品の展示も

  大阪府の吉村洋文知事は28日、今年1月に発生した能登半島地震で被災した子供や家族を、来年4月に開幕する2025年大阪・関西万博の会場に無料で招待することを検討していると明らかにした。同日、産経新聞の取材に答えた。

  吉村氏は「被災地でつらい思いをした子供や家族に、万博会場で未来社会を体験し元気になってもらいたい」と述べ、具体的な方策を検討するとした。
  また、吉村氏は万博会場で石川県内の特産品や伝統工芸品を展示する構想も明らかにし、「万博で多くの人に能登の素晴らしい特産品や技術に触れてもらうことも一つの復興支援の在り方だ」とした。
  一方、万博会場の建設工事が被災地の復旧工事の資材や人手に影響することが懸念されている点については「被災地の復旧は日本の最優先課題。支障が出るのではあれば復旧を優先すべきだ」としたうえで、「万博の工事は種類や内容で復旧工事と重なる部分がほとんどなく、日本全体の工事の規模と比べれば小さい」との考えを示した。


2024.03.27-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240327-Y4XES6DLEBPJXDZUFEMMICNC4Y/
2024年問題㊤-建設業界を万博が直撃 深刻化する人手不足 〝処方箋〟あるのか

  3月中旬、大阪湾に浮かぶ人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花(このはな)区)。好天に恵まれた2025年大阪・関西万博の会場の建設現場では、約7割が完成した大屋根(リング)が威容を見せ、リング内側の「静けさの森」や、民間企業のパビリオンの姿も一部見えていた。 だが、海外政府が独自で設計・建設する「タイプA」パビリオンの姿は、まだほとんどない。来年4月13日の万博開幕まで約1年。会場の整備に携わる建設会社の関係者は「すべてのタイプAが開幕に間に合うことはないだろう。異常事態だ」とため息をつく。

  タイプAを選んだ60カ国中、建設会社と契約を終えたのは今月22日時点で36カ国にとどまる資材価格高騰や慢性的な人手不足で建設業者との価格などの条件が折り合わず、契約不成立の状況が続いたことが大きい。 加えて4月からの時間外労働の上限規制に先立ち、建設会社は1日の労働時間を制限。限られた工期では思い通りに作業できず、ある国の関係者は「パビリオンの仕様をすべて見直した」と打ち明ける。

  能登半島地震の復興工事「主に北陸周辺の業者が携わっているためか、万博の工事への影響はない」(東京商工リサーチ関西支社情報部の瀧川雄一郎氏)という。だが、関西での万博以外の現場は「万博に人手を取られている」(大阪の建設会社社長)ゼネコン関係者は「ほかの地域の工事を手掛けられなくなるので、万博の工事は請け負えない」と漏らす。  
  人手不足は全国の建設現場に広がる。苦境の背景にあるのは労働人口の減少や建築需要の高まりだ。時間外労働の上限規制はさらに追い打ちとなる。「ひと昔前は(同じ作業員が)昼夜を通して工事をしたのが、今後はできなくなる」。ゼネコン関係者はこうこぼす。 
  また電気設備工事などを請け負うサブコンが、人手不足などを背景にゼネコンからの発注事業を「選別する傾向が強まっている」(建設業界関係者)半導体大手、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県での工場建設など、サブコンはさばききれないほどの仕事がある。選別から漏れた事業は、遅れが生じるなどの弊害が出ている。
  人手不足をどう乗り越えるのか。万博の建設現場では大手ゼネコンがドローンや顔認証技術を導入して省人化をはかるが、資金やノウハウの乏しい中堅・中小企業には難しい。
  万博の韓国館を受注した不動産開発会社のリバー産業(大阪府岸和田市)は東南アジア出身者を積極的に登用河啓一社長は「技術が未熟でも、外国人に作業員として来てもらわないと労働力がない」と話す
  効果が見込まれるのは賃上げで、今も高い賃金を出せる建設会社に人材が流れている。万博の会場整備に詳しい専門家は「熊本での半導体関連の建設現場では、通常の何倍もの高額な日当が提示されたようだ」と語る。
  だが、やみくもな賃上げは自らの首を絞めかねない。東京商工リサーチによると、無理な賃上げで人件費が膨らむなどした建設業の人手不足関連の倒産は、令和4年の14件から5年は29件へと倍増した
  近畿大建築学部の岩前篤教授(建築環境工学)は「建設会社は施主や発注者に対し、人件費の増額分を建設費に上乗せするよう交渉すべきだ」と話す。
  そしてこうも訴えた。 「設計や用地取得から建物完成までの『上流から下流』の工程にかかるコストを下げるなどの、業界全体の取り組みも不可欠となる」
  4月から建設、医療、物流の各業界で時間外労働の上限規制が始まり、人手不足がより深刻になる。「2024年問題」だ。苦境を乗り切る〝処方箋〟があるのか探る。


