ミサイル関連の問題


2019.12.13-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191213/k10012213311000.html
米 中距離弾道ミサイルの実験実施 中ロが反発か

アメリカとロシアのINF=中距離核ミサイルの全廃条約が失効したことを受け、アメリカ国防総省は、これまで条約で禁じられてきた地上発射型の中距離弾道ミサイルの発射実験を行ったことを明らかにしました。アメリカが中距離ミサイルの発射実験を行うのは今回が2回目で、中国とロシアが強く反発することが予想されます。
  アメリカ国防総省は12日、声明を発表し、西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から中距離弾道ミサイルを発射する実験を行ったと明らかにしました。
  声明によりますと、ミサイルは500キロ以上飛行したあと、海に着水したということで、実験で収集されたデータなどは国防総省が今後、中距離ミサイルの能力を開発する際に使用されるとしています。
  冷戦時代に調印されたINFの全廃条約は、射程500キロから5500キロの地上発射型の弾道ミサイルと、巡航ミサイルの保有や製造、発射実験などを禁止していましたが、アメリカとロシアは互いに相手の違反を主張して義務の履行を停止し、条約はことし8月、失効しました。
  条約の失効を受けて、アメリカは、ロシアや中国などに対抗するためとして、これまで禁じられてきた中距離ミサイルを本格的に開発する方針を表明しており、ことし8月、地上発射型の巡航ミサイルの発射実験を成功させています。

アメリカが中距離ミサイルの発射実験を行うのは、ことし8月に続いて今回が2回目で、将来的に地上発射型の中距離ミサイルのアジアへの配備を目指していて、中国とロシアが強く反発することが予想されます。
米国防長官「同盟国と配備可能性について緊密協議」
  アメリカのエスパー国防長官は12日、国防総省で記者団に対し、ミサイルの配備先について「中距離ミサイルの開発が完了し、われわれの部隊の司令官が、必要とすれば、ヨーロッパやアジア、そのほかの同盟国と配備の可能性について緊密に協議する」と述べ、今後、アメリカ軍の内部でミサイルの配備が必要な場所の選定を進めたうえで、日本を含むアジアや、ヨーロッパへの配備を目指す考えを改めて示しました。


2019.11.18-中央日報-https://japanese.joins.com/JArticle/259673
陸海空どこでも攻撃無力化…日本が「HPM武器」開発着手

日本がミサイル・無人機(ドローン)攻撃を効果的に遮断できる最先端武器、高出力マイクロ波(High Power Microwave=HPM)兵器の開発に本格的に入る。17日の産経新聞によると、日本防衛省は早ければ2021年度予算に装備開発費用を反映する方針という。開発から実戦配備までは5年ほどかかると予想される。
  現在、主要国が先を競って開発中のHPMは「戦闘の様相を変えることができる」決定的な兵器に挙げられる。陸・海・空のどこでも配備可能で、敵のミサイル攻撃のほか作戦中の有人・無人機の機能をまひさせて無力化できるためだ。
  中国とロシアは人工衛星を攻撃できるHPM兵器まで開発している。米空軍は5月、20基以上のHPMミサイルを実戦配備したという。
  マイクロ波の原理は日常でもよく接することができる。病院で医療機器の誤作動を引き起こすおそれがあるとして携帯電話使用の自制を求められるのが代表的な例だ。携帯電話の通信帯域がマイクロ波周波数帯(0.3-300GHz)に該当し、各種電子機器の作動に影響を及ぼしかねないからだ。
  マイクロ波を軍事用として使用するには普通100MW以上の連続的な出力が必要だが、事実上不可能であり、主にパルス形態で使用される。
  日本ではすでに2014年からHPM基礎研究が進められてきた。産経新聞によると、防衛省の外局の防衛装備庁電子装備研究所で効率的にHPMを発生させる技術を研究中だが、来年には研究と試験をすべて終える計画だ。
  防衛省は5月と7月、HPM発射装置開発および製造、輸入に関する業務を担当する企業を選別するための手続きに入った。これに12社が応募したと、同紙は伝えた。防衛省はHPM導入時、陸上配備型と艦艇搭載用のほか戦闘機(F-2後続機)搭載も検討中という。


2019.10.31-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191031/k10012158761000.html
北朝鮮から弾道ミサイル発射か 排他的経済水域外に落下か

31日午後、北朝鮮から弾道ミサイルとみられるものが発射されました。日本海の、日本の排他的経済水域の外に落下したとみられます。31日午後4時40分、海上保安庁が「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます」という航行警報を発表しました。
  また防衛省によりますと、31日午後、北朝鮮から弾道ミサイルと見られるものが発射されたということです。
  海上保安庁はさらに午後4時50分、新たな航行警報を発表し、「ミサイルは日本海の、排他的経済水域の外に落下したものとみられます」と伝えました。
  また防衛省によりますと、これまでのところ、日本の排他的経済水域の内側への落下はないと推定されるとしています。
  防衛省が情報の分析を進めるとともに、海上保安庁が航行中の船舶に対し、今後の情報に注意するよう呼びかけています。
  北朝鮮は今月2日にも弾道ミサイルを発射し、日本海の日本の排他的経済水域内に落下したとみられています。日本政府 北朝鮮に厳重に抗議政府は北朝鮮に対し、「今回のミサイルの発射は一連の国連安保理決議に反するものであり、極めて遺憾だ」として、北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議を行いました。首相 迅速で的確な情報提供など指示
総理大臣官邸のツイッターによりますと、安倍総理大臣は北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受けて、午後5時前、情報収集と分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速で的確な情報提供を行うこと、航空機、船舶などの安全確認を徹底すること、それに不測の事態に備え、万全の態勢をとることの3点を指示しました。
韓国軍“2発発射した”
韓国軍は北朝鮮が31日午後、西部から日本海に向けて短距離の飛しょう体を2発発射したと発表しました。北朝鮮はアメリカとの協議で年内に打開策を提示するよう求めていて、強硬な姿勢をみせることでアメリカに揺さぶりをかけるねらいがあるとみられます。
  韓国軍の合同参謀本部は北朝鮮が31日午後4時35分と38分ごろ、西部のピョンアン(平安)南道スンチョン(順川)付近から日本海に向けて飛しょう体を2発発射したと発表しました。
  また飛しょう体は短距離で、飛行距離は最大でおよそ370キロ、高度はおよそ90キロとしていて、米韓両軍がさらに詳しい分析を進めています。
  朝鮮はことし5月から短距離弾道ミサイルなどを相次いで発射し、今月2日には東部のウォンサン(元山)沖からSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを発射しています。
  北朝鮮は今月、スウェーデンで非核化をめぐりアメリカと実務者協議を行いましたが、「アメリカは旧態依然とした立場を捨てずにいる」と非難し、協議は決裂したと主張しました。
  また今月16日にはキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長が「アメリカをはじめとする敵対勢力がわれわれに強要している苦痛はもはや怒りに変わった」と述べ、何らかの対抗措置をとる可能性を示唆したほか、今月27日にはキム委員長の側近が年内に打開策を提示するようアメリカ側に求める談話を発表しました。
  北朝鮮としては強硬な姿勢をみせることでアメリカに揺さぶりをかけるねらいがあるとみられます。
米国防総省「現在分析中」
北朝鮮から飛しょう体が発射されたことについて、アメリカ国防総省の報道官は声明を発表し、「国防総省は北朝鮮からミサイルとみられるものが発射されたことを探知した。現在分析を進めており、新しい情報があれば提供する」としていますが、発射地点や落下地点、ミサイルの種類などについての詳細な情報についての言及はありませんでした。
北朝鮮から弾道ミサイルとみられるものが発射されたという情報を受けて、国土交通省は航空会社に対して注意を呼びかけています。
国土交通省によりますと午後5時13分時点で運航中の航空機に被害の情報は入っていないということです。
水産庁 日本の漁船の安否確認
水産庁によりますと、日本の漁船への影響はないとみられるということですが、念のため無線局を通じて漁船の安否確認を行っているということです。
北朝鮮 ことし5月から発射繰り返す
北朝鮮はことし5月から短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返しています。
5月4日には東部ウォンサン付近から日本海に向けて飛しょう体を発射したあと、5日後の5月9日にも北西部から短距離弾道ミサイルを発射しました。
その後、7月から8月にかけても東部や南西部などから短距離弾道ミサイルなどを相次いで発射し、9月10日には今回の発射地点周辺とみられる西部のピョンアン南道(平安)から飛しょう体を発射しています。
さらに今月2日には東部ウォンサン沖からSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルとみられるミサイルを発射し、翌日、北朝鮮は「北極星3型」の発射実験に成功したと発表しました。
米朝協議のこれまで
アメリカと北朝鮮は、北朝鮮の非核化の措置と、その見返りとしての経済制裁の解除などをめぐり交渉を続けています。
ことし2月にベトナムのハノイで開いた首脳会談では、アメリカが多くの核関連施設の廃棄を求めたのに対し、北朝鮮が制裁の解除を要求して物別れに終わりました。
その後、ことし6月、トランプ大統領とキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長は、パンムンジョム(板門店)で再び会談し、協議の再開で合意しましたが、アメリカと韓国の合同軍事演習に北朝鮮が反発し、協議は再開されませんでした。
こうした中、今月5日、スウェーデンでアメリカのビーガン特別代表と北朝鮮のキム・ミョンギル首席代表が出席して、実務者協議が実現しました。ただ、実務者協議のあと、北朝鮮側は、アメリカの姿勢に変化がなく今回の協議は決裂したと主張したのに対し、アメリカ側はよい協議ができたとしていています。
アメリカは、協議を再開する意向を示していますが、北朝鮮は、年内に打開策を示すようアメリカに求めていて、駆け引きが続いています。


