原子力発電問題-1



2023.05.31-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230531-33IKGGINVZPH3PHQJKLTHIWYWE/
GX法成立、原発「最大60年超」運転可能に

  60年を超える原子力発電所の運転延長を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が31日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。

  同法は、電気事業法や原子炉等規制法(炉規法)、原子力基本法など5本をまとめた束ねたもので、原発の運転期間を「原則40年、最長60年」とする現行ルールの大枠は維持している。一方で、原子力規制委員会の安全審査や裁判所の仮処分命令などで停止した期間は算入せず、実質的に60年超の運転を可能にした


2023.05.24-社団法人 環境金融研究機構-https://rief-jp.org/ct13/135760
浮体式原発開発プロジェクトを推進する英スタートアップ企業に、今治造船、尾道造船等の日本企業13社が合計8000万㌦(約100億円)出資。日本にも導入目指す(RIEF)

  英海洋・原発開発のスタートアップ企業のコアパワー(CORE POWER :  ロンドン)は22日、同社が開発する浮体式原子力発電開発プロジェクトに、日本の今治造船や尾道造船等の13社が参加すると発表した。日本企業は全体で約8000万㌦(約100億円)の第三者割当を引き受けて出資した。同社が開発する浮体式原発では、加熱した塩にウランを溶け込ませて核分裂による熱エネルギーを得る「溶融塩高速炉(MCFR)」を採用するとしており、小型化と安全性が高いとしている。早ければ2026年にデモンストレーション用の躯体を開発し、30〜32年には商業化を目指すとしている。

  コアパワー社は2018年設立の海運コンサル等を軸とするスタートアップ企業。CEOのMikal Bøe氏は海運ビジネスで30年の経験を持つ。メンバーの多くが海運事業や海運エンジニアリングの専門家と、大学院卒等の若いエンジニア等が中心。
  同社は溶融塩原子炉(MSR)を先端原子炉として位置付けている。溶融塩炉は、塩を400度以上加熱して液体にし、そこに低濃度ウラン(あるいはトリウム)を溶け込ませ、溶け込んだウランが核分裂して発生する熱エネルギーを得てタービンを回す仕組みだ溶融塩は燃料であるだけでなく冷却剤でもあるため、熱くなると反応速度が落ちることから、異常発熱等が生じた場合でもメルトダウンを避けられるとされる

  日本経済新聞の報道では、同社が開発する浮体式原発について、溶融塩高速炉(MCFR)としている。MSRは1964~69年に米国で実験炉が開発されたが、実用化には至っていない。英国やフランス、カナダ等では引き続き開発計画が進行している。一方のMCFRは、ビルゲイツ氏が主導するテラパワー等が2016年に設計したとされる。だが、詳細は未発表となっている。
  同報道では、コアパワーは、テラパワーや電力・ガス事業の米サザン・カンパニー、核燃料サイクルの仏オラノの4社で共同してMCFRでの浮体式原発を開発中としている。そうだとすると、今回の日本企業の出資は、これら4社の開発計画を資金面から支援する形になる。またコアパワー社は、日本の造船会社等の海洋技術を浮体式原発の建設に活用したいとしている
  2026年をメドとするデモンストレーション用の躯体は日本円で約500億円の建造費を見込んでいるという。順調に開発が進むと、2030~32年の間に商業化設備を投入する計画を立てている。同社では開発した浮体式原発について、まず海外での展開を試みたうえで、日本市場への導入も検討する考えとしている。

  同社では、MCR ないしMCFRの技術特性から、原子炉のメルトダウンが起きにくいというメリットに加えて、浮体式にすることで、東京電力福島第一原発が被災したような地震の影響を受けにくい点、建設費が陸上の原発に比べほぼ半分で済むほか、建設期間も70%短縮できる点をアピールしている。
  ただ、MCRないしMCFRについては溶媒である塩の腐食性が高く、圧力容器や配管の腐食による脆化の対策が、既存の軽水炉等に比べて困難との指摘がある。地震対策や津波対策についても、「沖合に設置すれば耐えやすい」とするが、その耐久性は、地震、津波の規模による。仮に操業中に津波が発生したり、洋上の発電所から使用済み廃棄物を搬出中に地震が起きる場合等の海洋汚染リスクは甚大になる
  陸上に比べて、立地がし易いとする点も議論が必要だ。海洋の場合でも、沿岸部の自治体や住民等からの反対は容易に予想される。漁業権との調整も簡単ではない。東電福島事故の影響で、中国、韓国等を含めた近隣海域の国々が放射能汚染リスクに強く反応したのは、海洋汚染への懸念からだった
  福島事故を起こし、壊れたままの原子炉の処理の見通しがいまだに立っておらず、政府による汚染水海洋放水計画が内外の注目を集め続ける中で、「浮体式原子炉」を日本の海洋に展開するという計画に、内外から拍手が起きるのか、不協和音が高まるのか。普通に考えると、どちらかはすぐにわかると思われるが


2023.05.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230502-CAPNGAGFDNLGPMEOBDOHTOERHA/
<特報>日仏、高速炉開発で協力 共同声明の全容判明