2024.03.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240322-SALC727ATBN77JQUMZGZFKJAFI/
2億円トイレ騒動 万博協会は詳細説明せず 批判続出、建築家「理念伝わっていない」と憂慮

  2025年大阪・関西万博の会場に整備されるトイレが物議を醸して久しい。入札が行われた8件のうち一部の落札額が2億円近くに上り、交流サイト(SNS)などで高額との批判が噴出整備費の大半が税金を原資とするにもかかわらず、日本国際博覧会協会は騒動から1カ月以上たった今も詳細を説明していない専門家は協会の情報発信のあり方を疑問視している

《1970年大阪万博と同様に2025年大阪・関西万博を若い世代の活躍・飛躍のきっかけとする》
  騒動の発端は、協会がこう位置付けて実施したコンペに遡(さかのぼ)る70年万博では、磯崎新氏や黒川紀章氏ら当時の新進気鋭の建築家が会場設計に関わり、注目された
  今回、協会は昭和55年以降に生まれた建築家を対象に令和4年3月、トイレなどの設計案を募集書面やヒアリングによる審査を経て同年8月に設計者を決定し、建設業者に発注するための一般競争入札を実施した
  今月21日時点で入札を行った8件のうち、成立は7件。なかでも2件の落札価格(税込み)はそれぞれ撤去工事費を含め1億9228万円と1億8244万円に上った残りの1件は昨年7月と今年2月に入札を行ったが不成立だった。
  トイレの整備費は国と大阪府市、経済界で等分負担する会場建設費を財源とする。会場建設費は3分の2が税金で、これまで当初比1・9倍の最大2350億円に増額された経緯もあり、SNSでは2月ごろから「税金の無駄遣い」といった投稿が続出した。
  これに対し政府などは釈明に追われた。自見英子(はなこ)万博相は2月、「2億円トイレ」と物議を醸した2件について、それぞれ50~60基の便器を配置する大規模なものだとして「必ずしも高額とはいえない」と強調した。
  大阪府の吉村洋文知事は1平方メートルあたりの単価に換算して反論した。吉村氏によると、2件のうち面積約250平方メートルのトイレは単価約80万円府営公園2カ所(面積はいずれも約50平方メートル)の単価80万~100万円と比べ「変わらない」と主張し「建築家の魂が入っている」とも強調した。
  ただ公園のトイレは常設で撤去工事費が含まれないため、単価を比較するだけで金額の当否を判断するのは難しい
  協会は設計案の募集に際し「多様でありながら、ひとつ」との会場デザインコンセプトを踏まえ、SDGs(持続可能な開発目標)達成につながる提案を求めた。
  「2億円トイレという言葉が先行している。華美なものをつくろうとしているわけではない」。2件とは別のトイレを設計した建築家の米沢隆氏(41)は産経新聞の取材にこう訴えた
  SDGsに関連し、米沢氏は2月、X(旧ツイッター)でトイレをブロックごとに解体し、移築しやすい設計にしたことを紹介。万博閉幕後に公園などでの再利用を想定しているという。現状について「資源循環を目指した設計の理念が伝わっていない」と憂慮した。
  協会は全ての落札業者が決まった段階で「建築家による発表の場を設ける」(担当者)としているが、入札1件が不成立のままで発表時期は定まっていない。
  危機管理コンサルタントの田中辰巳氏は「東京五輪での汚職事件などが続く中で万博関連の費用が膨らみ、国民は辟易(へきえき)している」と指摘。協会に対し、万博の費用に関する情報を納税者である国民に丁寧に公開・説明するよう求めた上で「本質的に、何のために万博を開催するかが曖昧になっているのが問題だ。逆風の時期こそ意義をしっかり打ち出す必要がある」と話した。