2019.10.7-産経新聞-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/politics/news/191007/plt1910070023-n1.html
対中防衛、新局面に 宮古島で弾薬庫建設着工 十島「村守るため自衛隊誘致」
(1)
防衛省は7日、沖縄県の宮古島への陸上自衛隊警備・ミサイル部隊の配備計画で弾薬庫などのミサイル部隊関連施設の建設に着手した。中国の脅威に備える南西防衛強化の施設整備の現行計画で最後の着工にあたり、島外の反米軍基地活動家も乗り込み、闘争の場となる恐れがある。一方、新たに自衛隊誘致に動く自治体は日本の安全保障に貢献したいと訴え、南西防衛強化は新たな局面を迎えた。
 ■島外から反対派主導
 「説明会を中止しろ」
 3日夕、ミサイル施設を建設する宮古島東部で防衛省が開いた住民説明会。建設反対派は会の名称に「弾薬庫」という言葉がないと抗議し、約100人が会場入りを拒否した。
 反対派が弾薬庫に矛先を向けるのは抵抗の象徴だからだ。島ではミサイル施設とは別に駐屯地を3月に新設。有事で初動対処を担う警備部隊を配置したが、地元への説明不足が原因で駐屯地に保管していた中距離多目的誘導ミサイルと迫撃砲の弾薬の島外撤去を余儀なくされた。
 反対派はシュプレヒコールも繰り返した。主導したのは島民ではなく、沖縄平和運動センターの山城博治議長。反米軍基地活動の代表的存在で、普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事と北部訓練場のヘリコプター離着陸帯の移設工事への妨害で逮捕されている。
 自衛隊誘致に取り組んできた野津武彦氏は「全国の自衛隊弾薬庫で爆発が起きたことは皆無だとの防衛省の説明が浸透し、住民の不安は和らぎつつある」と話す。そこへ山城氏らが加わり、弾薬庫問題を再燃させようとしているという。
 山城氏は「辺野古(の反対運動)から人を呼ぶ」と反対派住民に伝えた。
 ■無人島活用を検討 屋久島と奄美大島の間に有人7島と無人5島が点在する鹿児島県十島(としま)村。約700人の村民が孤立した島々で暮らす。 「無人島の活用策で自衛隊の誘致を考えている」
(2)
十島村の肥後正司村長は9月12日の村議会で表明した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)への中国の挑発を受けた無人島の管理強化という課題と、自衛隊の無人島活用を望む元島民の声を踏まえ、肥後氏は平成29年から誘致に向け防衛省・自衛隊幹部と面会してきた。
 実は、肥後氏は同年7月、防衛省の訓練企画担当者による無人5島の現地調査にも同行している。肥後氏は「どの地点が島に上陸しやすいか調べているようだった」と振り返る。
 防衛省は離島奪還作戦を行える初の訓練場を整備し管理隊員を常駐させることを検討し、候補地に十島村の無人島である臥(が)蛇(じゃ)島(じま)が浮上している。担当者の調査は検討を裏付けるものだ。
 災害派遣の迅速化、無人島・周辺海域の警戒監視能力の向上、村の活性化など自衛隊誘致の理由は多岐にわたる。有人7島で194人の村民を集めた座談会では自衛隊誘致に反対したのは2人だけで抵抗感は少ないが、横やりが入った。県内の団体などの関係者5人が軍事的緊張を助長するなどとして自衛隊誘致の撤回を要請してきたのだ。
 5人は村民ではない。肥後氏は「村の実態を知らないのだろう。災害対応や無人島活用で頼りになるのは自衛隊だ」と明言する。
 ■即応態勢は不可欠
 「射撃目標は上陸船団 目標番号○○○」「了解」 8、9両月に九州を中心に行われた陸自と米陸軍の訓練オリエント・シールド。米陸軍は高機動ロケット砲システムのHIMARS(ハイマース)を初めて投入し、陸自の12式地対艦ミサイルと共同で敵艦艇を迎え撃つ訓練を実施した。
 ハイマースは発射台となり、ATACMS(エイタクムス)という戦術ミサイルを搭載すれば射程は約300キロ。陸自の12式の射程は約200キロだ。
 沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡は約300キロの距離がある。エイタクムスは本島からだけで海峡全体を射程に収めるが、12式は本島と宮古島の双方に置くことで海峡をカバーできる。
(3)
南西防衛は自衛隊が主体性を発揮すべきで、抑止力と対処力の強化には宮古島のミサイル施設に12式を配備し、弾薬も保管して即応態勢を取ることが不可欠だ。十島村が候補地に浮上した離島奪還訓練場がないことも欠陥といえる。
 「村民と村を守るため自衛隊を誘致すれば、日本の安保にも貢献できる」
 十島村長の肥後氏の言葉は重い。防衛省には地元の理解と支持を得る一方、不当な批判と妨害には毅然(きぜん)と対処することが求められる。(半沢尚久)


2019.9.7-産経新聞-THE SANKEI NEWS-SANKEI.COM-https://www.sankei.com/world/news/190907/wor1909070015-n1.html
北朝鮮南東部のミサイル基地に日本射程に収めるミサイル配備 米研究機関分析

