原子力発電問題-1



2020.9.16-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200916/k10012621611000.html
日立製作所 イギリスの原発建設計画から撤退決める

  日立製作所はイギリスの原子力発電所の建設計画から撤退することを決めました。海外での原発の建設によって原子力事業を手がける日本企業の収益源の確保や技術の継承を進めるという政府の成長戦略も、難しい局面を迎えています。
  発表によりますと日立は16日の取締役会でイギリス中部・アングルシー島で進められている原子力発電所の建設計画から撤退することを決めました。
  この計画をめぐって日立は、安全対策などでコストが膨らみ事業の採算性の確保が見通せないとして、去年1月、計画への参加を凍結すると明らかにしていました。
  その後もイギリス政府に対し支援の拡大を求めてきましたが、交渉が進展しないまま1年半以上がすぎ、新型コロナウイルスの感染拡大もあって資金調達が難しくなったとして、撤退することを決めたということです。
  日立では凍結の時点で関連する損失を計上しているとして、撤退に伴う今後の業績への影響は軽微だとしています。
  この計画は、海外での原発の建設によって原子力事業を手がける日本企業の収益源の確保や技術の継承を進めるという政府の成長戦略の一端を担うものとされてきました。
  しかし今回の日立の撤退によって、日本企業が手がけている海外の事業は事実上なくなるため、政府の戦略も難しい局面を迎えています。
専門家「どう技術力維持するか検討進めるべき」
  日立製作所がイギリスでの原発建設計画から撤退を決めるなど、国内メーカーの原発輸出の計画が相次いで止まっていることに関して、かつて原発メーカーで技師長を務め、原子力の技術に詳しい法政大学客員教授の宮野廣さんは「国内でも福島の事故後、新規の建設計画はない。建設に携わると、原子炉容器や制御棒など安全上重要な設備のほか、地震影響の予測計算などの技術力を磨くことができるが、その機会が減るとメーカーの技術者の力が低下していく。技術力は一朝一夕では身につかない。技術者の高齢化も進んでいて技術継承が危惧される」と述べ、国内外で原発建設の機会が減少する中、国やメーカーはどう技術を維持するか、検討を進めるべきだと指摘しています。
イギリス政府「企業や投資家と新プロジェクトを協議」
  日立がイギリスの原子力発電所の建設計画から撤退を決めたことについて、イギリス政府は16日、コメントを出し、「非常に残念なニュースだ。原子力発電はイギリスの将来のエネルギー構成で重要な役割を果たすことから、イギリスはこのプロジェクトに力を入れてきた」としています。
  そのうえで、「日立が撤退を決めた北ウェールズを含むイギリス国内で建設を望んでいる企業や投資家と新たなプロジェクトについて引き続き協議していきたい」として、原発の老朽化で課題になっている新たな原発の建設計画を進める方針を改めて強調しました。


2020.7.2-NHK 政治マガジン-https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/40833.html
古い石炭火力発電所発電量 9割程度削減へ調整 政府

  政府は、石炭火力発電の在り方を大きく見直す方針を固めました。二酸化炭素の排出が多い、古い石炭火力発電所による発電量を2030年度までに9割程度、削減する方向で調整に入りました。
  石炭火力による発電をめぐっては、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定に基づいて脱炭素に向けた取り組みが求められるなか、二酸化炭素の排出量が多いとして国際的に見直しの動きが強まっています。
  一方、国内の発電量に占める石炭火力の割合は、2018年度で31%にのぼり、主力の電源となっています。こうした中、政府は石炭火力発電の位置づけを大きく見直す方針を固めました。効率が低く二酸化炭素の排出量が多い古い方式の石炭火力発電所による発電量を、2030年度までに9割程度、削減する方向で調整に入りました。
  具体的には、電力会社が発電できる量に上限を設けて、古い発電所を休止や廃止するなどして、段階的に引き下げていく方法などが検討されています。
  一方、二酸化炭素の排出を抑えた効率がよい石炭火力発電所は新設も認めることにしています。9割程度の削減は、発電所およそ100基分にあたりますが、災害などの際に大規模な停電を防ぐためにすべてがすぐに廃止されないような仕組みも検討することにしていて、今後、有識者による会議を設置することにしています。
  こうした方針について、梶山経済産業大臣が3日にも明らかにすることにしています。
ヨーロッパなど「脱石炭」加速
  石炭火力発電をめぐっては、ヨーロッパの国などを中心に、すべての発電所の廃止を掲げる「脱石炭」の動きが加速しています。
  このうちイギリスは、2010年に28%だった石炭火力発電の割合を、2025年までにゼロにする方針を掲げています。
  フランスは、2022年までに石炭火力発電を廃止する方針のほか、2017年の時点で石炭火力の依存度が日本よりも高かったドイツも、遅くとも2038年までに廃止するとしています。
  このほかカナダは、排出される二酸化炭素を回収して地下に埋める技術が導入されていない従来型の石炭火力発電は、2030年までに段階的に廃止する方針です。
  一方、日本は石炭火力を選択肢として残しつつ、技術開発によって二酸化炭素の排出削減を目指す立場をとってきました。
  2030年に発電量に占める石炭火力の割合を26%程度と見込み、2050年に向けて効率の低い石炭火力を段階的に削減していく方針を示してきました。
日本では主力電源 見直しで削減加速か
  国内の発電量のうち石炭火力が占める割合は、2018年度は31%で、天然ガス火力の38%に次ぐ、主力の電源になっています。
  福島第一原子力発電所の事故を受けて原発の稼働が止まってからは、その割合が上昇しました。
  これは、燃料となる石炭の価格が原油や天然ガスと比べても安く、世界各地で産出されるため安定して調達できるメリットがあるためです。
  しかし、いわゆる化石燃料の中でも二酸化炭素の排出量が多いという大きなデメリットがあるため、電力会社などは燃焼温度を高めて発電効率を向上させた石炭火力発電の導入を進めてきました。
  経済産業省によりますと、高効率とされる石炭火力発電所は、全国におよそ30基あり、古い方式で効率が低いとされる発電所は、およそ110基に上ります。
  国際的に「脱石炭」の動きが強まる中、政府はこれまで新しい技術で排出量を減らす実効的な取り組みが重要だとし、具体的な計画は示してきませんでした。
  おととし改定した政府の「エネルギー基本計画」では、2050年に向けた対応として、非効率な石炭を段階的に削減するとしてきましたが、今回の見直しは、その取り組みを加速するねらいがあります。
  また、石炭火力への依存を大きく減らすことによって、今後は再生可能エネルギーや原子力も含めた長期的なエネルギー政策の見直しも課題となります。