2024.02.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240203-G6BECLFUMVO5LLCJGATCS2KUTY/
高市早苗氏、万博延期論「物議醸した」とXに投稿 首相への進言を講演で「暴露」の理由も

  高市早苗経済安全保障担当相は3日、能登半島地震への対応を優先させるべきだとして、2025年大阪・関西万博の延期を岸田文雄首相に進言した経緯を自身のX(旧ツイッター)に投稿した。延期論が「物議を醸した」と認めつつ、マスコミに首相との会話内容が漏れたため、先んじて自ら公表したと説明。予定通り開催との政府方針に服する姿勢を示した

  高市氏は1月27日に行った講演で、首相と16日に面会した際、万博延期を進言したと自ら暴露。大阪を地盤とする日本維新の会の馬場伸幸代表が「政治家の信念でそれ(延期)を言い続けるなら辞職すべきだ」と反発するなど、波紋が広がっていた
  高市氏は3日、「万博延期論で物議を醸しておきながら‥」の書き出しでXに経緯説明を投稿。首相が国会で予定通りの開催を表明したことにも触れつつ「資材不足・資材価格高騰や人手不足で困る方々が出ないよう、引き続きの御尽力をお願い申し上げたい」と記し、政府の開催方針に服する姿勢を示した
  講演で延期進言を明かした理由については、記者から首相との会話内容について取材の電話があったためだと説明。「1社のスクープになると他社の後追い取材が続き、総理にも政府全体にも与野党の皆様にも大迷惑をかける」と考え、自ら公表したと釈明した。


2024.01.29-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240129-WNDKVXTSUVJX3LHKNSE66EGXCA/
「民間のアイデア」求む 万博跡地の開発事業者、2段階で募集 大阪府市

  大阪府と大阪市は29日、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)で開かれる2025年大阪・関西万博会場の跡地開発を巡り、今年夏ごろに1次募集として民間事業者から開発計画の提案を受けると発表した。事業者の提案をもとに府市で基本計画を策定し、万博閉幕後の令和8年度以降に開発事業者を決める2次募集を実施する。

  開発の対象エリアは、府市と経済界が万博に出展する地元館「大阪ヘルスケアパビリオン」や大阪メトロ中央線夢洲駅の一部敷地などを除く約50ヘクタール。横山英幸市長は記者団に「万博後のベイエリアのビジョンを示す。民間の持つアイデアを募集したい」と述べた。
  万博会場の跡地開発を巡っては、府市が4~5年に民間事業者を対象に市場調査を実施。11事業者からアリーナや劇場、サーキット場などの提案があった。


2024.01.27-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240127-AKNNUUD7SJLPJMSR7MEZ3H3774/
「万博延期を首相に進言」高市早苗経済安保相が講演で 出席者明かす

  自民党の高市早苗経済安全保障担当相は27日、長野市内の会合で講演し、能登半島地震の復興を優先すべきだとして、2025年大阪・関西万博の開催延期岸田文雄首相に進言したと述べた。現職閣僚が延期に言及するのは異例。週明けの国会論戦でも争点の一つとなる可能性がある。出席者が明らかにした

  出席者によると、高市氏は16日に首相と面会した際「被災地の復興に影響が絶対出ないようにしてほしい」と伝えたと説明。万博を延期すべき理由として、復興に必要な資材の価格高騰や人手不足を挙げた。同時に「延期は難しいと思う」とも語ったという。
  万博を巡っては、自見英子万博相が地震を受けた対応について「延期や中止の議論はない」と指摘。日本国際博覧会協会の会長を務める十倉雅和経団連会長も、地震に伴う延期を否定している。


2024.01.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240123-YN7YHMX7QBOWDAKZASPBSSO6OM/
第1部(3)空飛ぶクルマで移動革命 「未来の乗り物」示す意義