【ワシントン=黒瀬悦成】米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)は6日、北朝鮮南東部金泉里にある弾道ミサイル基地に、韓国全土と日本の一部を射程に収める中距離弾道ミサイル「火星9」が配備されているとする、商業衛星画像に基づく分析結果を公表した。
 この基地は、ソウルの北東約165キロの山間部に位置し、東京からは約1100キロ。1990年代から短距離弾道ミサイルが配備されていると指摘されていた。北朝鮮は基地の存在を公表していない。
 同研究所は各種報道に基づき、同基地が朝鮮半島有事の際は日本の南半分にミサイルを撃ち込む任務を主に与えられていると指摘。また、同基地に「北極星2号」(KN15)などの新型ミサイルが配備される事態となれば、日本全土や沖縄県の在日米軍基地が射程圏内に収まる可能性があるとしている。
 同研究所によれば、北朝鮮には金泉里の基地を含め、約20の未公表のミサイル基地が存在するとされ、「これらの基地は、将来の最終的かつ完全に検証可能な非核化に向け、申告と検証、解体の対象にされる必要がある」とした。


2019.8.23-産経新聞-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/politics/news/190823/plt1908230006-n1.html
宮古島弾薬庫10月着工 月内に用地取得、離島防衛を強化

沖縄県の宮古島への陸上自衛隊警備・ミサイル部隊の配備計画をめぐり、防衛省は弾薬庫などのミサイル部隊関連施設の建設を10月に着手することが22日、分かった。宮古島市内の採石場に用地を取得し、施設を整備する。宮古島では駐屯地を先行して3月に新設したが、地元への説明不足が原因で、駐屯地に保管していた警備部隊の中距離多目的誘導ミサイルと迫撃砲の弾薬を島外に撤去した状態が続く。施設の完成後は警備部隊用の弾薬を保管し直す予定で、万全とはいえない抑止力と対処力の状況が解消される。
 沖縄本島より西は陸自が配備されていない防衛の空白地帯だったが、平成28年に与那国島(与那国町)に艦艇などを警戒する沿岸監視隊を配備。宮古島と石垣島(石垣市)には有事で初動対処にあたる警備部隊と地対空・地対艦ミサイル部隊を置く計画で、3月に、石垣島で弾薬庫を備えた駐屯地の建設に着手した。
 一方、宮古島で弾薬庫の建設工事が始まれば、中国の離島侵攻の脅威に備える南西防衛強化の計画がすべて実現に向けて動き出す。弾薬庫の工事は少なくとも1年以上かかる見通しだ。
 宮古島では弾薬庫は当初、島北部の牧場を買収して整備する方針だったが、地元の反対などで断念に追い込まれ、候補地の選定が遅れた。防衛省は再検討の結果、島東部にある採石場に弾薬庫を整備することを決め、採石場の地権者との調整を進めてきた。
 宮古島駐屯地について、防衛省は保管するのは警備部隊の「小銃弾等」と地元に説明していたが、火力の強い中距離多目的誘導ミサイルなども保管したことで反発を招き、4月に全弾薬を島外に移管した経緯がある。現状の装備は小銃や機関銃などに限られる。


2019.8.21-Yahoo11Japanニュース-https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190821-00010008-newsweek-int
傍若無人か、新たな核軍拡競争を招く米ミサイル実験
(翻訳:栗原紀子)

<米露は核軍縮の1つの柱だったINF条約失効の責任を互いのせいだとしているが、今はロシア、中国よりアメリカが巨悪に見える>
  冷戦時代に旧ソ連と交わした核戦力全廃条約から離脱したアメリカは、早速、30年以上開発が禁じられていたミサイルの発射実験を行った。ロシアと中国は、高価で危険な核兵器開発競争に再び引き込むつもりだとアメリカの行動を非難している。
  アメリカと旧ソ連が冷戦時代の1987年に締結した中距離核戦力(INF)全廃条約は、射程距離500~5500キロメートルの地上発射型中・短距離弾道・巡航ミサイルの生産、実験、配備を全面禁止するもの。アメリカは以前からの通告通り、8月2日にこの条約から離脱し、2週間後の19日、カリフォルニア州で巡航ミサイルの実験を行ったことを発表した。
  これを受けてロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、「このような実験は、アメリカが最初からINF条約を廃止しようとたくらみ、(数週間、数カ月も前から)実験の準備をしていたことを証明するものだ」というウラジーミル・プーチン大統領のコメントを発表した。
  「大統領が昨日フランスで発言した通り、われわれは挑発には乗らない。アメリカが世界のどこかに地上発射型中距離ミサイルシステムを配備するまで、わが国はそうしたミサイル配備を自制し続ける」とペスコフは言った。

<発射台も怪しい、とロシア>
  在英ロシア大使館は、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官の発言を引用して、「ロシアは新しい軍拡競争に引きずり込まれることはない」とツイートした。
  アメリカは長い間、ロシアが進めてきた巡航ミサイル「ノバトール9M729」の開発と配備を、INF条約違反にあたると非難してきた。一方、ロシアはアメリカのほうこそ、対地攻撃型トマホークのような攻撃ミサイルの発射が可能なMark-41垂直発射システム類似のプラットフォームを使用する防衛システムを配備しており、条約に違反していると非難している。
  両国ともに条約違反を否定しているが、米国防総省の報道官は19日、今回の実験ではまさにMk-41発射台からトマホーク型ミサイルの一種が発射されたことを確認した。
  「INFから離脱後わずか16日後にアメリカが高度なトマホーク型ミサイルの発射実験を行い、条約を実質的に終わらせたことは注目に値する」と、リャブコフはロシアの国営タス通信に語った。「アメリカがこのようなシステムを長い間開発し、こうした研究開発を禁じる合意から離脱する準備を整えていたという事実を明白に立証している」
  さらにリャブコフは「Mk41垂直発射システムを使用してミサイルが発射された」ことを取り上げ、このシステムはSM-3迎撃ミサイルや、地対地および地対地巡航ミサイルが発射できる万能型であることを指摘した。「遺憾としかいいようがない事態だ。アメリカは明らかに軍事的緊張を煽る方向に舵を切った」

<中国もロシアに加勢>
  アメリカのミサイル実験を非難するロシアに同調したのは中国だ。INFの締結国ではないが、中国はアメリカに条約維持を求めたロシア政府を支持してきた。
  アメリカによる今回の実験について、中国外務省の耿爽報道官は、「アメリカがINF条約を公式に離脱して3週間もたたないうちに」起きたことを指摘し、実験を非難した。
  「アメリカによるこの動きは、新たな軍拡競争を引き起こし、軍事的対立の拡大と世界および地域の安全保障に深刻な悪影響をもたらす」と、彼は述べた。「アメリカは、時代遅れの冷戦の考え方とゼロサム・ゲームの概念を放棄すべきだ。そして武器開発を抑制し、既存の軍縮の枠組みを真剣に守り、グローバルな戦略的バランスと安定性、そして世界と地域の平和と安全に貢献しなければならない」
  INF条約からの離脱前、アメリカはロシア、中国との新しい3国間核ミサイル条約の交渉を提案したが、中国は拒否した。中国は、アメリカとロシアは2大核保有国として核不拡散については特別に責任があると主張している。      (翻訳:栗原紀子)


2019.8.11-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48481990R10C19A8FF8000/
北朝鮮、ミサイル実験を正当化 「米大統領が容認」 クオン ジョングン北米局長発言

【ソウル=恩地洋介】北朝鮮の朝鮮中央通信は11日、トランプ米大統領が短距離ミサイルの発射を容認したと指摘する外務省米国担当局長の談話を伝えた。「米国大統領は我々の通常兵器の開発実験を『どの国でも行う小さなミサイル実験』とし、主権国家としての我々の自衛権を認めている」と主張した。7月25日以降、5度にわたるミサイル発射などの挑発行為を正当化する狙いだ。

国連安全保障理事会の決議は全ての弾道ミサイル発射を禁じている。これに対し、トランプ氏は「金正恩(キム・ジョンウン)委員長と握手をした際に短距離ミサイルに関する議論はなかった」などと、北朝鮮の挑発を容認する発言を繰り返してきた。
談話は米韓合同軍事演習を巡って韓国政府を強く批判した。「中止するか誠意のある弁明があるまでは、南(韓国)との接触自体が難しい」と主張し、対話の相手は米国であると強調した。