2020.5.20-東京新聞 TOKYOU WEB-https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202005/CK2020052002000265.html
川内原発2号機、停止 テロ対策遅れ 2例目

  九州電力は二十日、川内(せんだい)原発2号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉が停止したと明らかにした。同日午前二時半ごろに停止作業を始め、午後零時四十九分に止まった。テロ対策で設置が義務付けられた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成が期限の二十一日に間に合わないため。特重施設の完成遅れによる原発停止は三月に運転を止めた川内1号機に続いて全国二例目
  冷温停止状態には二十一日夜に到達予定。その後は特重施設建設と定期検査を同時に進め、来年一月二十六日の発電再開を目指す
 二基ある川内原発は両方が停止し、九電は不足する電力は火力発電で補うため、電力供給に支障がないと説明する。追加の燃料費は約二百五十億円を見込み、九電の二〇二一年三月期連結決算を圧迫するのは必至だ。
  特重施設は、東京電力福島第一原発事故を踏まえて設置が義務化された。航空機を原子炉建屋に衝突させるようなテロ攻撃が起きた場合でも、放射性物質の放出を抑えられるように離れた場所に冷却ポンプや非常用電源などを備える。
   九電によると、川内2号機での工事進捗(しんちょく)率は四月末時点で、非常用電源など機械電気関連が七割程度、土木関連は九割程度。川内1、2号機の特重施設の建設費用は計約二千四百二十億円を見込む。
   今後は関西電力高浜原発(福井県高浜町)でも、特重施設の完成が期限に間に合わないため原子炉の運転を停止予定だ。
  <原発のテロ対策施設> 原発の原子炉建屋に航空機を衝突させるテロ攻撃が起きた場合、遠隔操作で原子炉に冷却水を注ぎ込むなどして放射性物質が漏れる重大事故の発生を防ぐための施設。正式名称は「特定重大事故等対処施設」。緊急時制御室や注水設備、電源設備などを備え、原子炉建屋との同時被災を避けるために100メートル程度離れた場所などに設ける。原発本体の工事計画の認可後、5年以内に設置することが義務付けられており、現時点で整備が完了した国内原発はない。


2020.5.14-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200514/k10012429191000.html
青森 再処理工場 「合格」後の検査に時間 原子力規制委

  13日、本格操業に必要な審査に事実上、合格した使用済み核燃料の再処理工場について、原子力規制委員会は今後、完成前に行う設備の検査などに時間がかかる可能性を示しました。
  青森県六ヶ所村の再処理工場は、原子力発電所で使い終わった核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する、国の「核燃料サイクル政策」の要の施設です。
  原子力規制委員会は6年前から事故や災害への対策が新しい規制基準に適合しているか審査を行い、13日、事実上の合格を示す審査書案を取りまとめました。事業者の日本原燃は来年度上期に工場を完成させ、2年後には本格操業に入りたいとしています。
  これについて規制委員会の更田豊志委員長は記者会見で、原発に比べ設備の数が多いなどとして、完成前に行う設計書類の確認や設備の最終的な検査にはかなりの時間がかかる可能性を示しました。
  そのうえで、「日本原燃の示した完成時期までに検査などは終わるのか」との質問に対しては、明言は避けながらも、「あと1年とちょっと。事業者の計画にコメントすべきではないが、野心的ではある。不可能とはいわないが、日本原燃にはしっかりとした準備を求めたい」と述べました。


