G20の問題-1


2023.09.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230910-3KGIDV223ZPOBH4BCE5TZMODVQ/
インドの「ロシア配慮」に反発 G20サミット閉幕 露「成功」/ウクライナ「誇れるものはない」

  【ニューデリー=森浩】20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は10日、インドの首都ニューデリーで2日間の日程を終え、閉幕した。9日公表の首脳宣言では、ウクライナ侵略を巡って直接的なロシア批判が避けられ、昨年の首脳宣言よりも批判のトーンが後退。宣言が出せない事態は回避されたが、ウクライナが内容に不快感を示すなど、波紋が広がっている。

  首脳宣言を巡っては、議長国インドが全会一致が必要な首脳宣言の採択を目指し、ロシアに配慮する形で調整を進めた。
  ロイター通信によると、サミットにプーチン露大統領に代わって出席したラブロフ外相は「今回のサミットは成功した」と評価した。一方、ウクライナ外務省報道官は首脳宣言について「G20が誇れるものは何もない」と不快感を示している。
  首脳宣言では、世界経済を巡って「世界的な金融引き締めが顕著になり、インフレの持続、地政学的緊張を悪化させる可能性がある」と懸念。気候変動問題については石炭火力の段階的廃止のほか、2030年までに再生可能エネルギーを3倍にすると盛り込んだ。
  サミットでは、アフリカ地域の55カ国・地域が加盟するアフリカ連合(AU)のG20加入が承認された。「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国の盟主を自任するインドの意向が反映された形で、モディ印首相の成果となった。
  来年のG20議長国はブラジルが務める。


2023.09.10-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230910-OYT1T50028/
食料・エネルギー高「逆風続く」、世界経済は「不確実性高い」…G20首脳宣言
(1)
  【ニューデリー=井戸田崇志、秋山洋成】主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)が9日に採択した首脳宣言は、世界経済について、食料やエネルギー価格の高騰を挙げ、「成長と安定に対する逆風は続いている」と指摘した。先行きについても「不確実性は依然として高い」と危機感を示した。

深い溝
  議長国インドのナレンドラ・モディ首相はサミットの冒頭、「世界経済に混乱が生じている」と述べ、食料や燃料、肥料の価格高騰といった課題の解決を訴えた。岸田首相も、「ロシアによるウクライナ侵略により、食料、エネルギーを含め、世界経済の混乱が深刻化している」と指摘した。
  首脳宣言では、「我々は、世界経済に対する戦争の悪影響に対処するために団結する」とうたった。
  だが、現実は「団結」とはほど遠い。日米欧などは対露経済制裁で協調するのに対し、インドや中国、南アフリカは制裁に加わっていない。参加国間の溝は深く、首脳宣言にも「状況については異なる見方や評価があった」と、露中などに配慮したとみられる表現が盛り込まれた。
ちぐはぐ
  首脳宣言は「食料、エネルギー市場は、依然として高水準で変動する可能性が残っている」と指摘した。さらなる価格高騰に危機感を示したものだが、参加国の実際の政策とのちぐはぐさは否めない。
(2)
  モディ氏率いるインドは7月、国内の食料供給の安定化を理由として、コメの輸出規制を表明した。インフレ抑制を唱える議長国自身が保護主義的な動きを見せている。
  原油を巡っても足並みは乱れる。ニューヨーク原油先物市場で代表的な指標となるテキサス産軽質油(WTI)の8日の終値は1バレル=87・51ドルで、今年最安値の3月17日(66・74ドル)と比べ3割超も上がった。G20の一員であるサウジアラビアなど一部の産油国が、米国が反対する追加減産を続けていることが大きい。
  首脳宣言は「世界的な金融引き締め」も世界経済の下方リスクとして言及した。米欧などの利上げが巨額債務を抱える新興・途上国の経済に悪影響を与えることへの懸念を示したものだ。
  世界通貨基金(IMF)は7月に発表した世界経済見通しで、2023年の世界全体の成長率は3・0%と、22年(3・5%)から減速すると予測した。G20では米英など先進国だけでなく、インドやブラジルなど新興国も、成長率が22年より鈍化する見通しだ。
AI規制議論
  急速に進化する生成AI(人工知能)の開発や使用について、首脳宣言は「透明性やプライバシー、データ保護に取り組む必要がある」と指摘した。
  リスクを軽減するために「AIの国際的な統治に関する議論を進めていく」とし、各国が規制のあり方などに関する情報の共有に努めるとした。