一方、11日の朝鮮中央通信は、金正恩氏が10日に「新兵器」の試射を視察したとも報じた。武器の詳細には触れていないが、金正恩氏は「党で構想していたもう一つの新たな兵器が登場した」と述べた。
韓国軍によると北朝鮮は10日午前5時半すぎ、2発の飛翔(ひしょう)体を発射した。日本海に向けて約400キロメートル飛行し、新型の短距離弾道ミサイルの可能性が高いと判断していた。北朝鮮メディアが公開した写真には、移動式発射台からミサイルを発射する様子が写っている。
北朝鮮は7月25日と8月6日のミサイルを「新型戦術誘導弾」と呼び、7月31日と8月2日の武器は「大口径多連装ロケット砲」だと主張している。北朝鮮メディアによると、金正恩氏はすべての発射に立ち会った。

北朝鮮はトランプ米政権が「容認姿勢」を示している間に、兵器の開発を急ごうとしている可能性もある。


2019.6.12-産経新聞-https://www.sankei.com/politics/news/190612/plt1906120005-n1.html
ミサイル発射探知、実証へ 政府、警戒衛星の保有検討

政府は北朝鮮などの弾道ミサイル発射を探知する早期警戒衛星の機能の保有に向け、来年度打ち上げる人工衛星にセンサー(検知装置)を搭載、実証研究に乗り出す。搭載するのは極微小な半導体の粒を使う画像センサーで、2つの波長帯の赤外線を検知できる世界初の技術。課題だった搭載時の振動対策なども終えた。宇宙空間からミサイル発射時の赤外線を探知できるかどうか、令和6年度ごろまで実験を重ね、検証する。 日本は北朝鮮の弾道ミサイル発射で米国の早期警戒衛星が探知する情報に依存している。

 北朝鮮が5月に短距離弾道ミサイルを発射し、再び挑発を強める恐れがある中、実証研究によってセンサーが有効に機能すると判断されれば、費用対効果も見極めた上で早期警戒衛星を保有するかの検討に入る。弾道ミサイルと人工衛星を打ち上げるロケットは技術が共通している部分が多い。それを踏まえ、ALOS-3の軌道に合う国内外のロケット発射時にも探知機能を確認する。

 防衛省はこれらの実証研究で得られたデータを蓄積し、飛行体の赤外線特性などをデータベース化することも視野に入れている。米軍は赤外線の特性から北朝鮮が発射した弾道ミサイルの種類を特定するためのデータベースを構築しているとされる。

 ■早期警戒衛星
 北朝鮮が弾道ミサイルを発射すると米軍の早期警戒衛星が最初に探知する。探知情報は数十秒の間に米本土から在日米軍司令部などを経由し防衛省の中央指揮所に届き、一定の着弾予測地点も割り出される。これをもとに米海軍と海上自衛隊のイージス艦、航空自衛隊の地上レーダーなどがミサイルを探知・追尾し、イージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と空自の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が迎撃態勢に入る。 衛星に搭載するのは防衛省が開発した「2波長赤外線センサー」。

 赤外線センサーは昼夜を問わずミサイルや航空機の排出ガスなど高温な熱源を探知することに優れ、2波長赤外線センサーは中赤外線と遠赤外線という2つの領域の波長帯を使うことで探知・識別能力を向上させたのが特徴だ。2波長の画像を融合させ、燃焼による一酸化炭素や二酸化炭素の炭酸ガスを鮮明に捉え、ミサイル本体の形状と排出ガスを明確に判別できる。 センサーが搭載されるのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が来年度、H2Aロケットで打ち上げる先進光学衛星(ALOS-3)。

 ALOS-3は全地球規模の陸域を継続的に観測する地球観測衛星で、高度669キロの軌道を回る。防衛省は軌道に合うタイミングで行われる自衛隊のミサイル発射試験や訓練で、同センサーによるミサイル探知機能を検証するとみられる。弾道ミサイルと人工衛星を打ち上げるロケットは技術が共通している部分が多い。それを踏まえ、ALOS-3の軌道に合う国内外のロケット発射時にも探知機能を確認する。

 防衛省はこれらの実証研究で得られたデータを蓄積し、飛行体の赤外線特性などをデータベース化することも視野に入れている。米軍は赤外線の特性から北朝鮮が発射した弾道ミサイルの種類を特定するためのデータベースを構築しているとされる。

 ■早期警戒衛星
 北朝鮮が弾道ミサイルを発射すると米軍の早期警戒衛星が最初に探知する。探知情報は数十秒の間に米本土から在日米軍司令部などを経由し防衛省の中央指揮所に届き、一定の着弾予測地点も割り出される。これをもとに米海軍と海上自衛隊のイージス艦、航空自衛隊の地上レーダーなどがミサイルを探知・追尾し、イージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と空自の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が迎撃態勢に入る。


日本のミサイル防衛に関する映像-wikipedia


産経新聞-2019.4.29 (https://www.sankei.com/politics/news/190429/plt1904290004-n1.html)
地対艦ミサイル射程、2倍へ改良 尖閣・宮古、対中抑止

防衛省は、南西地域に配備する陸上自衛隊の地対艦誘導ミサイル(SSM)を改良し、射程を現在の約2倍に延伸する検討に入った。艦艇の能力増強を図る中国軍への対処能力と抑止力を高める狙いがある。改良した同型のミサイルを海上自衛隊の哨戒機にも搭載し、空対艦ミサイルとしても活用する。複数の政府関係者が28日、明らかにした。
  射程を延伸するのは最新鋭の12式SSM。現在は射程200キロ程度だが、最大400キロ程度にまで伸ばす。令和5(2023)年度に部隊配備する。陸自は、戦力の「空白地帯」とされる南西地域の防衛態勢強化を急いでいる。今年3月には鹿児島県・奄美大島と沖縄県・宮古島に駐屯地や分屯地を
  新設。奄美大島では南西地域で初めて12式SSMが配備され、来年には宮古島にも導入される。駐屯地の新設が計画されている沖縄県の石垣島でも配備される見通しだ。
  陸自は、離島侵攻に対し(1)洋上(2)海岸地域(3)内陸部-の3段階で対処する構え。12式SSMは洋上で敵艦艇を撃破する役割を担う。ただ、中国海軍の艦艇は近代化が急速に進み、搭載する巡航ミサイルなどの射程や精度も向上している。12式SSMの射程を延伸することで、敵艦艇の脅威圏外から攻撃することが可能となる。
  東シナ海から太平洋への進出を図る中国海軍への牽制にもつながる。中国艦艇は遠洋作戦能力の強化を狙い、沖縄本島-宮古島間の宮古海峡を通過する動きを常態化させている。改良した12式SSMを宮古島に配備すれば、約290キロにわたる宮古海峡の全域を射程に収めることになる。中国公船が領海侵入を繰り返す尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域もカバーできる。
  陸自への配備に先立ち、令和4(2022)年度には同型のミサイルを海自哨戒機に搭載する。南西地域は約1200キロにわたる広大な海空域を有する。
  警戒監視能力と活動領域に優れる海自哨戒機が長射程の空対艦ミサイルを備えることで、南西地域の防衛態勢はより厚みを増すと防衛省は判断している。