  便利で快適な乗り物を追求する人類の願いに際限はない。すでに電気で走る自動車は普及した。近い将来、〝クルマ〟が空を行き交う世界は実現するのだろうか。大阪湾を舞う白い機体は、驚くほど静かで機敏な動きをみせた-。昨年12月中旬、2025年大阪・関西万博の会場となる人工島・夢洲(大阪市)近くの大阪ヘリポートで行われた「空飛ぶクルマ」の実証実験。会場の行政関係者や子供たちが離陸を待ち続けた緊張がゆるんだ瞬間、目の前の機体が勢いよく垂直に高度20メートル付近まで浮かび上がった。

  「ほぼ何も聞こえないはずだ。まずは騒音の低さを強調したい」。実験を行ったドイツ・ボロコプター社幹部のクリスチャン・バウアー氏は声を張り上げた。
  機体は兵庫県尼崎市方面に向かった後にターン。子供らは歓声をあげ、万博での空飛ぶクルマ実現を喧伝(けんでん)してきた大阪府の吉村洋文知事は興奮した様子でいすから腰を浮かし、空へとスマートフォンを向けた。
経済効果も期待できる
  空飛ぶクルマは、国や航空会社、商社などが一丸となり、25年万博での運航を目指している。見た目はヘリコプターやドローンに近い。ただ、斜めに進入するヘリと違い、電動で垂直に昇降するため、離着陸スペースが少なくてすむ。一方、ドローンが基本的に無人であるのに対し、空飛ぶクルマは有人だ
  万博ではボロコプターと組む日本航空など4グループが運航を予定。政府が昨年3月に公表した計画では、2020年代後期以降は特定のエリアを複数の機体が飛び交う「中~高密度」で運航し、30年代以降は操縦者が搭乗しない「自動・自律運航」を実現する。
  大阪府が設立した会議「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」の資料によると、空飛ぶクルマの市場規模は大阪・関西だけで約920億円、経済波及効果は約1530億円。周辺企業の機運も高まっている
  「一からの開発で困難はあるが、空飛ぶクルマを支える技術を万博でしっかりみてもらいたい」。こう意気込むのは、関西電力で空飛ぶクルマの充電設備開発を担当する古田将空(まさたか)eモビリティ事業グループ副長だ。
  同社は万博で運航事業者に選ばれたスカイドライブ(愛知県豊田市)、英国の機体メーカーのバーティカル・エアロスペースと業務提携し、各機体に合わせた充電設備の共同開発を進めている。
1970年万博にはEV登場
  乗り物は日常生活に身近で便利さを実感しやすいだけに、技術革新が大きな注目を集める。
  ガソリン車が当たり前だった1970年。大阪万博の会場では、計275台の電気自動車(EV)が登場した。最高時速はわずか15キロながら、タクシーとして来場客を乗せ、警備や食料運搬にも使われた。
  大気汚染が社会問題だった当時、ダイハツ工業が排ガスや騒音のない車を目指し他社に先駆けEV開発に着手していたのだ。万博に納入したEVは世界中からの来場客に日本の技術力とともに近未来の社会を体感させた
  ダイハツ工業は1970年大阪万博後も電気自動車(EV)開発を続け、新聞配達車やゴルフカートを発売した。だが量産は難しくEV開発は縮小。担当者は「鉛蓄電池のコストが高く採算が取れなかったようだ。早すぎる技術だったかもしれない」と振り返る。
  そして今、小型化・軽量化や急速充電が可能なリチウムイオン電池を搭載するEVの開発競争に日米欧中のメーカーがしのぎを削っている。2025年大阪・関西万博にもEVが登場。大阪メトロは、会場内で運行するEVバスの35台中4台を、システムによる完全な自動運転「レベル4」とする
  25年万博には空飛ぶクルマ、自動運転EV、水素を燃料とし、運航時に二酸化炭素(CO2)を出さない水素燃料電池船なども姿を見せる1970年万博に登場したEVや「動く歩道」はその後、実用化された。2025年万博の「未来の乗り物」は普及するのか
実用化には意識改革も
  昨年12月、大阪府八尾市の商業施設で、空飛ぶクルマの実機の展示やVR(仮想現実)機器を使った飛行体験を実施。多くの市民が詰めかけ関心の広がりがうかがえた。だが、万博を機にどこまで実用化するかには課題も多い。
  万博での運航事業者4グループの1つ、丸紅は万博にあわせての商用運航を断念し、操縦者のみで客を乗せない「デモ飛行」とすることを決めた。空飛ぶクルマは航空法の規制対象で、商用化の前提となる量産には機体の安全を担保する「型式証明」を取得しなければならないが、技術確立が間に合わないためだ
  開発中の充電設備についても、空飛ぶクルマは機体の統一規格がまだないため、個別の機体とのすり合わせが必要。重すぎず航続距離を稼げる電池の開発も不可欠だ。
  人々の〝意識改革〟も求められる。八尾市で実機を展示した開発メーカー、テトラ・アビエーションの新井秀美取締役はこう指摘する。「普及には、頭上の低い高度を飛ぶことを市民が受け入れる『社会受容性』が課題となる」 パナソニックホールディングスの宮部義幸副社長は、中学生のとき1970年万博の会場で見たワイヤレステレホンに衝撃を受け、職業の選び方が左右された。
  宮部氏は未来の乗り物の展望をこう語る。 「万博は未来への大きなビジョンを示し、その方向へ切磋琢磨(せっさたくま)していくきっかけを得る場。実現に向かって社会が動いていくことが大切だ」