2023.09.07-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20230907/k00/00m/030/012000c
インドで国名変更巡り論争 G20夕食会招待状に「バーラト大統領」
【ニューデリー川上珠実】

  インドの首都ニューデリーで9~10日に開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議の夕食会招待状で、同国のムルムー大統領の肩書「バーラト大統領」と英文表記され、波紋を呼んでいる。「バーラト(Bharat)」は現地語でインドを意味し、憲法にも併記されているが、これまで英文では「インド(India)」の表記が用いられてきた。「インド」は英植民地時代の名残とみて表記変更を歓迎する声もあり、国内で論争が起きている。

  バーラトは、古代インドの大叙事詩「マハーバーラタ」にも登場するバラタ族に由来する。地元メディアによると、与党インド人民党(BJP)関係者からは、バーラトの使用を歓迎する声が上がった。プラダン教育相兼技能開発・起業促進相は5日、表記変更について「植民地時代の思考からの脱却」と評価した。
  BJPはヒンズー至上主義団体を支持母体とし、植民地時代に英国人が設計した首都官庁街の再開発を進めるなど、民族主義的な傾向が指摘される。7月に完成したG20首脳会議用の会場施設も「バーラト・マンダパム」(「マンダパム」は人々が集う場所を意味)と名付けられている。
  さらに、BJPの報道担当者は5日、モディ首相の6日からのインドネシア訪問について、英語で「バーラト首相」と書かれた文書の画像をネット交流サービス(SNS)に投稿。政府関係者は地元紙ヒンズーに対し「今後、バーラトはより多くの公文書で用いられるだろう」と語った。
  一方、最大野党・国民会議派のシャシ・タルール議員は5日、SNSに「計り知れないブランド価値がある『インド』を、政府が完全になくすようなバカなことはしないと願う」と投稿した。野党連合は7月、連合の名称を「インド全国開発包括連合(略称・INDIA)」と改めると発表しており、バーラトの使用は野党への当てつけだとする見方もある。【ニューデリー川上珠実】


2023.07.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230722-7W2MIEWO4BPNFB3KOR4ZINCDMA/
エネルギー安保・脱炭素の議論停滞 G7と中露対立続く G20の機能不全強まる
(永田岳彦)

  インドで22日に開かれた20カ国・地域(G20)エネルギー相会合では、脱炭素化と経済成長の両立などをテーマに議論が交わされたが、ロシアのウクライナ侵略後の先進7カ国(G7)と中露との意見の隔たりは大きく、共同声明のとりまとめには至らなかった。足元のエネルギー安全保障に加え、脱炭素化や水素などの次世代エネルギーの議論の進展も滞っている形で、G20の機能不全は一段と強まっている。

  昨年2月以降のウクライナ侵略を非難し、ロシアに対する経済制裁を科すG7とオーストラリア、韓国、対G7でロシアとの連携を強める中国。G7側と中露側の双方と関係を維持するインドなど中立的な国々。G20参加国の立場は大きく3つに分かれている。
  G7側はロシアの戦費を絶つため、経済制裁を強化。ロシアからの原油輸入の禁止などを相次いで実施している。ただ、露産原油は、市場価格より割安な価格でインドや中国に流れている。インドのバローダ銀行が5月に発表した調査によると、インドが輸入する原油に占める露産の割合は2021年の2%から22年は19・3%に拡大。中国も露産原油の輸入量を増やしている。G20には、新興5カ国(BRICS)として中露と協力関係のあるブラジルや南アフリカ、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」をロシアとともに主導するサウジアラビアなど中露との関係が深い国も多い。
  インフレ対策が重要課題の日米欧のエネルギー消費国は、原油の価格抑制へ産油国に増産を求めているが、サウジはロシアと減産で歩調を合わせている。脱炭素化でも早期に再生可能エネルギーへの移行を進めたい先進国と、経済成長との両立を重視する新興国の間には温度差がある。
  先進国と新興国が結束して世界経済の課題に対応してきたG20だが、閣僚級会合では1年以上共同声明の採択ができない状況が続く。会合終了後の会見で西村康稔経済産業相は「全てがまとまらなかったのは残念」と指摘した。G20の存在意義が問われる事態の解消はまだ見通せない。
(永田岳彦)