GBI (ミサイル)
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GBI(英語: Ground Based Interceptor)は、アメリカ合衆国ミサイル防衛に用いられる弾道弾迎撃ミサイルである。
  迎撃対象として想定される大陸間弾道ミサイル (ICBM) の飛翔経路は、加速しつつ上昇するブースト段階、慣性で大気圏外を飛行するミッドコース段階、大気圏に再突入して目標に向けて落下するターミナル段階より成り、アメリカのミサイル防衛計画においては、それぞれの段階に対応する迎撃手段がミサイル防衛庁の統括の下に開発されている。ミッドコース段階の迎撃システムはさらに地上配備のGMD (Ground-based Midcourse Defense) と海上配備のSMD (Sea-based Midcourse Defense) に大別され、前者に用いられる迎撃ミサイルが本項のGBIである。
概要
少数の大陸間弾道ミサイル (ICBM) によるアメリカ合衆国本土への攻撃を想定してその迎撃能力の保有を目指す本土ミサイル防衛計画 (NMD) の一環として構想され、クリントン政権下の1996年より開発が始められた。続くブッシュ政権によって本土/戦域の区別を一本化されたミサイル防衛 (MD) へ引き継がれる。
  ICBMのミッドコース段階はその飛翔経路の大部分を占めるため、迎撃側の対応時間が比較的長く得られるが、迎撃用のミサイルには長射程かつ大気圏外での迎撃能力が要求される。また、迎撃対象の探知と迎撃ミサイルの誘導管制についてもカバーすべき領域が広大なため、複数の長距離レーダーと宇宙配備センサーをネットワークで結び連携させる必要がある。
  実際の迎撃手順は、早期警戒衛星DSP衛星またはその後継となるSBIRS-High衛星)で敵対国からのICBM発射を探知した後、大遠距離の探知が可能な海上配備Xバンドレーダー(SBX)や機能向上型早期警戒レーダー (UEWR) で標的ICBMのコースを追尾し、得られた弾道情報を総合して戦闘管理および指揮・統制・通信センター (BM/C3) が迎撃を判断し、GBIを発射。宇宙追尾・監視システム (STSS) と称される低軌道の赤外線センサー衛星やXバンドレーダーからの情報を元に、GBIへ最新の目標指示データを渡しつつ迎撃コースに乗せる。
  大気圏外に運ばれた重量70kgの迎撃体EKVはブースターから切り離され、冷却された赤外望遠イメージセンサーで標的であるICBMの再突入体を捉えて実弾頭と囮の識別を行い、4つのスラスターで自身の軌道を修正しつつ直撃する。迎撃体は炸薬を積まない運動エネルギー兵器であり、秒速7km以上の高速で衝突する際に生じる衝撃と熱で大量破壊兵器と目されるICBMの弾頭を無力化する。

開発
飛行テストは1997年に開始され、1999年10月2日に初の迎撃試験に成功した。当初はEKVの開発が先行し、2002年までのテストは退役したICBM (ミニットマンII)を代替のブースターとして流用することで行われた。その後は各種レーダーとの連携や、専用ブースターとの統合テストなどを漸進的に行い、2008年末の時点で14回中8回の迎撃テストに成功している。
  飛行テストは1997年に開始され、1999年10月2日に初の迎撃試験に成功した。当初はEKVの開発が先行し、2002年までのテストは退役したICBM (ミニットマンII)を代替のブースターとして流用することで行われた。その後は各種レーダーとの連携や、専用ブースターとの統合テストなどを漸進的に行い、2008年末の時点で14回中8回の迎撃テストに成功している。
  開発製造の主契約企業はボーイングであり、迎撃体EKVおよび地上配備レーダーGBRをレイセオン、戦闘管理および指揮・統制・通信センター (BM/C3) をノースロップ・グラマンがそれぞれ担当している。ブースターは当初担当していたロッキード・マーティンの開発に遅れが生じたため、オービタル・サイエンシズに変更された。
  2017年5月30日、北朝鮮のミサイル開発の進展を受けて迎撃実験を行い、ICBMを想定した標的に対する迎撃に初めて成功した。標的のミサイルはマーシャル諸島の実験場から発射され、カリフォルニア州の基地から発射されたGBIで迎撃した

配備
ミサイル防衛に使われる他の迎撃ミサイルが車載あるいは艦載の可搬プラットフォームで運用されるのに対し、大型の迎撃ミサイルであるGBIは地下のミサイルサイロに固定配備される。アラスカ州フォートグリーリー基地およびカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地に配備が開始されており、オバマ政権においては合計30基を配備する方針が示されている ジョージ・W・ブッシュ政権による東欧ミサイル防衛構想において、ブーストステージを2段に減らしたGBIの派生型をポーランドへ配備することが検討されていたが、それに反発するロシアの間で外交上の課題になっていた(新冷戦)。その後、オバマ政権はイランのICBMの脅威は低いと判断し、スタンダードミサイル SM-3配備へ計画を変更した。


ミサイルサイロ(コールドローンチ方式とホットローンチ方式)
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ミサイルサイロ(Missile silo)とは、大陸間弾道ミサイルなどの大型ミサイルを格納する建築物のことである。単に「サイロ」とも呼ぶ。この名称は穀物を貯蔵するサイロに由来すると考えられる。
概要
  最初期の弾道ミサイルは、いわゆる「ロケット」と同じく地表面からの発射方式であり、待機中のミサイルは攻撃に対し、非常に脆弱なものであった。これに対し、発射システムを地下式サイロとすることにより、ミサイルの待機中や発射準備中における脆弱性は大きく改善することができる。
  地下式サイロはミサイルの外形に合わせた円筒形の細長い穴となっており、上からミサイルを吊り降ろして配備する。敵の攻撃に備えて地下司令設備とともに硬化された(Hardened)施設となっており、至近の核爆発に耐える構造となっている。
  サイロの構造としては、ミサイル収納用の鉛直な穴がメインとなっている。これは、コンクリートなどで構成された対爆用の蓋で覆われており、ミサイル発射時にはこの蓋が移動し、穴の上部が開放されることとなる。このほか、サイロには、ミサイルの整備用の通路やロケットの噴煙排気路、ミサイル発射管制施設及び発射管制要員の待機設備(居住区)、液体燃料式のミサイルでは液体燃料用の燃料タンクが設けられる。敵の侵入に備えて警備システムも敷かれ、有事の際に施設内へ化学兵器を放出する仕組みを持つサイロもある。 また、攻撃や事故の際にミサイル本体や燃料の誘爆を防ぐためにサイロ内部に注水出来るようになっているものもある。

  地下式ミサイルサイロの建築は高価なものであり、これらを大規模に運用している国はアメリカ合衆国旧ソ連ロシア)と中華人民共和国に限られる。イギリスは冷戦初期に計画していたブルーストリークIRBM用サイロ建造を経済的な理由で中止した。フランスは本土南東部アルビオン高原のアプト・セイント・クリストール空軍基地においてSSBS S-3 中距離弾道ミサイルの18基のサイロを有していたが、冷戦終結後の1996年にIRBMおよびサイロ運用を停止した。中国は約20機のDF-5がサイロに配備され運用されている
  これら地下式サイロは冷戦期1960年代から建造が開始されている。アメリカ合衆国の初期のICBMであるアトラス初期型は地表に設置するだけで防護措置は何も取られていなかった。続くアトラスEでは、地上の掩蔽格納庫(バンカー(Bunker.その外見から将兵には「棺桶」とあだ名された)に配備されるようになった(ミサイルは普段は横に倒された状態で保管され、発射時には直立する)。これに続く、アトラスFやタイタンIを配備した頃より地下サイロの運用が行われるようになっている。
  旧ソ連(ロシア)では第二次戦略兵器削減条約(START-II)で使用が禁止されたR-36用のミサイルサイロは爆破された上で埋め立てられて二度と使用できないようにされた。条約で再利用が認められた一部のサイロはコンクリートを充填して全長を短くし、より小型のRT-2PM2用に利用されている。しかしながらSTART-II自体の履行が完全ではなかったこともあってサイロの廃棄は一部にとどまり、依然として多くのR-36が配備されていると考えられている。
  冷戦終結後、アメリカでは不要となったタイタンIIICBMやピースキーパーICBMが使用していたミサイルサイロが売却され、倉庫や民間人が所有する個人住宅となっているものもある。アリゾナ州ではサイロを利用した博物館『タイタン・ミサイル・ミュージアム』が運営されている。