  日本とフランスの両政府が最終調整している原子力エネルギー分野における協力に関する共同声明の全容が2日、分かった。欧州を歴訪中の西村康稔経済産業相が3日、パリでパニエリュナシェ仏エネルギー移行相と会談し、署名する。次世代革新炉のうち発電時に生じる放射性廃棄物の量が減少する「高速炉」の研究開発に向けた協力強化などが柱となる。

  西村氏は会談で、日本政府が脱炭素に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)関連で高速炉実証炉開発事業に令和5年度から3年間で460億円(3億ユーロ相当)を充てることを伝える。
  共同声明には日仏両国の行動計画として、高速炉など次世代革新炉の研究開発協力、原子炉の長期運転に向けた協力、部品や核燃料を含む原子力サプライチェーン(供給網)の構築、原子力技術や人材の維持・強化が盛り込まれる方向だ。
  高速炉は使用済み核燃料を処理して再利用する「核燃料サイクル」で主要な役割を担うとして期待がかかっている。高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉が決まり壁にぶつかっているが、政府は昨年12月、高速炉開発の「戦略ロードマップ」を改訂し、2028(令和10)年ごろに技術を実証し経済性の見通しを得るための「実証炉」の概念設計をまとめるとした。2040年代半ばごろの運転開始を見込んでいる。
  フランスや米国で研究開発が進んでおり、資金調達での協力や知見の共有、日本の計画に助言を求めることも想定されている。

  ロシアによるウクライナ侵略に伴うエネルギー危機を踏まえ、岸田文雄首相は安定供給と脱炭素の両立に向けて原子力を最大限活用するとしており、日仏両国の協力強化は強い後押しとなりそうだ。


2023.05.01-NHK NEWS WEB (福島NEWS WEB)-https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20230501/6050022545.html
飯舘村 帰還困難区域の一部 避難指示が解除

  東京電力福島第一原子力発電所の事故影響で避難指示が出された福島県飯舘村の帰還困難区域のうち、一部の避難指示が1日、解除されました。
  これで原発周辺の6つの町と村に設定された「特定復興再生拠点区域」で、住民が居住できる地域に出されていた避難指示はすべて解除されました。

  飯舘村は、原発事故の影響で一時、全域に避難指示が出され、南部の長泥地区は、事故から12年たっても立ち入りを厳しく制限される帰還困難区域に指定されてきました。
  この地区のうち、およそ17%が国や村が先行して除染やインフラ整備を進める「特定復興再生拠点区域」に設定され、1日午前10時に避難指示が解除されました。また、隣接する拠点区域外の公園の避難指示も人が居住しないことなどを条件に同時に解除されました。
  拠点区域に通じる道路のゲートは、住民が見守る中、開放され、「帰還困難区域」と書かれた看板が撤去されました。
  これで、先行して除染などを実施する原発周辺の6つの町と村に設定された「特定復興再生拠点区域」で、住民が居住できる地域に出されていた避難指示はすべて解除され、今後はこうした地域の復興や、いまだ避難指示が残る地域の復興のあり方が課題になります。
  飯舘村の杉岡誠村長は「拠点区域の避難指示が解除され、感慨深い。きょうを新たなスタートとして住民とともに長泥地区を発展させていきたい」と話していました。
【村で生活再開させる住民】
  鴫原清三さん(68)は、長泥地区の特定復興再生拠点区域に自宅があります。今はおよそ50キロ離れた避難先の福島市で暮らしていますが、原発事故前に行っていた花の栽培を国の実証事業に協力する形で長泥地区で再開させ、避難先から車で1時間ほどかけて毎週、通ってきました。これまでは、自宅を訪れる際には通行証の提示が、自宅に泊まるには事前登録が必要でしたが、1日からは自由に訪れて寝泊まりできるようになりました。
  鴫原さんは、村での生活を再開させたいと拠点区域の避難指示解除の時期が決まったあと、去年12月ごろから自宅の畳やクロスを張り替えるなどのリフォームを始め、30日終わったということです。
  今後は、避難先と村の2か所を拠点に、週の半分ほどを村で過ごしたいとしています。
  鴫原さんは「避難指示解除は一歩前進です。小さな頃から住んでいたところなのでやはりここに住みたいと思っていました。ここに住めば長生きできそうな気がします。ここで花を育てて花があふれるふるさとにするのが今の夢です」と話していました。


2023.04.27-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230427-CN3PZEHNTFMH3JEKO7TKND7HFI/
原発60年超運転可能とする法案、衆院通過

  60年を超える原子力発電所の運転延長を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が27日の衆院本会議で、自民、公明、日本維新の会、国民民主各党の賛成多数で可決された。立憲民主党と共産党は反対した。参院に送付され、今国会で成立する見込みだ。
  岸田文雄政権は既存の原発を最大限活用する方針で、法改正により温暖化ガスの排出削減と電力の安定供給の両立を目指す。東京電力福島第1原発事故を踏まえた原発政策の大きな転換点となる。