2023.03.04-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/world/20230304-OYT1T50021/
米欧・中露・議長国インド、三つどもえでG20外相会合せめぎ合い…無念の声明断念
(1)
  【ニューデリー=浅野友美、安田信介】インドで開かれた主要20か国・地域(G20)外相会合では共同声明の取りまとめへ、対立する米欧と中露、仲介役の議長国インドの三つどもえで最後までせめぎ合いが続いた。

  1年を超えたロシアのウクライナ侵略で分断が一層鮮明となった今回の会合を受け、インドでは、9月に控える首脳会議も悲観する声が出ている。
  スブラマニヤム・ジャイシャンカル印外相は2日、閉幕後の記者会見で「昨年11月の首脳宣言後に世界で多くのことが起き、各国の立場の隔たりが大きくなった。我々は努力したが合意に達することはできなかった」と悔しさをにじませた。
  年11月にインドネシアで開かれたG20首脳会議では、共同文書を全会一致で採択。「ほとんどの国がウクライナでの戦争を強く非難した」とした上で「制裁には異なる意見があった」とも明記し、両論併記の「玉虫色」の文書だった。
  インドは今回の外相会合と2月の財務相・中央銀行総裁会議で、ウクライナについて表現を据え置き、各国の合意を得ようとした。G20交渉筋によると、ロシアは侵略に言及しないよう強く主張。中国も同調した。ロシアは、西側諸国がウクライナへの武器支援を通じ、「特殊軍事作戦」を長引かせているとも非難した。
(2)
  これに対し、米国は「ロシアが非合法な戦争をやめない限り、ウクライナを支援し続ける」と迫った。事務方の交渉は2日の外相会合が行われている間も同時並行で続いた。
  閉幕間近になっても露中がウクライナを巡る部分で合意せず、インドは共同声明を断念し、議長総括を発表することにした。ウクライナに関する文言は掲載したが、「中国とロシアを除くメンバーが合意した」と付記した。
  ロシアが態度を硬化させた背景には、今年に入り、戦車などウクライナへの武器供与を一段と加速させる米欧への反発がある。中国は米国との対立が深まっている上、インドとは未画定の国境問題や海洋進出を巡って関係が悪化しており、ロシアと共同歩調を取った可能性がある。露中外相は2日の会談で、米欧に連携して対抗することを確認し、緊密さを印象づけた。
  インドは途上国・新興国を中心とする「グローバル・サウス」の代表として外交的発言力を高めようとしたが、逆に、昨年の議長国インドネシアが首脳宣言を取りまとめた努力が振り出しに戻った形だ。印調査研究機関「政策研究センター」のスシャント・シン上級研究員は今回の決裂は「インドにとって想定外」だったと指摘。「米欧と露中の亀裂はさらに深まっている。首脳会議に向け、インドにとっては多難な道になる」との見通しを示した。


2023.03.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230302-U7ZRJ4MX4BLIHN3OJETDJGG27Q/
核軍縮後退、中国は軍拡加速も 露の新START停止、露も不利に
(坂本一之)

  【ワシントン=坂本一之】ロシアのプーチン大統領は米露間で唯一残る核軍縮合意「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行を停止し、ウクライナを支援する米欧を核で威圧している。世界の核軍縮後退や中国による核兵器増強が懸念される。ただ、米中などとの軍拡競争に発展すれば、経済が低迷するロシアが出遅れ劣勢になる恐れもあり、米国と非公式対話を行う姿勢もにじませる。