発射方式
サイロにおけるミサイル発射方式ついては、ホットローンチ方式とコールドローンチ方式がある。アトラスFやタイタンIなどの初期のホットローンチ方式は、推進剤の充填を行ってから地表までミサイルを移動させ発射する方式であった。その後の即応性を高めたホットローンチ方式では、ミサイルサイロ内でミサイルのロケットエンジンに点火される。そのため、サイロ内部が高温のロケットエンジンの排気に晒されて損傷・破壊される。
  コールドローンチは高圧ガス(水蒸気等)によりミサイルをサイロ外へ射出し、サイロ外の一定の高度に到達した時点でエンジンを点火する方式である。この方式であれば、サイロは高熱に晒されることも無く、ミサイル発射後も機能に問題を生じず、迅速な再利用が可能とされていた。アメリカではピースキーパーがコールドローンチ方式である。


ミサイル
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ミサイル(英: missile)とは、目標に向かって誘導を受けるか自律誘導によって自ら進路を変えながら、自らの推進装置によって飛翔していく軍事兵器のことである。誘導ミサイルあるいは誘導弾(英: guided missile)ともいう。
特徴
ミサイルは推進装置と誘導装置を持ち、推進装置だけで誘導装置を持たないロケット弾や、推進装置を持たず誘導装置だけを持つ誘導爆弾や誘導砲弾とは区別される。一般の爆弾砲弾は推進装置も誘導装置も有しない。推進装置は一般に固形ロケットを使用するが、大陸間弾道弾には液体ロケットを使用するもの、巡航ミサイルには燃費の良いジェットエンジンを使用するものがある。
  ミサイルは推進装置と誘導装置を持ち、推進装置だけで誘導装置を持たないロケット弾や、推進装置を持たず誘導装置だけを持つ誘導爆弾や誘導砲弾とは区別される。一般の爆弾砲弾は推進装置も誘導装置も有しない。推進装置は一般に固形ロケットを使用するが、大陸間弾道弾には液体ロケットを使用するもの、巡航ミサイルには燃費の良いジェットエンジンを使用するものがある。
  軍用航空機は空を飛ぶことで目標を攻撃するが、自ら目標に向かって失われることは想定されておらず、砲弾と大砲の関係のように、別の投射体を放つためのプラットフォームとなっている兵器である。近代兵器としてのミサイルの黎明期には、「戦闘機」や「爆撃機」として分類されたものも存在する。(F-99 ボマークB-62 スナーク 等)。
  無人で放たれた後は短時間の1度限りの使用であるため、高熱や振動・圧力に起因する強度低下や再使用の整備は考慮せずに済み、比較的新しい技術を導入しやすい。
  排気煙の視認を避けるため、白煙の元となるアルミニウム粉を用いない固体推進剤、さらに排気炎を出さないものが研究されている。外殻を金属からプラスチックへ変更し、ステルス性を高める研究が行われている。
  発射地点から攻撃可能な目標地点までの最大距離が射程である。地対空ミサイルや艦対空ミサイルでは重力に逆らって上昇するのに推進力が消費されるため、水平距離だけでなく高さも含めて表現されることが多い。小型ミサイルでは多くの場合、弾頭部の種類別にミサイルの型名が付けられているため、射程も一意に決まるが、大型ミサイルでは弾頭を変更可能な場合、重い弾頭を運搬する場合と軽い弾頭を運搬する場合では射程が異なることがある。すべてのミサイルは発射時には爆発しないように作られており、その多くが安全装置や誘導装置の動作手順の都合によって、最短有効距離や最小有効射程などと呼ばれる攻撃に使用しても動作が保証されない距離が設定されている。
  多くのミサイルは、飛翔体の他にも外部での誘導や発射にさまざまな装置を必要とする。以下に主要なミサイル・システムの構成要素を示す。簡易な肩撃ち式の対戦車ミサイルでは、射撃統制に複雑な装置は必要とせず、追尾レーダーも飛翔体に内蔵したものだけで済ますミサイルもある。

構造
ミサイルの飛翔体は、ほぼ同じような構造から成り立っており、構成する装置類を頭部から後部に向かって順に示す。モジュール化構造を備えた飛翔体では、筐体となる外殻と特にそのモジュール同士の接続部に高い強度が求められる。
  推進ブースターが発射時の加速補助のために外部装着される事もある。ジェットエンジンが採用されていれば弾体の一部に開口部が設けられ、空気取り入れ口が装備される。そういったミサイルでは操向翼とは別に主翼とも呼べる大きな翼を備えるものが多い。巡航ミサイルは誘導装置の一部として電波高度計を備えるのが一般的で、衛星位置情報システムや地形地図情報システムも備えるものが多く、そういった装置のアンテナが露出される。小型ミサイルでは誘導用のワイヤーを尾部より繰り出すものがある。
索敵装置
目標を捜索、発見・識別するシステム。索敵装置にはレーダーソナーなどの捜索システムと発見した目標の識別を行う敵味方識別装置が含まれる。赤外線誘導ミサイルや長射程のミサイル、対地ミサイルの場合、ミサイル本体に搭載されていることも多く、英語ではこれをシーカーと呼ぶ。
誘導装置(詳細は「ミサイルの誘導方式」を参照 )
誘導装置はミサイルの先端付近に取り付けられ、目標を追跡し目標の現在位置とミサイル自身の進行方向とのずれを随時計算して操縦装置へ進路補正を指示する。英語ではガイダンス・システム、ホーミング・システムと呼ぶ。ミサイルには複数種類の誘導装置が搭載される事があり、それぞれ使用される時点に応じて中間誘導装置、終末誘導装置と呼ばれる。一種類しか搭載されていない場合は単に誘導装置と呼ばれる。
安定翼
操向用の操舵翼とは別に安定翼(=固定翼)によって飛翔の安定性を高めるのが通常である。主翼とも呼ばれる。固定式と展張式のものがある。 展張式安定翼では、ミサイル内に格納されているものと、ミサイルの周囲を囲むように折り畳まれているものがある。多くがスプリングによって発射直後に展張する。 操舵翼も展張式のものがある。