  法案は、電気事業法や原子炉等規制法(炉規法)原子力基本法など5本をまとめた「束ね法案」で、原子力基本法には原発活用を「国の責務」と明記した。
  原発の運転期間は、炉規法から経済産業省所管の電気事業法に移管する。「原則40年、最長60年」現行ルールの大枠は維持するが、原子力規制委員会の安全審査や裁判所の仮処分命令などで停止した期間は算入せず、実質的に60年超の運転を可能にする。
  炉規法には、原発の運転開始から30年を超える場合、最長10年ごとに規制委が施設の劣化状況など安全性を審査し、認可を受ければ運転可能とする新制度の導入を盛り込んだ。
  一方、参院で審議中の、脱炭素の取り組みを加速するための「GX推進法案」を巡っては、自民、立民、公明、維新、国民などが共同で修正案を提出。GXの推進で影響を受ける産業に配慮し、脱炭素社会への「公正な移行」を踏まえる文言を加え、27日の経済産業委員会で可決された。28日の参院本会議で可決後、衆院に戻される運びだ。


2023.03.13-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20230313/k00/00m/040/214000c
九条の会、核廃絶、脱原発… 平和訴え続けた、大江健三郎さん
【春増翔太、島袋太輔】

  大江健三郎さんは平和と護憲や脱原発を巡る活動にも携わってきた。2004年6月には、自衛隊のイラク派遣や憲法改正議論の高まりを背景に、評論家の加藤周一さん、哲学者の鶴見俊輔さん(ともに故人)らとともに、「九条の会」を発足させた。

  16年から世話人として会の活動に関わる清水雅彦・日本体育大教授(憲法)は「平和運動の大先輩でもありショックだ。左や右といった政治的立場を超える、平和に強い関心を持った『良心的な作家』だった」と語った。
  最後に席を共にしたのは、日比谷野外音楽堂(東京都)で14年にあった集団的自衛権の行使容認に反対する市民集会。以来、直接会うことはなかったが「全国の各地域で7000の『九条の会』が立ち上がったのは、核兵器が使われた後の時代の平和を考え、憲法の堅持を訴えた大江さんたちの貢献があったから。これからの平和運動は私たちでもり立てていきたい」と話した。
  被爆者らの間にも惜しむ声が広がった。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員の田中熙巳(てるみ)さん(90)は「温和で口数の少ない方だったが、根底には被爆という理不尽に対する『怒り』があった。被爆者に対する連帯の思いを持ち続けてくれた人だった」と悼んだ。
  大江さんは1965年、被爆者や医師を取材した「ヒロシマ・ノート」(岩波新書)を出版。核兵器廃絶に向けた発信を続けた。80年代、被爆者救済を求めて日本被団協のメンバーらが東京・霞が関の厚生省(現厚生労働省)前で座り込みをした際には、ふらりと訪れ、「ご苦労様」と言いながら食べ物を差し入れてくれたという。田中さんは「虐げられる者に寄り添う方だった。被爆者がデモや集会を盛んにやっていた時代を知る方だけに大変寂しい」と話した。
  被爆者運動や証言、記録の保存活動に取り組むNPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」でも、大江さんは呼びかけ発起人の一人を務めた。「二度と被爆者を生まないために、被害の記録と記憶の継承こそが大事だ」と話していたといい、発足時は「受け継いで、さらに」と題した記念講演も引き受けてくれたという。
  伊藤和久事務局長は「広島、長崎の被爆被害に関心が深く、世界的に影響力のある方。私たちにとって何より心強い存在だった。残念の一言だ」と惜しんだ。
  大江さんは11年3月の東京電力福島第1原発事故後、一貫して脱原発も訴えてきた。福島での集会や東京でのデモに加わり、「原子力のエネルギーは必ず荒廃と犠牲を伴う」などと話していた。この年の9月、「さようなら原発」と銘打った脱原発の市民運動の呼びかけ人の一人として記者会見した際は「原発事故は広島や長崎に次ぐ事態。二度と起こさない決意で政治を動かす必要がある」と述べた。
  この会見に同席し、共に活動してきた作家の落合恵子さんは「現政権で軍拡や原発推進が行われようとしている中、どれほど大きな存在だったか。無念でならない」と話した。
  大江さんは今月21日に都内で開かれる予定の集会にも呼びかけ人として名前を連ねており、落合さんは「『憲法を守り、原発をなくす』という大江さんの言葉を大事にして、参加者に語りかけたい」と決意を語った。【春増翔太、島袋太輔】


2023.03.07-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/special/nuclear-power-plant_fukushima/news_02/article/article_01.html
原発処理水 迫る海洋放出 方法は?対策は?現地を訪ねた