2020.3.16-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200316/k10012333651000.html
川内原発1号機 運転停止 テロ対策施設 期限内に完成せず

鹿児島県にある九州電力の川内原子力発電所1号機は、国の新しい規制基準で設置が義務づけられているテロなどの対策施設が、期限内に完成しないため16日午後1時すぎに運転を停止しました。新しい規制基準に基づいて稼働中の原発が停止するのは初めてです。
  原子力規制委員会は福島第一原発の事故を教訓につくられた新しい規制基準に基づいて、テロや航空機の衝突といった緊急時に原子炉を守る施設を、工事計画の認可から5年以内に完成させることを義務づけています。
  これについて九州電力は、川内原発1号機で施設の完成が期限内に間に合わないとして、定期検査を前倒しする形で運転を停止することを決め、16日午前2時半から原子炉の出力を下げる作業を開始し、午後1時1分に運転が停止したことを明らかにしました。
  九州電力は工事を急ぎ、ことし12月までに施設を完成させて、規制委員会の検査を受けたうえで原子炉を起動したいとしています。
  原発事故のあと、7年前(2013年)につくられた新しい規制基準に基づいて稼働中の原発が、運転停止するのは初めてです。
  規制委員会は原発事故の前、当時の規制機関だった原子力安全・保安院が、津波の評価や対策に明確な期限を設けず、結果的に福島第一原発のメルトダウンを防げなかった教訓などを踏まえ、今回、期限の延長は認めず、運転停止という厳格な対応を電力会社に求めたとしています。
  全国の原発ではことし、施設の完成が期限内に間に合わないとして、川内原発2号機が5月に、そして福井県にある関西電力の高浜原発3号機と4号機も8月と10月に、それぞれ運転を停止する見通しです。


2020.2.27-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/economy/news/200227/ecn2002270054-n1.html
福島原発処理水の海洋放出案、IAEAが評価へ

梶山弘志経済産業相は27日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長と会談した。グロッシ氏は、東京電力福島第1原発の処理水対策で協力方針を表明し、海洋などへの放出案に理解を示した。経産省は会談内容の説明の中で、「海洋や大気への放出が現実的な選択肢だ」と結論づけた政府の小委員会の報告書について、IAEAに分析、評価を依頼したと明らかにした。IAEAが妥当性を認めれば放出による処理に向け前進しそうだが、地元の反対は根強く、風評被害対策などが課題だ。
   会談でグロッシ氏は、「報告書についてスタッフがしっかりと分析している」と述べた。経産省関係者によると、今月10日、英訳した報告書をIAEAに送り、評価を依頼したという。グロッシ氏は報告書について、「科学的に記載されている。示された処分方法は技術的に可能で、国際慣例にも沿ったものだ」と感想を述べており、肯定的な評価を受ける可能性が高い。IAEAは日本政府が海洋放出をする場合、水に含まれる放射性物質などの状況をモニタリングし、情報を発信することなどで協力する方針だ。
   もっとも、政府はまだ、処理水を放出する方針を決めてはいない。漁業関係者を中心に反対が根強いからだ。梶山氏の地元である茨城県の大井川和彦知事も報告書について、「白紙の段階で検討し直してほしい」と反発。梶山氏は今月の閣議後記者会見で、「福島県、茨城県を含む関係者や団体のご意見をよくうかがった上で、風評への影響を抑える対策について結論を出していく」と、慎重に進める考えを述べていた。


2020.2.9-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://special.sankei.com/a/life/article/20200209/0001.html
「地上の太陽」核融合発電ITER、日本主導で前進

太陽が燃えるのと同じ仕組みの核融合反応を地上で再現し、発電への利用を目指す国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」計画が今年、日本主導で大きく前進する。心臓部の部品完成で5年後の運転開始が見えてきたが、技術的な壁は高く、人類の英知が試されている。
   核融合は、水素のような軽い原子核同士が合体し、ヘリウムのようなより重い原子核となる現象だ。このときアインシュタインの質量とエネルギーに関する公式から、合計の質量がわずかに減少する代わりに膨大なエネルギーが生じる。

地上に太陽を作り出す!? 夢のエネルギー・核融合の最前線
2019.9.18-TOSHIBA CLIP-https://www.toshiba-clip.com/detail/7981