弾頭
弾頭は誘導装置の直後に置かれる事が多く、ミサイルが目標を破壊するために必要な装置である。英語ではウォーヘッドと呼ぶ。
  通常弾頭:核兵器や生物兵器、化学兵器以外の弾頭であり、弾頭部の重量は携帯ミサイルの数キログラムから対艦ミサイルの数百キログラムまでの幅がある。ミサイルは飛翔するために軽量であることが要求され、多くの爆弾と比べれば弾殻は薄く、肉厚高抗張力合金鋼やチタン合金で作られているものが多い。
  榴弾弾頭:高性能火薬を主体とした弾頭である。通常型榴弾弾頭は均質な弾殻に高性能火薬が詰められ、起爆のタイミングの違いによって内爆型と外爆型とがある。調整破片型榴弾弾頭は弾殻に規則的な割れ目があるか、多数の鋼鉄球や鋼鉄片、タングステン・ペレットが配置されており、加害効果を高めている。
  集束型弾頭:多数のフレシェットと呼ばれる三角帽子状の矢となる鋼鉄棒が収められており、爆発によって無駄なく計画された方向へと飛び、軟目標を加害する。ヘリコプターや兵員への攻撃に使用される。
  ロッド型弾頭:弾頭内に多数の金属ロッドが収められており、隣り合うロッド間の連接の有無によって連続ロッド型と不連続ロッド型がある。連続ロッド型では弾頭が爆発するとロッド同士が空中でいくつかの大きな輪を作る。不連続ロッド型ではロッド同士がバラバラで放たれる。共に航空機やミサイルの撃墜を目的に使用される。
  指向性爆薬弾頭:単純な炸裂弾ではなく、爆薬の爆発エネルギーによって前方や下方といった1方向にだけ高速で金属を打ち出す仕組みを持つ。成形炸薬弾頭では高速 (7,000-9,000m/s) の棒状金属を打ち出し、モンロー/ノイマン効果により、直近にある口径の6-8倍の厚さの均質圧延鋼板を打ち抜く。前後に2つの成形炸薬弾を並べたタンデム型もある。対戦車ミサイルの弾頭で使用される。自己鍛造破片(: self forming fragment)弾頭では高速 (2,000-3,000m/s) の金属塊を打ち出しミズネ・シャルダン効果によって、口径の1,000倍の距離までの1倍の均質圧延鋼板を打ち抜く。上面装甲を狙うトップアタック式(オーバーフライ式)の対戦車ミサイルの弾頭で使用さる。また、榴弾弾頭に近い構成で、爆薬に複数の起爆点を持たせて爆発のエネルギーと破片を特定方向に集中させるタイプの指向性爆薬弾頭もある。
  ディスペンサークラスター爆弾のように対人、対戦車、対滑走路用の子弾子(サブミュニション、小型爆弾)を内部に多数抱えて目標上空でこれらを散布するための運搬容器であるディスペンサーを弾頭として持つものがある。これらによって目標周辺を広範囲に制圧することができる。短距離地対地ミサイルや巡航ミサイルに搭載されている。MLRSATACMSの対戦車子弾子BATには誘導装置が組み込まれており、小型の誘導爆弾となっている。炭素繊維のフィラメント・ボビンを無数に詰めたディスペンサー弾頭は電力設備の配線をショートさせる。

核弾頭
核弾頭は数キロトンの威力を持つ原子爆弾から戦略兵器の熱核爆弾(水爆など)の数メガトンまでの幅があり、多弾頭やデコイ、機動バスなどの多様なバリエーションがある。
生物/化学兵器弾頭
生物兵器化学兵器を搭載した弾頭。いずれも国際条約によって使用が禁止されている。
無弾頭
直撃によって目標を破壊する THAADミサイルのような運動エネルギー迎撃体と呼ばれるミサイルは爆発するような弾頭を備えていない。ただし、パトリオットPAC-3ミサイルのように直撃によって目標を破壊する形式でも破片散布型弾頭を備えているものもある。
信管(詳細は「信管」を参照)
弾頭を起爆するための装置で、弾頭に組み込まれて使用される。英語ではフューズという。基本的には以下の種類があり、多くの高性能信管では設定によって複数の基本的な機能を組み合わせて起爆できるようになっている。
  触接信管:目標へ衝突した瞬間に動作する信管。接触信管、衝撃信管とも呼ばれる。対戦車ミサイルなどで使用されるほか、大部分のミサイルでバックアップ用に装備されている。
  遅延信管:目標へ衝突した瞬間からタイマーを働かせて、設定したわずかな時間の後に起爆する信管。対艦ミサイルなどで使用される。
  近接信管:信管から電磁波を発し、その反射波が一定以上の強さになった時点で動作する信管である。信管から一定の距離以内に目標が侵入した時点で動作する。最初期から現在まで最も一般的な近接信管は電波を利用する物であり、信管から発する電波の反射波が一定以上の強度になると動作する。最近ではレーザー光線を利用する近接信管も開発されている。
  時限信管:起動から一定時間後に動作する信管。現在では他の信管のバックアップや失中時の自爆用に装備される。
  高度信管:電波高度計によって、ミサイルが地上から一定の高度に達した際に作動する信管。主に弾道ミサイルに搭載された核弾頭に使用される。
  深度信管:圧力信管とも呼ばれ、事前に調定された一定の水圧(深度)に達した際に作動する信管。対潜ミサイルの弾頭に装備される。
燃料
ミサイルの推進燃料を収めている区画であり、ミサイル後部で大きな位置を占める。
円筒形のロケット形態を採る限りは、電気配線などが燃料区画をまたいで上下をつなぐのにエレガントな解決策がなく、外部側面に張り付いている場合が多い。
  固体ロケット燃料:固体燃料ロケットでは外殻内部に高度技術を駆使して固体推進剤が詰められ、外殻がロケットモーターの圧力容器を兼ねている。液体燃料に比べて比推力は総じて劣り、圧力容器として作るために外板が重くなるが、外殻一杯に充填出来、特別な燃焼装置が空間を占めることもないために、液体燃料方式と比べてそれほど劣ることはない。
  液体ロケット燃料:液体燃料ロケットでは多くの場合、ロケットの外殻とは別に内部に球形やシリンダー形状の燃料タンクを備えている。液体酸化剤と液体燃料という2種類のタンクを備える。2つの液体は極低温保存が求められたり、致死性で危険な薬品や金属を徐々に腐食したりするものが多く保守管理が難しい。極低温保存の液体燃料は初期のICBMにおいて用いられたが、常時ミサイルのタンクにこれらの液体を入れておくには問題が多い。しかし、後に常温で保存できるものが開発され、これは推力が個体燃料と比べて大きく、常温液体燃料ならば即応性もそれなりにあるため東側諸国では重用された。
  ジェット燃料:推進機にジェットエンジンが採用されていれば液体のジェット燃料がタンクに保管される。一般に、ジェット燃料タンクの外皮がミサイル外殻の一部を構成し、前方の誘導部、または弾頭部と隔壁を経由して接合され、後方は小型ジェットエンジン部と隔壁を経由して接合される。燃料区画の一部をジェットエンジン用の空気ダクトが占めるレイアウトのものが多い。酸化剤は不要なため、重量と容積で有利となり、ターボジェットという燃料効率の良さも手伝って長距離飛行を可能とするが、ジェットエンジンの重量容積とコストでは不利となる。
  固体ラムジェット燃料:推進機に固体燃料ラムジェットエンジンが採用されている、大気圏内専用ミサイルの一群がある。ブースターとなる固体燃料をラムジェットエンジン内部(燃焼室とノズル)に充填し燃焼させ、燃え尽きた後に生じる空間(ダクト)をラムジェットの燃焼室とジェットノズルとして使用する固体ロケット・ラムジェット統合推進システムまたはインテグラル・ロケット・ラムジェット(Integral Rocket Ramjet、IRR)と呼ばれるものと、ブースターを別に設けて初期加速させ切り離すものがあり、他にこれ等の初期加速機構を省くも起動可能初期速度以上の航空機などから投射運用される場合も理論上あり得る。
飛翔制御(詳細は「ミサイルの飛翔制御方式」を参照):ミサイルの飛行方向を制御するには以下の方式がある。
  排気ベーン:ノズルの中に排気ベーン、またはジェットベーンと呼ばれる推力偏向板を設置し、これを動かすことで推力方向を任意の方向へ向けて機体を制御する。史上最初の弾道ミサイルであるV2/A4には黒鉛でできた排気ベーンが採用されていた。V2/A4の直接の子孫であるR-17 (SS-1B Scud)でも排気ベーンが採用されている。
  翼による空力制御:ミサイルに取りつけた翼を動かすことでミサイルの姿勢を制御する。現状では最もポピュラーな制御方法である。宇宙空間に進出する弾道ミサイルではこの方法は使用できない。またミサイルの側面に翼が取りつけられるため体積効率が良く無い。このため保管の際には分解しておき発射直前に翼をとりつけたり、翼を機体内に格納したり機体まわりに折り畳んでおき、発射後に自動的に伸展する方法が取られる。一般には後退翼や三角翼がもちいられ、動翼と静翼の二組が取りつけられる。静翼はミサイルの方向安定を司り、大きな面積を持つ。動翼はミサイルの操縦を司り、誘導装置からの信号を元に操縦装置によって駆動される。多くは動翼を後翼とするが高機動ミサイルでは動翼を前翼とする設計もある。三角翼では翼幅が大きくなるため、スペースに制約がある艦載ミサイルではスタンダードミサイル発展型シースパロー(ESSM)艦対空ミサイルのようにミサイルの全長に渡って取り付けられた細長い翼を静翼とする設計が用いられる。ロシアでは短距離弾道ミサイル OTR-21 Tochka (SS-21) に採用された「すのこ尾翼」が空対空ミサイルの R-77 でも採用された。この形式の尾翼は最小限の体積で表面積を大きく取れるため有効な操縦が可能とされる。
  可動ノズルによる推力偏向制御(TVC:: thrust vector control):ロケットエンジンのノズルをジンバルやスイベルなどに載せて可動とし、ノズルの方向を変える事で推力の方向を変更しミサイルを操縦する。翼による空力制御と異なり大気圏外でも使用できるほか、翼が不要になればミサイルはコンパクトとなり体積効率が良くなる。航空機では狭い機内や機外により多くのミサイルを搭載できるようになる。ノズルの機構は複雑になる。アメリカのジュピター中距離弾道ミサイルポラリス潜水艦発射弾道ミサイルVL-ASROC対潜ミサイル等で採用されている。
  バーニアノズルによる制御:主エンジンとは別に姿勢制御用の小型ノズル(バーニアノズル)を設置し、適宜噴射して姿勢を制御する。史上最初の大陸間弾道弾であるR-7のRD-107/RD-108エンジンでは合計12基のバーニアノズルで姿勢を制御していた。バーニアノズルは独立したロケットエンジンである場合と主エンジンの排気を導く場合がある。