  福島第一原発を訪ねるとすぐに目にとまるのは、巨大なタンクの数々だ。その数1000基余り。総容量はおよそ137万トンに及ぶ。保管されているのは、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水だ。この水の放出開始が、ことし春から夏ごろと目前に迫っている。
  東京電力は国の基準を大幅に下回るよう薄めるというが、いったいどのように放出されるのか。2月、私たちはあらためて現地を取材した。
(科学文化部記者 橋口和門)
林立するタンク
  わたちが訪れたのは、タンクが建ち並ぶエリア。タンクの高さはおよそ15メートル。1基で1000トンの水をためることができる。敷地内には、ここ以外にも多くのタンクエリアがある。そのほとんどはすでに容量いっぱいの処理水をためていて、2023年2月時点では、総容量の96%にあたる132万トン余りにのぼっているという。東京ドームに水をためた場合の容量が約124万トンなので、すでにあふれている計算だ。
処理水はどうして増えるのか
  「処理水、処理水」と誰でも知っている言葉かのように使ってしまったが、処理水とはどんなもので、どうしてここまで増えてしまったのだろうか。メルトダウンを起こした1号機から3号機の原子炉やそれを覆う格納容器の内部には、溶け落ちて固まった核燃料がいまも残っている。
  この核燃料を冷やすために入れた水や、建屋内に流れ込んだ地下水や雨水が放射性物質に汚染され、いわゆる汚染水が発生している。その量は一時1日500トンにのぼっていたが、10年余りで5分の1に減少。それでも1日あたり100トン発生している。この汚染水がくみ上げられ、多核種除去設備、通称「ALPS(アルプス)」などに送られ、薬液による沈殿処理や活性炭などの吸着素材により大半の放射性物質が取り除かれる。この処理をほどこした水が処理水だ。
  現在は放射性物質の除去が十分でなく基準を超える水も多く残されているが、放出前には再度ALPSにかけて基準未満まで薄めるとしている。ただ、ALPSでは取り除けない放射性物質がある。「トリチウム」、日本語で三重水素と呼ばれる水素の仲間で、化学的な方法で水から分離して除去するのが難しい。このためそのまま処分することができず、タンクにためられてきた。
どうやって放出するのか
  今回の取材では、処理水を放出するために建設されている施設も見ることができた。放出前に処理水を海水と混ぜて薄め、一時的にためておく「立て坑」と呼ばれる施設だ。
  東京電力の計画では、海水で薄めてトリチウムの濃度を国の基準の40分の1となる1リットルあたり1500ベクレル未満まで下げるとしている。これはWHO=世界保健機関が示す飲料水の基準の7分の1程度にあたる。加えて放出開始後の当面の間は、海水と混ぜ合わせたあとにもトリチウムの濃度を測定した上で放出することにしていて、この測定作業には2か月程度かかる見込みだという。
  水はこの間、立て坑にとどめ置かれたあと、地下の入り口から海底トンネルの中を通って沖合1キロの地点で放出される。トンネルは貫通まで残りおよそ200メートルのところまで掘り進められているという。原発の敷地内からは、放出口の場所を示す海面に突き出た4本の鉄柱も確認することができた。
懸念にどう応える
  やはりもっとも気になるのは、風評被害などを懸念する地元の声にどのように応えようとしているのかということだ。実はトリチウムはふだんから世界中の原子力施設で放出されている。
  2022年時点では全国で再稼働している原発は西日本にある加圧水型と呼ばれるタイプのみだが、経済産業省によるとこのタイプの原発では年間で18兆~83兆ベクレルのトリチウムを放出しているという。さらに、青森県の六ヶ所村に建設中の使用済み核燃料を再処理する施設では、その100倍の放出が予定されているが、周辺の住民の被ばく量は年間20マイクロシーベルトと、一般の人の年間の被ばく限度である1ミリシーベルトの50分の1程度に抑えられると評価している
  これに対し福島第一原発で1年間に放出する量は、事故前通常の運転をしていたときに目安とされていた22兆ベクレルを下回る水準になるようにする計画だ。
  東京電力が実施したシミュレーションでは、トリチウムの濃度の上昇は周辺2キロから3キロの範囲にとどまり、沿岸で暮らす漁業者の年間の被ばく量は、1ミリシーベルトの6万分の1から1万分の1程度と試算された。ただ、やはり事故のイメージが強い福島第一原発からの放出はネガティブに捉えられかねず、政府は放出の安全性をテレビCMも含むさまざまな方法でPRしている。
処理水でヒラメを飼ってみた
  今回の取材で初めて訪れたのが「海洋生物飼育試験施設」だ。去年9月からアワビの稚貝や福島県沖でとれる「常磐もの」の代表格ヒラメなどを陸上の水槽で飼育している。それらを原発周辺の海水を入れた水槽と、海水で1リットルあたり1500ベクレル未満まで薄めた処理水の水槽にわけ、比較しているという。
  この取り組みによってどんなことを期待しているのか。トリチウムは水と同じ性質で、体内に長期間蓄積しないことが知られている。飼育を通してヒラメの体内に1500ベクレルを超えるような濃度のトリチウムがたまらないことを確認しているのだという。実際、これまでの分析では1100ベクレル程度で止まり、その後、通常の海水に戻すとトリチウムは検出できない値まで下がったという。
  さらに飼育するヒラメの様子は、YouTubeやTwitterで24時間配信している。