人工の太陽を地上に作る――壮大なプロジェクトが進んでいる。それは、私たちが抱えるエネルギー問題、環境問題のソリューションとして期待される核融合発電だ。
  国際協力によるITER(イーター)(国際熱核融合実験炉)JT-60SA(Super Advanced)などの実験炉の建設が進んでおり、日本をはじめ世界各極が連携をとって進める巨大プロジェクトとして着実に歩を進めつつある。
  火力発電のようにCO₂を排出することがなく、原子力発電よりも安全な大規模発電ができる、「夢のエネルギー」核融合発電の最先端に迫った。
燃料は無尽蔵にあり、原発よりも安全――核融合発電のしくみとは
  核融合発電とは、太陽の内部で起きている「核融合反応」を地上で再現するものだ。まずは、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(以下QST)で核融合発電を研究する若月琢馬氏にかみ砕いて解説していただこう。

「万物を構成する原子の中には原子核と電子があります。その原子核を高速でぶつけ合うことで、また新たな原子核が生まれます。これが核融合反応というものです。耳慣れない方も多いかもしれませんが、みなさんもこの核融合反応のエネルギーを享受しています。それは、さんさんと降り注ぐ陽の光のもと――太陽です。太陽の中では水素の原子核による核融合反応が起きていて、その熱、光が地球上の私たちに届けられています。
  太陽からも分かるように、核融合反応では膨大な熱エネルギーが発生します。その熱エネルギーを活用して行うのが核融合発電なのです。燃料に用いられるのは水素の同位体である重水素と三重水素(トリチウム)。燃料1gで石油8トンを燃やした時と同等のエネルギーを生みだすことができます。発電の方式にも様々ありますが、少量の燃料でこれほどのエネルギーを生み出せるのは原子力発電、核融合発電をおいて他にありません」(若月氏)

原子力発電は福島第一原子力発電所の事故以来、安全性が懸念されている。しかし、核融合発電は原子力発電に比べて極めて安全性が高いという。
  「原子力発電は核分裂反応で発生する熱を利用して発電を行うものです。原子炉の中では核分裂反応が連鎖的に起こるため、制御棒などを用いて、暴走しないよう制御しながら運転をしていく必要があります。原子炉内には数年分の燃料が入っており、それを制御しながら少しずつ発電を行っていきます。
  一方核融合発電の場合は、炉の中にある燃料は核融合反応を持続させるのに必要な量だけで、供給を止めればすぐに反応は止まってしまいます。また、たとえ大量の燃料が炉内に導入されたとしても、燃料自体がプラズマ(※)を急激に冷却することで自発的に反応が止まるため、核分裂のような連鎖的な反応は起こりません。核融合発電は、原理的に暴走が起こらないしくみになっているのです」(若月氏)

(※)プラズマ:固体・液体・気体に続く物質の第4の状態。一般的に数千度以上では、どんな物質も原子核に捕捉されていた電子が自由に運動できるようになりプラズマ状態となる。核融合炉では一億度以上の高温プラズマを生成し、それを固体等の容器に触れることなく閉じ込める(保持する)必要がある。
参照:量子科学技術研究開発機構HP(https://www.qst.go.jp/site/jt60/5108.html

しかも、原子力発電で発生する高レベル放射性廃棄物にあたるものが核融合発電では発生しない。また、発電時にはCO₂を排出することがなく、クリーンなのも特徴だ。
燃料の重水素は水を電気分解することで得ることができ、実質的に無尽蔵。もう一つの燃料である三重水素(トリチウム)は自然環境から採取されているが、核融合炉の中で人工的に作ることが可能とされており、サプライチェーンの面からも懸念はない。

世界7極の技術、英知が集結するプロジェクト「ITER」とは高効率で安全性が高く、環境にやさしい上に燃料枯渇の心配もない。
  核融合発電はまさに夢のエネルギーだ。しかし、まだ開発の途上にあり、実現されていないのはなぜか――?それは、核融合炉が人類史上かつてない複雑な構造体であり、最先端技術の粋を集めて開発が進められているものだからである。たとえば、核融合では燃料になる元素の電子、原子核を分離して「プラズマ」という状態にする必要がある。そのプラズマを生成するためには真空容器が、さらに核融合反応で発電を行うにはプラズマを1億度以上に加熱する装置が必要だ。また、核融合炉では磁場を利用してプラズマを炉の中に浮かべ、安定した状態で維持する。この強力な磁場を安定して作り出すために用いられるのが超伝導体のコイルだ。
  これらの核融合関連機器は巨大でありながらミリ単位の精度を求められる。まさに、核融合炉は最先端技術の集合体とも言える存在なのだ。核融合の仕組み現在、核融合発電の実現に向けて本格化している世界的プロジェクトがITER(国際熱核融合実験炉)だ。
  日本をはじめEU、ロシア、アメリカ、韓国、中国、インドの7極が連携し、フランス南部のサン・ポール・レ・デュランスで実験炉の建設を進めている。ITER模式図  出典:文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/021/005.htm)