2024,01.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240118-LVXQZU36L5PWNPOBJ3Q526D62I/
鏡で自分のコピー生成 落合陽一氏の万博パビリオン
(黒川信雄)

  2025年大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会は18日、メディアアーティストの落合陽一氏が手掛けるパビリオン(テーマ館)の展示内容を発表した。パビリオンは鏡のように自分の姿を映し出す特殊な膜で作られ、来場者が鏡に話しかけると、専用のアプリにデジタル化された自分のコピーが生成される仕掛けなどが提供される。

  パビリオンのテーマは「いのちを磨く」で、「磨く」の言葉から鏡の着想を得たという。鏡のような膜は、樹脂系と金属系の素材を合わせて製造される計画で、テント大手の太陽工業(大阪市)が開発を進めている。建物は今月9日に着工しており、来年1月に完成する予定。
  来場者にはスマートフォンなどにダウンロードして使う専用のアプリが提供される。落合氏は「館内の鏡に向かって質問に答えたりすると、声や姿の映像情報から、アプリの中で自分のコピーが形成されていく」と説明。そのデジタル化された〝自分〟を活用することで「さまざまなサービスが生まれるのでは」と予想した。(黒川信雄)


2024.01.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240112-DMRJSVLDHFOYHAFTWT3GDYG444/
万博会場、食品の持ち込みは原則禁止 子供のおやつ、学校団体の弁当などはOK

  万博協会は12日、2025年大阪・関西万博の会場への食品の持ち込みを原則、禁止するとした規約を公表した。セキュリティー対策を強化し、手荷物検査に時間がかかって入場ゲートで滞留する事態を防ぐ。

  禁止するのは食品全般と瓶や缶に入った飲料、酒類全般。ベビーフードや子供のおやつ、学校団体の弁当、マイボトルやペットボトルなどは認める
  05年愛知万博(愛・地球博)でも初め飲食物の持ち込みを禁止したが、小泉純一郎首相(当時)の指示で撤回し、手作りに限り弁当持参容認に転じた


2024.01.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240107-5H7UICJRDFNKDBFKSN7UX25SRU/
海外からも非難…ずさんな万博誘致 大阪経済部・黒川信雄

  「彼らは何千キロも離れた国からやってきて、こんな扱いを受けている信じられない。日本は様変わりしてしまったようだ」 昨年の11月14日から2日間の日程で大阪市内の国際会議場で開催された、2025年大阪・関西万博の参加国への出展説明会。初日の夜に行われたレセプション会場を取材していると、海外政府関係者からこんな声が聞こえてきた。