理解はどこまで進んだか
  全国の人たちは、処理水の放出をどう捉えているのか。NHKは、2月10日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行った。調査の対象となったのは2483人。50%にあたる1229人から回答を得た。
  処理水を国の基準を下回る濃度に薄めたうえで海に放出する方針について賛否を聞いたところ、「賛成」が27%、「反対」が24%、「どちらともいえない」が41%だった。単純比較はできないものの、政府が放出方針を決定した直後の2年前に聞いたときとほぼ同じ結果になった
漁業者の受け止めは
  漁業者などの懸念は根強い。計画どおりであれば影響はほとんどないというものの、政府や東京電力が信用できるのか。全国の人が正確な情報を知らなければ再び福島の水産物などへの風評が広がるのではないか。
  政府と東京電力は2015年に「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と表明している。政府は、理解を得るための取り組みに躍起だ。水産物の販路拡大の支援や、風評被害で需要が落ち込んだ場合に冷凍可能な水産物を買い取る事業などに充てる300億円の基金を設置。さらに、全漁連=全国漁業協同組合連合会の要望に応じる形で、長期的な事業継続に向けた漁場の開拓などの取り組みを支援する500億円の基金も新たに設けた。
  これを受けて全漁連は「信頼関係に向けての姿勢と重く受け止めた」とする談話を発表。ただ「このことのみで漁業者の理解が得られるものではなく、全国の漁業者・国民の理解を得られない海洋放出に反対であることは変わるものではない」としている。
知って考える
  実際に福島第一原発に訪れて取材すると、放出に向けた準備が着々と進められていることを実感した。
  東京で暮らしていると、事故を起こした原発の廃炉がいまも道半ばであり、その過程で生じた処理水が、復興を進める地域や漁業者との間に葛藤を生んでいることもつい忘れそうになる。言うまでもなく、福島で生み出された電気を使っていたのは首都圏で暮らす人たちであり、その電気でさまざまな産業が育まれ、効果は日本全国に波及してきた。
  全国の人たちに処理水とは何か知ってもらい、みずからの問題として考えてもらえるようにすることが重要だと感じた。


2023.03.03-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230303/k10013997331000.html
北陸電力志賀原発の敷地断層「活断層でない」規制委審査で了承

  石川県にある志賀原子力発電所の敷地内を通る断層について、「活断層ではない」とする北陸電力の主張が、原子力規制委員会の審査会合でおおむね了承されました。7年前、規制委員会の専門家会合が示した「将来動く可能性を否定できない」などとする見解を転換することになり、北陸電力が再稼働を目指す2号機の審査が進展することになります。

  志賀原発には1号機と2号機があり、7年前、原子力規制委員会の専門家会合が敷地内の断層の一部について、「将来動く可能性を否定できない」などとする見解をまとめました。断層の真上にある1号機は廃炉に、2号機も大幅な改修が必要になる可能性がありました。これに対し北陸電力は、地層に含まれる鉱物の状態から断層が動いた年代を把握する「鉱物脈法」と呼ばれる新たな手法を用いた評価を提示。
  600万年前より昔に生じたと推定される鉱物に断層による変形が見られないことなどから、敷地内の断層の活動性を否定できると主張してきました。
  原子力規制委員会の石渡明委員は、3日の審査会合で「新たに出された膨大なデータに基づいて評価し直したところ、将来活動する可能性のある断層ではないと判断できる、非常に説得力のある証拠が得られた」と述べました。
  そのうえで、審査会合では「おおむね妥当な検討がなされているものと評価する」として、「活断層ではない」という北陸電力の主張が了承されました。
  7年前の見解を転換することになり、2号機は審査が進展することになりますが、地震の揺れや津波といった自然災害の想定や、その対策など、多くの項目が残されています。
志賀原発の断層めぐる議論の経緯
  志賀原発2号機は、17年前の2006年に営業運転を開始しました。2011年に定期検査に入った直後、東日本大震災が発生し、以降は停止しています。福島での事故を教訓に新たに策定された規制基準に基づき、北陸電力が原子力規制委員会に適合性の審査を申請したのは2014年でした。
  その後、志賀原発の敷地内を通る断層が、将来動く可能性のある「活断層」かどうか、原子力規制委員会の専門家による会合や2号機の再稼働を目指す審査で議論されてきました。
  「活断層」かについては、規制委員会の専門家会合で議論され、2016年に評価書が取りまとめられました。
  このときは、1号機の真下を通る断層「S-1」と、   1号機と2号機の原子炉につながる冷却用配管の真下を通る断層について、評価しました。
  「Sー1」断層については、1号機の建設前に原子炉建屋のすぐ脇を掘って地層を調べるトレンチ調査のスケッチに記された地下の岩盤の亀裂と段差をもとに「将来動く可能性は否定できない」と指摘しました。また、
  冷却用配管の真下を通る断層についても、トレンチ調査による地層の状況などをもとに「将来、地盤を変形させる可能性がある」という見解を示しました。
  新しい原発の規制基準では、将来動く可能性のある断層の上に重要な設備の設置を認めておらず、結論が覆らないかぎり、1号機は再稼働できず廃炉に、1号機と2号機の原子炉につながる冷却用配管は移設や補強などの対応が必要になる可能性が出ました。
  一方で、こうした評価は建設当時の断層のスケッチなど限られたデータに基づいていて、より正確な評価をするにはさらに詳しい分析やデータが必要だとも指摘していました。