  米国務省のプライス報道官は1日の記者会見で、ロシア側から新START履行停止に関する公式文書を受け取ったことを明らかにし、「無責任だ」と批判。露政府に順守を今後も求めていく考えを強調した。
  新START履行停止に関し、プーチン氏の側近であるメドベージェフ前大統領は、原因が米側にあるとし「(自国を)核兵器を含むあらゆる兵器で守る権利がある」と強調している。
  ウクライナで大きな戦果を得られないロシアは、首脳らが核使用を示唆するだけでなく、核運用部隊を戦闘警戒態勢に移行させるなどし米欧を威嚇してきた。
  核大国ロシアが米欧を牽制(けんせい)する中、バイデン米政権がウクライナへの兵器供与で、慎重な判断を強いられているのも実情だ。米露のせめぎ合いを注視する中国やイランが「核保有の意義を改めて認識し、核兵器拡充に意識が向く」(米政府筋)とされる。
  米国防総省は昨年11月発表の中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国が2035年までに約1500発の核弾頭を保有する可能性があると警告。インド太平洋地域で軍事的覇権を目指す中国の核兵器増強で、世界の核戦力のバランスは大きく変化している。
  イランに関しても国際原子力機関(IAEA)が2月28日、中部の施設で濃縮度が核兵器級の90%に近い83・7%のウラン粒子を検知したと指摘。核保有に向けた動きが進む。
  ただ、新STARTの履行停止が核開発競争の引き金となれば、ロシアは米欧に加え中国との3極で核戦力を争うことになる。ウクライナ侵攻に多額の戦費を投じ、米欧の制裁でエネルギー輸出による資金獲得が難しくなった今、核軍拡競争はロシアに不利になりかねない
  米議会ではロジャース下院軍事委員長(共和党)が「中国の核兵器の近代化計画が進んでいる」として、核戦力の態勢整備を加速させ、中露を抑止すべきだとの意見も出ている。


2023.03.02-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230302/k10013995461000.html
G20外相会合 インドで開幕 米ロ中出席 ウクライナ情勢など議論

  G20=主要20か国の外相会合がインドで開幕し、2日、実質的な討議が行われます。会合にはアメリカのブリンケン国務長官やロシアのラブロフ外相、中国の秦剛外相らが出席してウクライナ情勢などについて議論が交わされる見込みですが、立場の隔たりは大きく、一致点を見い出せるかは不透明な情勢です。

  G20の外相会合は1日夜、インドの首都ニューデリーで夕食会が開かれ開幕し、2日に行われる全体討議では、ウクライナ情勢が主要な議題となる見込みです。
  1日は、ロシアのラブロフ外相がニューデリーで開催されたイベントに出席し「ロシアとインドは、主権国家に対する不当で一方的な制裁や脅迫、そのほかの圧力など新植民地主義的な行動に一貫して反対している」と主張し、欧米側の制裁を非難しました。
  一方、アメリカのブリンケン国務長官は、1日までカザフスタンなど中央アジアを訪問し、政治的にも経済的にもつながりが深いロシアと中央アジアの国々の関係にくさびを打ち、ロシアへの制裁の効果を高める狙いとみられます。
  会合にはこのほか、中国の秦剛外相が出席する予定ですが、アメリカは中国に対してロシアに軍事支援を行わないようけん制していて、ブリンケン長官はいまのところ、秦外相との会談の予定はないとしています。
  ロシアによる軍事侵攻が始まってから1年がたちましたが、欧米とロシアの立場の隔たりは依然大きく、世界的なエネルギーや食料価格の高騰への対応などについて一致点を見い出せるかは不透明な情勢です。
ロシア外相「欧米側の制裁 新植民地主義的な行動」
  G20=主要20か国の外相会合に出席するため、インドを訪れているロシアのラブロフ外相は、1日、首都ニューデリーで開催されたイベントに出席し「真の多国間主義を強化しようとするインドの友人たちをわれわれは支持する」と述べ、議長国のインドをたたえました
  そのうえで「ロシアとインドは、主権国家に対する不当で一方的な制裁や脅迫、そのほかの圧力など新植民地主義的な行動に一貫して反対している」と主張し、欧米側の制裁を非難しました。
  ロシアとしては欧米との対立がいっそう深まる中、ことしのG20の議長国であり「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国の代表格のインドとの連携を強化して欧米側に対抗したい考えで、一連の会合でのラブロフ外相の動向も注目されています。


2023.01.13-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/2e9885f14d53791c9e005934038238e8918269ed
インド、「途上国サミット」開催も参加国は限定的