日本が担当するのは、核融合発電で必須のプラズマを閉じ込めるために必要な強力な磁場を生成する超伝導コイルの開発・組み立てだ。QSTの梶谷秀樹氏、東芝エネルギーシステムズの石井氏に、国際プロジェクトの一端を聞いてみよう。
  「ITERでは、各極が分担してITER建設に必要となる機器を調達し、現在は2025年のファーストプラズマ(運転開始)に向けて、各機器の開発・製作を行っています。その中でも、私たちは、核融合炉において、非常に重要な機器である超伝導コイル『Toroidal Field(TF)コイル』の製作を東芝とともに進めています。

このコイルは高さ16.5m、幅9m、総重量300トンという、これまでに類を見ない巨大な構造物。しかし、私たちに求められるのは誤差数ミリ以下という製作精度です。その製作工程は多岐にわたり、工程一つとっても、非常に複雑。例えば、コイル材のニオブ3スズ超伝導線は650度の熱処理を100時間以上かけ、ようやく完成するものです」(梶谷氏)

「東芝は1970年代から核融合技術の開発に参画しています。設計段階から関わり、設計・製造の実績を重ねてきました。QSTの核融合装置JT-60(臨界プラズマ試験装置)、後継のJT-60SA建設にも携わっています。そこで投入してきた超伝導技術を磨きつつ、ITERのTFコイルでも導体を高精度で熱処理する技術、大型構造物の計測、機械加工技術などを磨き、製作に取り組んでいます」(石井氏)

物理学、理工分野とモノづくりが融合して立ち上がる新たな開発フィールド。TFコイルの組み立ては高度な次元で進む。加速器など、様々なところで超伝導コイルが導入されてきたが、これほどのスケールと精度は例を見ない。

「TFコイルの製作では、超伝導の知識はもちろん、ITERで要求されるコイル性能を達成するための電気工学や電磁気学の知識、コイル内部の冷媒の流体特性を把握するための流体力学や熱力学などの知識も求められますし、モノづくりの観点からは、各種材料の材料工学的な知見も必須。コイル組み立てに際しては高度な溶接技術や機械加工技術も求められます。各分野の高度な技術が総合的に求められるという意味で、このTFコイルは人類が初めて挑んでいる製作物ではないでしょうか」(梶谷氏)

核融合の電気が灯る日を目指し、技術の研鑽、継承は続く
ITERの研究開発を補完する役割を持ち、日本とEUが協力して開発を進めているのがJT-60SAだ。1970年代から設計・開発が進められたJT-60、80年代のJT-60Uに続く核融合実験装置である。
  核融合では燃料の元素を電離した状態のプラズマが必要だが、反応を起こすためには1億度以上のプラズマが求められる。JT-60SAは超伝導体の磁場によってプラズマを操り、高温・高圧力という理想的な環境で研究が進められるという。
  「核融合反応でエネルギーを取り出すためには、プラズマの温度・密度・閉じ込め時間という3つのパラメーターが重要になります。プラズマの密度を高めながら、より高い温度で長時間閉じ込めておけるかが現在の課題です。ITERは重水素と三重水素を用いた燃焼プラズマの実現を必ず成功させることが使命であるため、すでに高い信頼性が実証されている運転手法で実現できるプラズマの性能に基づいて設計されています。しかし、JT-60SAではより高性能なプラズマを実現するためのチャレンジングな実験が行える設計となっています。磁場に対するプラズマの圧力をより高くすることができ、実用的な核融合炉の設計に役立てる、より魅力的な実験を行うことができるのです」(若月氏)
  2020年に実験をスタートするJT-60SA。プラズマを安定させ、維持していく実験が進められれば、「発電ができる核融合炉」の足がかりになる。国際プロジェクトとして進むITERだけではなく、日本で進む先端研究に大きな期待がかかるゆえんだ。
  JT-60SAによって高度な研究が進み、2025年の運転を目指すITERの組み立ても進んでいくだろう。その先には、実際に核融合発電を行う原型炉、そして実際に送電網に電気を供給する商用炉へ続くロードマップが見える。前線で開発に携わる3人も長期的な視点に立ち、核融合技術の継承を強調した。
  物理学、理工分野とモノづくりが融合して立ち上がる新たな開発フィールド。TFコイルの組み立ては高度な次元で進む。加速器など、様々なところで超伝導コイルが導入されてきたが、これほどのスケールと精度は例を見ない。