  見ると、華やかな会場の外で、じっと立っている海外参加者らがいる。その一人が記者に「1カ国あたりの参加者数が制限されているために、食事もせずに外で待っている人々が何人もいる」と説明してくれた。その人も、自国の別の担当者に席をゆずり、外で待っていたのだ
  日本側は本当にそのような対応をしたのか。日本国際博覧会協会の幹部に問いただした。すると「スペースの問題があった」と答えたが、「予算がないことも理由だったのでは」と問いただすと「それもある」と認めた。予算が足りなかったのだ
  このような場面もあった。万博をめぐる否定的な報道が相次ぎ、機運醸成が進まない現状にいらだつ海外政府関係者が記者にこう詰問した。 「万博の予算が増えて、あなた方が支払う税金が増えて不満に思うことは分かる。しかしそれでも、あなた方は万博を誘致したんだ。その責任をどう捉えるのか」
  万博関連の支出をめぐる問題は終わりが見えない。会場建設費が当初計画の1・9倍の約2350億円に増え、運営費も約1・4倍の1160億円に増額される見込みだ。売り上げの大半が運営費に充てられる入場券も、前売り券の約700万枚の購入を企業が請け負う計画だ。「もう勘弁してほしい」「会社から入場券をもらって行く万博に意味があるのか」。企業関係者からは率直な言葉が漏れる。

  大阪・関西万博は誘致段階から、計画があまりにずさんだったと言わざるを得ない。資材価格の高騰などもあるが、国際イベントは予想外の事態を踏まえて計画するのが当然だ。直前のドバイ万博は、コロナ禍という逆風下で開催された。「誘致した責任をどう捉えているのか」。大阪、日本はその言葉を忘れるべきではない。

黒川信雄-平成13年日本工業新聞社入社。産経新聞経済本部、外信部を経て26年11月からモスクワ特派員を務めた。30年1月から経済部(大阪)。


2023.12.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231225-UREGBHBTLJNUFC2G7EQXO5UGCU/
逆風の祭典、高揚感は消え…大阪万博コスト上振れ リーダー不在「情報公開を」
(五十嵐一)

  空気が重い。壇上の2人は手元の書類に目を落とし、表情を曇らせた。 10月20日、大阪市役所の一室。横山英幸市長と吉村洋文大阪府知事は、2025年大阪・関西万博の運営主体「日本国際博覧会協会」(万博協会)とのオンライン会合に臨んでいた

  議題は最大の懸案である金(コスト)の問題。会場建設費の2度目の上振れについてだった。当初想定の1250億円は3年前に1850億円、さらに2350億円まで膨れ上がった。
  協議は公開され、記者団には大枠の数字だけが記載された簡単な書面が示された。もっとも吉村、横山両氏に配布された書類も、同様に「中身のない報告」(府市関係者)だったという。
  建設費負担は国、大阪府市、経済界が3分の1ずつ。吉村氏は上振れ分の数字の詳細開示を要求。「納得いかなければ突き返す」とも語った。
  府市は11月になって上振れ容認を表明したが、今月14日の万博協会理事会では、会場建設費とは別のコストである会場運営費(人件費、警備費など)が、当初想定の809億円から約1・4倍の1160億円に増額される方針が示された。
  「趣旨は分かるが、やはり実務的に一つ一つチェックを強化する必要があると判断した。収支をきちんと把握する第三者委員会が必要だ」
  吉村氏はこの理事会で外部有識者で構成する「執行管理委員会」の立ち上げを提案した。協会だけにコスト管理を任せておけない-。そんな不信感が透けて見えた。
誘致から5年
  万博の大阪誘致が決まったのは2018(平成30)年11月。パリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)の総会で加盟国による投票が行われ、決選投票で日本がロシアを破った。
  「これまでの万博の常識を打ち破る」と、パリの会見場で抱負を語ったのは当時の松井一郎府知事。その傍らに大阪市長だった吉村氏もいた。
  そもそも2度目の万博誘致は、地域政党「大阪維新の会」の創設メンバーである松井氏と橋下徹氏が、1970年万博時代の「輝ける大阪」を再興させようと一計を巡らせたことに始まる。維新と蜜月関係にあった首相の安倍晋三氏もこれに共鳴し、万博誘致は国策となった。
   もっとも現代における5年という歳月は、テクノロジーや価値観を根本から変えるのに十分な長さだ。新型コロナウイルスのパンデミック、誘致のライバルだったロシアのウクライナ侵略、世界的な物価高を経て、パリの地に満ちていた万博の高揚感は霧消した。安倍氏は銃撃事件で非業の死を遂げ、松井氏は政界を去った。
68%が「不要」
  共同通信が今年11月に行った全国電話世論調査によれば「万博不要」は68・6%。度重なるコストの増額のみならず、海外パビリオンの建設遅滞やメキシコ、ロシアの撤退などネガティブなトピックばかりが、全て報道先行で発信される。