  これに対し北陸電力は、2号機の再稼働に向けて2014年に申請した審査の中で、これらの断層を含む敷地内の断層は、いずれも「将来動く可能性はない」と主張し、その根拠として「鉱物脈法」と呼ばれる新たな手法による評価を提示しました。
  原発の新しい規制基準では、12万年前から13万年前の「後期更新世」の時代よりもあとに動いたとみられる断層を「活断層」と定義していて、地層の状態から活動性の有無やずれ動いた年代を調べる手法が用いられます。
  一方で、志賀原発の場合、地層の変化が分かる資料が少ないことなどから、地層に含まれる鉱物が地下の熱などの影響で変質した時期を調べることで断層の年代を把握する手法を採用しました。
  審査の対象となった敷地内断層は10本あり、1本でも活断層だとされた場合、再稼働は認められないとされていました。
  北陸電力は、ボーリング調査で採取した試料などを分析した結果、600万年前より昔に生じたと推定される鉱物に断層によるずれや変形が見られないことなどから、いずれの断層も活動性を否定できると主張しました。
  これを受けて規制委員会は、現地調査をしました。断層周辺の地層の変化や、断層に含まれる鉱物の分析結果などを観察し、北陸電力の主張が妥当かどうか検討していました。
志賀原発の敷地内の断層と「鉱物脈法」
  志賀原子力発電所の敷地内には、原子炉建屋の真下を含めて複数の断層があります。原子力規制委員会は、このうち10本を対象に「活断層」かどうかの見極めを続け、1本でも「活断層」なら再稼働はできないという認識を示していました。これに対し北陸電力は、「活断層」ではない根拠として、「鉱物脈法」を使って得られたデータを示しました。
  「鉱物脈法」は、断層を横断して分布する鉱物を調べる手法で、これらにずれや変形が見られないとして、断層の活動性を否定しました。
北陸電力「大きな一歩」
  「活断層ではない」とする主張がおおむね了承されたことについて、北陸電力は「この審査結果は地元の皆さまの安心につながるものであり、再稼働に向けた審査のステップとして大きな一歩と受け止めている。今後も敷地周辺の断層や地震動、津波などの審査が継続されるが、今後の審査においても適切に対応し、地元の皆さまの了解を大前提に 1日も早い再稼働を目指していく」とコメントしています。
石川県 馳知事「丁寧、厳正かつ迅速な審査を行ってほしい」
  石川県の馳知事は「一段落がついたと受け止めている。再稼働に向け今後もまざまな審査が続くが、原子力規制委員会には丁寧、厳正かつ迅速な審査を行ってほしい」と述べました。一方、記者から「一刻も早い再稼働を求めるのか」と質問されたのに対し、馳知事は「一刻も早くということではない。丁寧であることと迅速であることは同じくらい重視している」と述べました。
原告団「審査方法は妥当だったのだろうか」
  一方、志賀原発の再稼働の差し止めを求めて訴えを起こしている原告団は「審査は十分尽くされたといえるのだろうか。審査方法は妥当だったのだろうか」としたうえで、「志賀原発が活断層に囲まれた原発であることが次々と明らかになる中、敷地内断層に限っては『活動性なし』と断言できるのか、周辺断層からの影響はないのか、よりいっそう慎重な審査と判断が求められるはずだ」などとしています。


2023.02.13-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/230990
原発運転60年超を石渡委員反対のまま多数決で決定 原子力規制委 独立性はどこへ…
(小野沢健太)


  原子力規制委員会は13日、臨時会を開き、原発の60年超運転に向けた新たな規制制度案を決定した。多数決で委員5人のうち4人が賛成、石渡明委員が反対を表明した。老朽原発の規制の在り方を大転換させる重要案件が、委員の意見が一致しないまま決められる異例の事態となり、拙速な決定には、賛成した委員からも疑問の声が上がる。(小野沢健太)

  現行の原子炉等規制法(炉規法)は原発の運転期間を「原則40年、最長60年」と定める。政府は昨年12月、再稼働の審査や司法判断などで停止した期間を運転年数から除外し、実質的に60年超運転を可能にする方針を決め、改正法案を今国会に提出する。運転期間の規定は、経済産業省が所管する電気事業法で改めて定める。
  規制委は、この方針に対応する新たな規制案について議論してきた。前回、8日の会合では4人の委員が改正方針に賛成したが、地質の専門家の石渡委員が「原則40年、最長60年」との規定が形式上は維持されることを踏まえ、「われわれが自ら進んで法改正する必要はない」などとして反対した。臨時会を開いて改めて議論することになった。
  この日、決定した新たな規制案は原発の運転開始から30年後を起点に10年以内ごとに劣化状況を審査、規制基準に適合していれば運転延長を認可する。
  臨時会で、石渡委員は2020年に規制委が示した「原発の運転期間は利用政策側(推進側)が判断する事柄で、規制委は意見を言う立場にない」とする見解について、「当時の委員会で、しっかりと議論されたとは言えない」と指摘。当時は、電力業界団体からの意見に対して示した見解であり、今回のように、運転期間を延長する法改正を前提につくられた見解ではないと説明した。ほかの委員らは見解の妥当性を強調。議論は平行線となったため山中伸介委員長が、委員一人一人に賛否を確認した。
◆政府と歩調、使命を放棄した規制委
  【解説】 原子力規制委員会が原発の60年超運転に向けた新規制案を多数決で決定したことは、反対の声に向き合わず性急に原発推進に踏み込む政府と歩調を合わせ、独立性を掲げる規制委の使命を放棄するものだ。
  規制委の運転期間見直しを巡る新制度の検討は、異例ずくめだった。山中伸介委員長は、委員長就任からわずか2日後の9月末、経済産業省の担当者を呼び出して意見聴取するよう指示。規制当局自らが推進側に近づいた。
  事務局は、その指示がある2カ月以上前の7月から非公開で経産省職員と情報交換を重ねていた。経産省が作成した資料については「作成者が公開の可否を判断するべきだ」として公開せず、規制委の内部資料も「恥ずかしい内容」との理由で黒塗りにした。推進側とのやりとりを明らかにする姿勢すら、まったく感じられない。
  再稼働を目指す原発の中で最も古いのは、関西電力高浜1号機(福井県)の48年。60年を超えるまでに10年以上あり、急いで制度を変更する必要はない。それでも結論を急ぐのは、今国会での制度変更を目指す政府のスケジュールに足並みをそろえるためだ。東京電力福島第一原発事故の教訓で、推進と規制を分離するために発足した規制委の理念が消え去ろうとしている。(小野沢健太)