  「TFコイルの製作では、超伝導の知識はもちろん、ITERで要求されるコイル性能を達成するための電気工学や電磁気学の知識、コイル内部の冷媒の流体特性を把握するための流体力学や熱力学などの知識も求められますし、モノづくりの観点からは、各種材料の材料工学的な知見も必須。コイル組み立てに際しては高度な溶接技術や機械加工技術も求められます。各分野の高度な技術が総合的に求められるという意味で、このTFコイルは人類が初めて挑んでいる製作物ではないでしょうか」(梶谷氏)
核融合の電気が灯る日を目指し、技術の研鑽、継承は続く
ITERの研究開発を補完する役割を持ち、日本とEUが協力して開発を進めているのがJT-60SAだ。1970年代から設計・開発が進められたJT-60、80年代のJT-60Uに続く核融合実験装置である。
  核融合では燃料の元素を電離した状態のプラズマが必要だが、反応を起こすためには1億度以上のプラズマが求められる。JT-60SAは超伝導体の磁場によってプラズマを操り、高温・高圧力という理想的な環境で研究が進められるという。
  「核融合反応でエネルギーを取り出すためには、プラズマの温度・密度・閉じ込め時間という3つのパラメーターが重要になります。プラズマの密度を高めながら、より高い温度で長時間閉じ込めておけるかが現在の課題です。ITERは重水素と三重水素を用いた燃焼プラズマの実現を必ず成功させることが使命であるため、すでに高い信頼性が実証されている運転手法で実現できるプラズマの性能に基づいて設計されています。しかし、JT-60SAではより高性能なプラズマを実現するためのチャレンジングな実験が行える設計となっています。磁場に対するプラズマの圧力をより高くすることができ、実用的な核融合炉の設計に役立てる、より魅力的な実験を行うことができるのです」(若月氏)

  2020年に実験をスタートするJT-60SA。プラズマを安定させ、維持していく実験が進められれば、「発電ができる核融合炉」の足がかりになる。国際プロジェクトとして進むITERだけではなく、日本で進む先端研究に大きな期待がかかるゆえんだ。
  JT-60SAによって高度な研究が進み、2025年の運転を目指すITERの組み立ても進んでいくだろう。その先には、実際に核融合発電を行う原型炉、そして実際に送電網に電気を供給する商用炉へ続くロードマップが見える。前線で開発に携わる3人も長期的な視点に立ち、核融合技術の継承を強調した。
  「『夢の技術』ではなく、現実に見えている技術になってきた核融合ですが、現在のところ、発電として実用化されるのは21世紀半ば、つまり2050年ごろの見込みです。そこで、この研究を加速させるためには優秀な人材が欠かせません。世界を変える研究に新しい力が入ってきてくれることを願ってやみません」(若月氏)
  「核融合技術に携わっているメンバーには『未来のエネルギーの実現に貢献したいと思う人』、そして『高度な技術を学び、新たな領域にチャレンジしていきたい人』の2タイプがいます。東芝には、ライフワークとして核融合技術に向き合ってきたベテランもたくさんいます。この資産を若い力と融合させ、息の長いプロジェクトに取り組んでいければと思います」(石井氏)
  「メーカーと協力しながら、TFコイルの製作を進めています。2021年の全TFコイル納入を目指して全力で進めていますが、やはり見据えるべきはその先にあります。東芝は若いスタッフが多く現場に投入されており、モノづくりの経験、先端技術の承継にも意欲的です。ITERは人類史上最大の国際プロジェクトであり、ここでの経験は、他では決して味わうことのできない、稀有なものです。若いスタッフは、ITERで培った経験を、是非今後に生かしてほしいと思います。私たちQSTと東芝が二人三脚で進めている技術開発、そこで得られた知見は原型炉以降の研究・開発にも発揮されていくでしょう」(梶谷氏)
  ITER、そしてJT-60SAを通して幾多の実験、研究は今後もたゆみなく積み上げられていくはずだ。研究者、技術者の熱き志の先には、人類の未来を握るエネルギーの地平が見える。


2020.2.4-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200204/k10012271631000.html
「ヨウ素剤 原発5~30キロ圏内住民にも事前配布を」環境相

原子力防災を担当する小泉環境大臣は、被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされているヨウ素剤について、原発から5キロから30キロ圏内の住民にも事前配布を推進したいという考えを示しました。
  ヨウ素剤は、原子力発電所などで事故が起きた場合に服用すると被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされていて、福島第一原発の事故を教訓に原発から5キロ圏内については、すべての住民を対象に事前配布することが指針で定められています。
  小泉大臣は4日の閣議のあとの記者会見で「5キロから30キロ圏内いわゆるUPZにおいて、緊急配布の負担を考慮した場合、事前配布によって避難などが円滑になると想定される住民に対しても、ヨウ素剤の事前配布を推進することにした。役場や保健所などの公共施設で保健師などによる配布も推進していきたい」と述べ、今後、具体的な検討を進めていく考えを示しました。
  そのうえで「福島の複合災害のときのことを思い出せば、万が一の時に必要なタイミングで飲んでいただけるような提供体制が整っているのだろうかと問題意識を持っていた」と話しました。
独自判断で事前配布の自治体も
ヨウ素剤は原子力発電所などで事故が起きた場合に服用すると、被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされています。
  しかし、この薬は9年前の福島第一原発の事故の際、服用に関する情報が錯そうするなどしたため、住民に十分に行き渡りませんでした。
  このため、国は原発で重大な事故が起きたときに直ちに避難する必要のある原発から主に5キロ圏内の住民を対象に事前に配るようにルールを見直しました。
  一方、5キロから30キロ圏の住民については、重大な事故が起きた際にすぐには避難をせずに住宅などの建物の中に退避し、必要に応じて避難することになっています。
  このため事前に配布する対応は取られていませんが、自治体の中には独自の判断で住民の要望に応じて事前に配っているところもあります。
  ヨウ素剤の事前配布の方法は、処方の注意点などを理解して正しく服用してもらうため、原則として医師や薬剤師による説明会に参加した住民に配られることになっています。
  これについて自治体などからは「説明会の開催も医師を集めるなど簡単ではなく、住民側も仕事などで参加できない人も多い」などと、より効率的な配布方法を求める意見もあがっています。