  「理念とマネジメントの不足が招いた迷走だ。万博はもはや最新技術の展示場ではない」。万博に詳しい京都大大学院法学研究科の中西寛教授(国際政治)はそう指摘する。さらに「建設費の増額も早くから見通せたこと。万博協会は一時的な腰掛けの寄り合い所帯で、取りまとめのリーダーがいないから対応が遅れる」と手厳しい。
  一昨年の東京五輪でもコストの上振れが繰り返され、さらに汚職事件の舞台にまでなってしまった。「税金を投入して大型イベントをやることへの忌避感が今の国民には根強くある」(中西氏)
  来春には万博まであと1年のカウントダウンが迫る国が威信をかけて誘致した万博の中止・撤退はあり得ない吉村氏は今秋ごろから「積極的な情報公開」を盛んに訴えるようになった。市民に判断材料を提供し、丁寧に説明するという地道なプロセスしか忌避感払拭の道はない
(五十嵐一)


2023.12.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231219-UYKOSOVT5BIARLCL5YQH4FM4CY/
万博、これ以上の国民負担許されず 国費負担1647億円
(井上浩平)

  2025年大阪・関西万博にかかる国費負担が、1647億円に上ることが明らかになった。万博関連費用をめぐっては、会場建設費が当初想定の約1・9倍の最大2350億円、運営費が同約1・4倍の1160億円に増額される見込みとなるなど膨張を続けている甘い見立てのもと、国民の負担が増すばかりだが、これ以上の安易な増額は許されない。

  「万博は国民全体で盛り上げるべきプロジェクト。さまざまな声に真摯(しんし)に耳を傾け、しっかりと対応したい」自見英子(はなこ)万博相は19日の記者会見でこう語った。今回、万博の国費負担の詳細を明らかにしたのは、会場建設費が膨らみ、野党から追及を受けた岸田文雄首相が費用の全体像を早急に示す考えを表明したためだ。
 自見氏は国費負担の内訳を説明する中で、「透明性をもって示したい」と繰り返し強調し、数字を「アップデート」していく考えを表明した。万博関連費は増え続けており、巨費を投じて開催する意義が問われている。政府が万博の誘致段階で試算し、更新されていない「2兆円」とする経済波及効果について、自見氏は再試算するよう指示したと明かした。
  また、経費の適切な執行管理のため、経済産業省に公認会計士や建設コンサルタントなどによる「進捗(しんちょく)監視委員会(仮称)」を来年1月にも設置。経産省が日本国際博覧会協会に補助・委託した事業費や、協会の運営費の執行状況を3カ月ごとに確認するとした。
  万博関連費では、会場建設費がすでに2度増額している。運営費は入場券収入で大半を賄うが、赤字になった場合の補填(ほてん)方法は示されておらず、警備費が別枠で国費負担となった経緯もある。
  政府は万博を重要な成長戦略と位置付けるが予算は青天井ではない。費用負担について国民に説明を尽くし、さらなる増額という事態に陥らないようにすべきだ
(井上浩平)


2023.12.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231216-QFPXHYYR2BPOVDWBDWV4KMIUZE/
万博国費1647億円に 政府試算、追加も検討

  2025年大阪・関西万博にかかる国費の総額を巡り、政府は最大で計1647億円と試算していることが16日、関係者への取材で分かった。今後、イベントを盛り上げるための広報費用なども追加を検討している。自見英子万博相が19日に公表する方向で調整している

  内訳は既に判明している会場建設費の国の負担分が783億円、パビリオン「日本館」の建設費用などの国負担が837億円、万博誘致などにかかった費用が27億円としている。
  関連費用の全体像も試算した。国や自治体、民間などのインフラ整備事業などで約9兆7千億円、「空飛ぶクルマ」といった万博で計画されている実証事業などに約3兆4千億円とした。ただ、これらは本来の行政目的に使われる事業も含まれており、万博に限定した金額を算出するのは困難だとしている。
  万博の費用を巡っては、会場建設費が当初想定から1・9倍に膨らんだことなどを受け、岸田文雄首相が会場や周辺インフラの整備など費用の全体像を早急に示す考えを表明していた。