2023.02.01-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230201/k10013967531000.html
高浜原発4号機の自動停止 制御棒装置不具合で点検作業中に発生

  福井県にある関西電力の高浜原子力発電所4号機で1月30日、原子炉が自動停止したトラブルで、当時、制御棒を動かす装置に不具合が見つかり、点検作業を行っていたことが分かりました。原子力規制庁は今回のトラブルに関係している可能性が高いとみて原因を調べています。

  福井県高浜町にある高浜原発4号機では、運転中だった30日の午後3時20分ごろ、原子炉内の核分裂の状態を示す中性子の量が急激に減少したという異常を知らせる信号が出て、原子炉が自動停止しました。
  1日の原子力規制委員会の会合では、事務局の原子力規制庁が関西電力からの報告として、トラブルが起きる5日前から当日にかけて、核分裂を抑える制御棒を炉心に出し入れするための装置で、故障を示す警報が合わせて3回出ていたと説明しました。
  規制庁によりますと、制御棒は電磁石の力で保持した爪にひっかけてつり上げていますが、電流の値が通常よりも低くなっていることが分かり、点検作業のため一部の電源を落としたところ、原子炉が自動停止したということです。
  原子力規制庁は、今回の自動停止が装置の不具合や作業と関係している可能性が高いとみて原因を調べています。
  原子力規制委員会の山中伸介委員長は「原子炉を『止める』という非常に重要な部位のトラブルなので、原因究明をするとともに緊張感を持って取り組んでほしい」と述べました。


2023.01.07-中日新聞-https://www.chunichi.co.jp/article/613485?rct=national
高浜原発施設火災は作業ミスが原因か 協力会社点検時

  関西電力高浜原発(福井県高浜町)の放射線管理区域外施設で昨年十二月に発生した火災で、関電は六日、協力会社従業員らの作業ミスが原因との見方を明らかにした。点検時に作業要領で定められた手順や確認を怠っていたという。

  関電によると、海水電解装置建屋で分電盤を点検後、アース線を取り外さないまま受電したため過剰な電流が流れ、アース線の被覆から発火したとみられる。作業要領では、作業責任者らが立ち会ってアース線の取り外しを確認した上で受電するはずだったが、守られていなかった。



2022.12.21-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/221362
原子力規制委が原発の60年超運転認める規制制度案を了承 長期運転の上限なくなる

  原子力規制委員会は21日の定例会合で、政府が検討する「原則40年、最長60年」と規定された原発の運転期間の見直しを巡り、60年超の運転を可能にする新たな規制制度の案を了承した。原発を積極活用する政府方針を追認した形で、東京電力福島第一原発事故後に定められた長期運転の上限がなくなる。
(増井のぞみ)

【関連記事】60年超の原発も運転容認 原子力規制委 仕組みの上では無期限も可能に

  規制委は意見公募(パブリックコメント)や電力会社からの意見聴取をした後、来年の通常国会に原子炉等規制法(炉規法)の改正案を提出する見通し。
  新たな規制制度では、運転開始から30年後を起点に設備の劣化状況を審査し、運転延長の可否を判断。これを10年以内ごとに繰り返す。審査でチェックする内容は、60年までは現行の審査とほぼ同じ。60年超の審査内容は未定で、今後に検討する。
  規制委の山中伸介委員長は記者会見で「60年以降の審査は、それぞれのプラント特有の項目を加える必要がある」と話した。
  経済産業省は原則40年、最長60年とする規定は維持した上で、再稼働に向けた審査などで停止した期間を運転年数から除外。実質的に60年超の運転を可能にする制度を検討している。

◆パブコメは22日~来年1月20日
  原子力規制委員会は、22日〜来年1月20日、60年を超えた原発の運転を可能にする規制の概要案について、意見公募(パブリックコメント)をインターネットと郵送で実施する。規制委のホームページの「法令・手続・文書」にある「パブリックコメント」で意見募集にアクセスすると、意見提出用紙や宛先などが紹介されている。ネットでは意見募集要領を確認後、意見を入力できる。