2020.1.18(土)-愛知新聞Online-https://www.ehime-np.co.jp/article/news202001180011
伊方3号機運転認めず 甘い災害想定への司法の警鐘だ

佐田岬半島沿岸の活断層について存在しないと主張した四国電力の調査は不十分で、主張を問題ないとした国の原子力規制委員会の判断には誤りがあると指摘した。国や電力会社の姿勢を厳しく批判した裁判所の判断を重く受け止めねばならない。
  四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを山口県の住民3人が求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁は運転を認めない決定をした。運転禁止の期間は、山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決言い渡しまでとした。伊方3号機の運転を禁じる司法判断は2017年の広島高裁仮処分決定以来2回目。行政の判断に追従せず、独立する司法の責務を果たした決定は評価できる。

  争点だった伊方原発がある佐田岬半島沿岸部の活断層に関して広島高裁は調査が不十分と判断した。国が中央構造線断層帯の長期評価を改訂した際の「半島沿岸は、今後の詳細な調査が求められる」との記述を取り上げ、四電の海上音波探査が不十分であることを前提にしていると認定した。さらなる調査が必要という評価は調査が尽くされていないのに等しく、判断は当然と言えよう。
  十分な調査をしないまま沿岸部の活断層は存在しないとした四電の主張について、規制委が問題ないとした判断は過程に誤りがあると断じている。活断層の存在が認められ、「震源が敷地に極めて近い」場合、地震動を評価する必要がある。調査が不十分で活断層の存否を確定できない以上、原発の運転を容認するべきではない。

  阿蘇巨大噴火のリスクでは噴火規模が過小評価されており、その想定を前提とした四電の申請や規制委の判断を不合理とした。災害想定の甘さに対する司法の警鐘と言える。住民は、巨大噴火が起きた場合の過酷な原発事故に対し不安を抱えながら暮らしている。国や事業者は災害大国の日本で原発を動かす責任の重さを改めて肝に銘じなければならない。

  現在、伊方3号機は定期検査のため停止中で、今月16日には使用済みとなったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体を含む全燃料の取り出しを完了している。ただ差し止め決定によりスケジュールは白紙に戻った格好だ。
   3号機には県民が厳しい視線を送っている。今月12日には核分裂反応を抑える制御棒1体を誤って引き抜くトラブルがあった。規制委が「知る限りで前例はない」と強調、委員から「事業者の深刻度や捉え方が少し軽すぎる」との意見も上がった。四電は事業者として取り組み姿勢を省み、安全運転に万全を期す責務がある。
  差し止め決定を受け政府は改めて原発の再稼働を推進していく姿勢を示した。だが国の判断の誤りに言及した決定の意味は極めて重い。重要なベースロード電源として原発に頼る国策は再考しなければならない。


2020.1.18-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/column/news/200118/clm2001180003-n1.html
【主張】伊方原発停止 高裁の迷走が止まらない

司法の見識が疑われる決定である。
 広島高裁が仮処分で四国電力・伊方原子力発電所3号機(愛媛県)の運転停止を命じた。
 伊方3号機に関する広島高裁の仮処分の判断は、この約2年のうちに運転が1回、停止が2回となった。裁判長が異なるとはいえ、高裁としての定見の欠如ぶりは、看過できない迷走状態だ。
 伊方3号機は、福島事故で国内の全原発が停止した後、平成28年夏に国内で4番目に再稼働を果たした原発である。
 昨年12月から定期検査中の3号機は、4月からの運転再開を予定していたが、仮処分は即時に効力を発揮するため、効力が期限付きとはいえ、停止継続を余儀なくされる見通しだ。
 停止による電力不足分の穴埋めは、火力発電で行われるため、二酸化炭素の排出増と併せて、電気代の値上がりが消費者に及ぶ事態は避けがたい。
 広島高裁による前回の運転差し止めは、29年12月に下されたが、その際は阿蘇山の巨大噴火が理由だった。火砕流が海を渡って伊方原発に到達する可能性が否定できない、というものだった。
 今回の運転差し止め理由は、伊方原発が立地する佐田岬半島沿いの断層と原発までの距離だ。