2023.12.11-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/ASRDC64WDRDCOXIE038.html?comment_id=20587&iref=comtop_Appeal5#expertsComments
万博運営費の増額 「赤字でも大阪府市は負担せず」 吉村知事ら
(野平悠一)

   2025年大阪・関西万博の運営費が1千億円超に引き上げられる見通しとなったことをめぐり、大阪府の吉村洋文知事と大阪市の横山英幸市長は11日、運営費に充てる収入が不足した場合の対応について、府と大阪市が公費負担することはないとの考えを示した。

  運営費は主に入場料収入でまかなうことになっているが、不足した場合の対応は決まっていない。約1200億円の赤字となった00年のドイツ・ハノーバー万博では、政府と地元自治体が穴埋めしている。
  吉村知事は11日、報道陣の取材に、西村康稔経済産業相が国会で「国が補塡(ほてん)することはない」と答弁したことを念頭に「万博は国の事業で、国が(不足分を)負担しない中、府市が負担するわけがない」と説明。その上で、運営費の対応については、14日に開かれる日本国際博覧会協会(万博協会)の理事会で協議する意向を示した。横山市長も11日、報道陣に「府市で(赤字を)カバーする認識はありません」と述べた。
  運営費は当初809億円と見積もられていたが、人件費の高騰などで1千億円超に膨らむ見通し。万博協会が14日の理事会で報告する方向で調整している。
(野平悠一)


2023.12.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231203-XUDAUKJWPVMUNAOP7LMYQN34J4/
万博「大屋根」議論過熱 負の遺産化に懸念 大阪経済部・井上浩平

  開幕まで500日を切った2025年大阪・関西万博をめぐり、季節外れの「日傘」に関する議論が過熱している。大阪湾の人工島、夢洲(ゆめしま)(大阪市)の万博会場中心部に設置される環状の大屋根(リング)のことだ大屋根は1周2キロ、幅30メートル、高さ最大20メートル、来場者が屋根の上下を歩くことができ、自見英子(はなこ)万博相は「日よけの熱中症対策として大きな役割を果たす」との認識を示している。

  完成すれば世界最大級の木造建築となるが、会場建設費が2度の増額で当初比1・9倍の最大2350億円まで膨張する中、設置費用が350億円かかるとあり、国会でも「無駄遣いの象徴」として批判のやり玉に挙がった。
  ふり返れば、大屋根は当初の構想では建設予定はなかった。今回の万博では、1970年大阪万博の「太陽の塔」のようなシンボルを設けず、パビリオンなどの施設を幾何学的に配置する「非中心、離散型」を標榜(ひょうぼう)。そうすることで「多様性の中から生まれる未来社会」を表現するとしていたはずだが、崇高な理念はあっさりと取り下げられた。
  大屋根は建設費1250億円から1850億円に最初に増額となった令和2年末、トイレ設置や暑さ対策などとともに盛り込まれ、会場イメージ図は大幅に変更。ただ、当時は計画変更について賛否の議論は盛り上がらなかった。
  今年11月、万博の応援団である関西経済界から驚く証言が出た。関西経済連合会の松本正義会長が定例会見で、設置に関し「経済界がイエスといったかどうか記憶がない」と言及。「突然、(建築の)専門家が入ってきて、そうなった。それを皆が認めた」と舞台裏を明かしたのだ。
  一方、設計者で建築家の藤本壮介氏は、同月のイベントで大屋根の内側に海外パビリオンが収まる構想を説明し、「世界中の人が大屋根の丸の中で交流する。多様性がつながるメッセージとして発信できる」と、意義を強調した。
  万博閉会後の大屋根の活用について、日本国際博覧会協会は解体する方針としていたが、つい最近、解体せずに移設する案が浮上するなど迷走が始まっている。計画のずさんさが指摘される万博の、ネガティブな意味での象徴にならないかと懸念している。

井上浩平-平成26年入社。神戸総局を経て社会部で警察、大阪府市の行政を取材し、令和3年10月から経済部。大阪の財界や金融などを担当している。







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