操向装置
  操舵翼:操舵翼によって飛翔方向を決めるミサイルでは、弾体を効果的に操向するために、操舵翼(=動翼)は前部か後部の比較的端部に備わっている。
  スラスト・ベクトル装置:ノズル噴射流の偏向によって飛翔方向を決めるミサイルでは、ベーンや可動ノズルが備わっている。
  操舵の動力源:姿勢制御を行う操舵装置を駆動する動力源には以下の物がある。
      気体タンク:タンクに蓄えられた高圧ガスの圧力
      ホットガス:薬品の反応によって生じるガスの圧力
      バッテリー、発電機:電動モーターによる駆動
エンジン:ミサイルを飛翔させる主エンジンには以下の種類がある。
  固体燃料ロケットエンジン:現代のミサイルは固体燃料を用いるロケットエンジンが主流となっている。これは構造が簡単なため安価であり整備が簡便である点が大きい。
  液体ロケットエンジン液体燃料を用いるロケットエンジンは固体燃料ロケットエンジンに比べておおむね比推力に優れているため、初期のミサイルや長射程を要求される弾道ミサイルで採用されていた。ただし燃料ポンプを始めとする機構的な複雑さや燃料自体の危険性により一定の整備が必要になる。

ジェットエンジンジェットエンジンは空気中の酸素を酸化剤として用いることで酸化剤タンクを廃し、その分燃料タンクを大きくする事で一般的なロケットエンジンより長射程を得ることができる。終始大気圏内を飛行し、長射程を要求される巡航ミサイル、対艦ミサイル等で採用されている。空気が無い宇宙空間や海中では使用できないほか、ジェットエンジンは液体ロケットエンジンと同様に機構的な複雑さを持つため、エンジンとしては高価になる。ただしジェットエンジンは航空機用エンジンとして大量生産されているため設計や生産ラインを流用する事で調達コストを削減する事ができる。
ラムジェットラムジェットエンジンは圧縮機とタービンが無く、超音速で飛翔する際のラム圧をそのまま空気の圧縮に利用するジェットエンジンである。エンジンに可動部が少ないため生産コストを削減する事が可能となる。ジェットエンジンと同様に空気中の酸素を酸化剤として利用できるため酸化剤を搭載しなくてもよく、その分を燃料の搭載に当てることができるためジェットエンジンに並ぶ長射程を実現できる。ラムジェットエンジンは静止時には作動せず、作動させるためには飛翔体を超音速まで加速する必要があり、そのためにブースターを組み合わせて使用する。ブースターは外装とされる事が多いが、全体にかさばるためロシアやフランスのミサイルでは統合型ラムジェットエンジンが採用されている。同エンジンは固体燃料ロケットで上昇・加速し、固体燃料が燃え尽きるとその空隙に空気取り入れ口から取り入れた超音速流を導き、燃料を吹き込んで燃焼させるもので、ブースターを外装とせずラムジェットと統合・一体化させているため極めてコンパクトになるエンジンである。
  固体燃料ロケットは「ロケットモーター」であり、液体燃料ロケットは「ロケットエンジン」とする名称の使い分けも存在するが[1]、定着した使われかたであるかは不明である。

発射方式:ミサイルの発射には複数の方式がある。
  航空機発射:オンランチャ式
          オフランチャ式
  パラシュート式車両発射
          ブースターロケットモーター式
          分離型ブースターロケットモーター式
          無反動ガス発生装置式艦船発射
  ブースターロケットモーター式:分離型ブースターロケットモーター式潜水艦
  ガス発生装置式
  圧縮空気式地下サイロ
  ブースターロケットモーター式
  圧縮空気式
  人間     分離型ブースターロケットモーター式
          無反動ガス発生装置式
安全性
主に艦船から発射されるミサイルでは、戦闘による被弾時や平時の火災時の誘爆を回避できないか検討されている。
固体推進剤は通常、爆燃せずに燃焼するのみであるが、火災で長時間加熱を受けると、ミサイル内部の推進剤全体が自己発火寸前の状態(スロークックオフ)となり、やがて何らかのきっかけで爆轟することが知られ(英駆逐艦シェフィールドの沈没原因)ている。
  艦船用ミサイルの推進剤に限らず、同様のリスクを低減するための弾薬はLOVA(低脆弱性弾薬)とも呼ばれ、研究が進められている。 1988年から米国防省は三軍共同で、熱や衝撃によっても予定外には爆発しない弾薬類とその周辺システムの開発を目指した、IM:: (不感弾薬)プロジェクトを開始した。
  例えば、固体推進剤を納めた外殻をらせん状の薄い鋼板3-4層で構成し、火災による過熱や被弾による衝撃でらせんが解けるように製造する。固体推進剤が燃える場合でも閉鎖されたモーターケース内部で爆燃や爆轟せずに、開放環境で燃焼するようなものが開発されている。
  スロークックオフへの対策として、コンポジット推進剤の基材では主流となる過塩素酸アンモニウム (AP) の中に自己発火点がAPより100度程度低い硝酸アンモニウム (AN) を少量加えることで、APより先にANに発火させ爆轟以前に燃焼で済ます工夫が行われている。
  同様に、推進剤に固体と液体の2種類を使うハイブリッド・ロケットエンジンは、燃焼に必要な燃料と酸化剤がミサイル内でも離れて収められているために、火災や衝撃によってもそれほど急速に両者が反応せず、比較的安全が保たれると期待されている。液体の酸化剤もゲル化できないか検討されている。








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