2022.11.29-赤旗-
ルール変え原発延命-経産省原案 廃炉建て替え新増設

  経済産業省は28日、岸田首相の原発推進方針を受けた今後の原子力政策の方向性をまとめた行動計画の原案を同省の審議会で示しました。次世代型原発の開発・建設の推進、「原則40年、最大60年」という原発の運転期間の現行ルールを変えて老朽原発を動かし続ける仕組みの整備などを盛り込んでいます。年内に決定しようとしています。

  2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、政府は「可能な限り原発依存度を低減する」とうたい、新増設や建て替えは「想定していない」としていたのに、電力供給を口実に事故の教訓を忘れ、それらの判断を投げ捨てたもので、将来にわたり原発を使い続ける原発回帰方針です。
  原発の運転期間は、事故後に改定された原子炉等規制法で運転開始から原則40年とされ、規制委が認可した場合、1回に限り最長でさらに20年延長できると定められています。
  今回の原案では「原則40年、最大60年」とした上で、運転期間から新規制基準に基づく審査などによる停止期間を除くとしており、60年以上の運転が可能です。仮に審査で10年止まっていれば、その分を追加延長でき、最大70年運転できる仕組みです。経産省は来年の通常国会に関連法案の提出をねらっています。
  次世代型原発の開発・建設では、まずは廃炉を決めた原発での建て替えをその対象にするとした上で、実現に向け政府支援や事業環境整備の検討・具体化を進めるとしています。このほか再稼働の加速への取り組みや、普通の原発でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使う「プルサーマル」を推進する自治体への交付金を創設するとしています。
  岸田首相は8月の政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、原発の新増設や既存原発の最大限活用などを「政治決断を必要とする項目」として表明していました。


2022.11.21-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/world/20221121-OYT1T50062/
ザポリージャ原発に多数の砲撃、施設の一部損傷…IAEA事務局長「危険なほど接近」

  【ベルリン=中西賢司】国際原子力機関(IAEA)によると、ロシア軍が占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の原子炉付近などで、19日夕から20日朝にかけて多数の砲撃があり、施設の一部などが損傷した。放射線量の異常や死傷者は報告されていない。IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は攻撃の即時停止を訴えた。

  発表によると、砲撃は19日午後6時前に始まった。20日午前9時15分頃から55分頃までの間には、十数回の爆発があった。放射性廃棄物の貯蔵施設や原子炉につながる電気ケーブルなど数か所が被害を受けた。
  ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは、露軍が20日朝に少なくとも12発の砲撃を行ったと発表した。一方、露国防省は20日、ウクライナ軍が19日に11発、20日朝に14発を発射したと主張した。
   グロッシ氏は「砲撃は危険なほど接近してきた。砲撃を行っているのが誰であれ、多くの人々の命を危険にさらしている」と述べ、原発一帯で武力攻撃を控える「安全保護地帯」を設定する必要性を改めて強調した。


2022.11.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221102-ZH5FZCTOIJI7BLP3DWVDFQQUBM/
原発劣化、評価を厳格化 電力各社は負担増

  運転期間が60年を超えた原子力発電所の安全をどう確保していくのか。原子力規制委員会が2日、この議論に一つの方向性を示した。素案では運転延長に必要な認可時期を現行よりも10年前倒し、以降最長10年ごとに審査と認可を繰り返す制度を導入する。米国のような80年運転の実現に道筋が示されたとはいえ、「最長10年ごと」という認可ルール変更の狙いは何か。(白岩賢太)

  「経年化が進んだ原子炉については審査に合格しづらくなるような制度設計が必要なのではないか」。2日の規制委会合で、委員から長期間運転した原発について、現行よりも厳しく審査する仕組みが必要との指摘が上がった。
  現行のルールでは、運転開始後30年の時点で、電力会社が10年ごとに劣化具合を調べる高経年化技術評価の実施と長期運転計画の策定を求めている。さらに運転延長する場合は40年よりも前に運転延長認可制度に基づき、規制委の審査を受ける必要がある。新制度案では電力会社に求める2つのルールを一本化し、運転開始から30年を起点に最長10年の間隔で2つの審査を行うことが提示された
  「最長10年」と明記した理由について、事務局の原子力規制庁は原子炉の劣化状態や保守管理の実施状況、個別の原子炉の状況などを勘案し、「前回の審査から10年を経過するよりも早いタイミングで劣化具合が評価できるよう考慮した」と説明。仮に5年おきで審査した場合、「原発設備の経年変化が見えにくい」(同庁担当者)という事情もある。
  逆に20年おきの審査で運転延長を認めた場合、規制が緩くなったとの印象を与えかねない。規制委の山中伸介委員長は「現行よりもはるかに厳しい規制となる」との認識を示したが、新制度が導入されれば電力各社の負担は大きくなる。
  規制委の方針について、電力会社の担当者は「60年超運転に道が開けたとはいえ、審査のたびに巨費を投じて安全対策を講じなければならない。費用対効果の面で60年超は現実的なのか。難しい経営判断となる」と本音を漏らした。







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