 伊方3号機は原子力規制委員会の厳格な安全審査に合格して再稼働を果たした原発である。
 にもかかわらず、裁判長は四国電力の主張よりも近くに断層が位置すると解釈し、3号機を合格させた「規制委の判断には、その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」とした。
 阿蘇山からの火砕流については、ゼロリスクを理由に伊方原発を立地不適とするのは社会通念に反する、と良識を示したものの、火山灰などの降下量に関して規制委にかみついた。
 四国電力の想定は過小で、それを認めた「規制委の判断も不合理である」としたのだ。
 高度に専門的な理学、工学知識が求められる原発訴訟での大胆極まる「決定」だ。審尋は、たったの1回だったからである。
 しかも裁判長は今月25日に退官する。近年の原発訴訟で運転停止を命じる決定が定年退職が近い裁判長から出される傾向は偶然か。仮処分が脱原発の闘争手段になりつつあることも気にかかる。


2020.1.15-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://blog.goo.ne.jp/chorinkai/e/78779cf962d1c8e68e11f527efc52ced
露の海上原発は大丈夫か――遠藤良介・外信部編集委員兼論説委員
【「遠藤良介のロシア深層」産経新聞 R02(2020).01.15 】


  ロシアが「世界初」と触れ込む海上原子力発電所(船舶型原発)が昨年末、露極東チュコト自治管区のペベク港で電力供給を始めた。ロシアは世界の原発市場で猛進撃を続けており、海上原発を輸出の新たな切り札としたい考えだ。
  海上原発の外観は豪華客船を思わせる。内部には原子炉2基が搭載されており、計7万キロワット出力を得られる。これは10万人程度の都市生活を支えていくのに十分な電力だという。
  露国営原子力企業のロスアトムは海上原発について、送電が困難な遠隔沿岸部でのエネルギー確保を可能にするものだと説明。すでに原子力砕氷船で利用されている原子炉を基礎にしており、安全性が実証された技術だと主張している。
  同社は、北極海航路の沿岸整備や北極圏の資源開発でも海上原発が重要な役割を果たすと意気込む。
  国内外の環境団体からは安全性への懸念が出ている。津波や流水の対策は十分なのか。テロ攻撃の標的になることはないのか。1986年に大事故を起こした旧ソ連のチェルノブイリ原発になぞらえ、「海のチェルノブイリだ」と辛辣(しんらつ)に評する専門家もいる。
  ロシアは今、世界の原発建設市場で最も勢いを持つ。ロスアトムはトルコや中国、バングラデシュ、エジプトなど12カ国で、計画段階を含め原子炉36基の建造を手がけている。
  背景の一つは、米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が経営破綻するなど日米欧のメーカーが撃沈したことだ。ロシアは間隙を突き、新興国を中心に比較的低価格で受注攻勢をかけた。巨額の政府融資もつけるのが通例だ。
  プーチン露政権は原子力を石油・天然ガスに次ぐ「資源・エネルギー大国」の柱と位置づけ、国策として覇権を狙ってきた。2007年末に原子力関連企業を統合した巨大企業ロスアトムを設立。ウラン採掘から核燃料供給、原発建設、使用済み燃料の回収まで、原発産業の上流から下流を一手に担う態勢を整えた。
  ロシアが建造しているのはチェルノブイリと異なる加圧水型軽水炉で、安全性は格段に向上しているとされる。だが、ロシアが国のメンツのために情報を隠蔽し、人命を軽視する国であるのは大きな懸念材料だ。
  チェルノブイリ事故では、周辺国や西側諸国から放射能レベルの異常を追及されるまで事故を隠し、被害の拡大を招いた。昨年8月には露北西部の海軍実験場で爆発があり、ロスアトムの従業員ら7人が死亡した。原子力推進の巡航ミサイルを実験していたとみられるが、真相は藪(やぶ)の中だ。
  ロシアが外国に建設する原発の燃料供給やメンテナンスなどを担うことで、相手国のエネルギー供給を押さえる地政学的な思惑も指摘されている。
  海上原発の建造には当初予定を大幅に超える年数と費用がかかっており、総じてロシアの原発事業では採算性が疑問視されている。それでもロスアトムは、アジアやアフリカ、南米の国々から海上原発の引き合いがあると強気だ。
  石油・天然ガス大国のロシアがかくも積極的な原発政策をとり、海上原発の拡散ももくろんでいる。隣国の日本はその動向を注視しておく必要があるだろう。








このTopに戻る





monomousu   もの申す
TOPにもどる
最近のニュース