  【シンガポール=森浩】インドが主催するオンライン国際会議「グローバルサウス(南半球を中心とした途上国)の声サミット」が12、13の両日、行われた。

  インドは今年、20カ国・地域(G20)議長国でもあり、会議開催で途上国のリーダーとして、国際社会での存在感向上を狙う。巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて、アジアやアフリカに進出する中国に対抗する意味合いもありそうだ。
  会議では閣僚級会議も行われた。インド外務省によると、120カ国以上の首脳らを招待したという。招待国の内訳は明らかにしていない。
  12日の会議でモディ首相は、ロシアのウクライナ侵略に伴う物価高が途上国を直撃している状況などに触れ、「国際的な課題の大半はグローバルサウスが生み出したものではないが、私たちは大きな影響を受けている」と強調。途上国の声をG20の舞台に反映させていく意向を示した。
  G20議長国を務めるインドの人口は今年、中国を抜いて世界一になると予測されている。国際社会での求心力を高めたい1年としたい考えで、ジャイシャンカル外相は今月、G20議長国就任は特に「世界にインドを売り込む好機だ」と力を込めた。
  今回のオンライン会議もそうしたインドの外交戦略の一環で計画された。一連の会議では、途上国で問題化する対外債務も議題となっており、一帯一路による支援が「債務のわな」と批判を浴びる中国を意識したとも言えそうだ。
  ただ、初日の首脳による討議の参加国は、バングラデシュやベトナムなど10カ国にとどまった。初めての会議で、どこまで実効性のある議論ができたか不明だ。



2022.11.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221117-RVE7HHYVZZL6DIMBJX62KC7Q74/
G20閉幕 対露圧力をさらに強めよ

  インドネシア・バリ島で16日に閉幕した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、参加国の大半がウクライナの戦争を強く非難したとする首脳宣言が採択された。
  宣言は同時に、ウクライナを侵略したロシア側の主張も反映させ、対露制裁などで異論が出たことを併記している。

  メンバー国であるロシアの暴挙に対し、G20の閣僚級会合ではこれを非難する共同声明を出せない事態が続いていた。さらなる機能不全を食い止めようと、首脳宣言を採択したことは成果である。
  だが、ロシアの「異論」を断固として退けなかったのは、G20の限界と受け止めざるを得ない。本来は「1対19」の構図で対露圧力を強めるのが、G20のあるべき姿だ。それができないなら、その存在意義が改めて問われよう。
  岸田文雄首相が会議で「法の支配に基づく国際秩序に対する挑戦だ」と語り、ロシアの侵略に対する国際社会の結束を呼びかけたのは当然だ。ウクライナを支援する西側諸国とロシアの対立に距離を置く新興国を巻き込み、対露包囲網を強めなくてはならない
  宣言は、ロシアがちらつかせる核兵器の使用や脅しが「許されない」とも明記した。戦争が世界経済に及ぼす悪影響にも触れた。
  特に戦争に起因する世界的な食料・エネルギー不安は深刻だ。ロシアはG20でも相変わらず西側の経済制裁のせいだと主張したが、筋が通らない詭弁(きべん)である。
  制裁は、ウクライナの国土を蹂躙(じゅうりん)し、無辜(むこ)の市民も攻撃する暴挙をやめさせる手段だ。食料・エネルギー供給を「武器」とするロシアの行動は全く正当化できないことを、ロシアを除く「G19」の共通認識としなければならない。
  G20がロシアの侵略に対して存在意義を示せるかどうかは、ロシアとの結束を誇示してきた中国の行動にもかかっている。
  習近平国家主席は先のバイデン米大統領との会談で、核兵器の使用を許容できないという認識を共有したという。食料危機などに苦しむ途上国などとの関係を維持するため、ロシアとの距離を置こうとする思惑もあるはずだ。
  ならばロシアを名指しし、侵略をやめるよう強く求めるべきなのに、そうしないのは無責任極まりない。17日に3年ぶりの日中首脳会談に臨む岸田首相は、その点も厳しく指摘すべきである。


2022.10.15-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20221115/k00/00m/030/233000c
G20サミット開幕、ウクライナ侵攻後初 世界経済への懸念相次ぐ
【バリ高田奈実、石山絵歩】

  主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が15日、インドネシア・バリ島で開幕した。初日はロシアのウクライナ侵攻に起因する食料・エネルギー価格高騰への対応を協議し、各国首脳から世界経済への影響を懸念する指摘が相次いだ岸田文雄首相は「ウクライナ侵略は国際社会の根幹を揺るがす国際秩序への挑戦だ」とロシアを強く非難し、ウクライナとの連携を改めて表明した。会議は16日に閉幕する。

  G20サミットはウクライナ侵攻後、初の開催となり、日米中などの首脳が一堂に会するのは3年ぶり。ロシアを含め全会一致が必要な首脳宣言を採択する方向で調整しているが、難航しそうだ。
  会議には米国のバイデン大統領中国の習近平国家主席らが出席。ロシアは対面での参加を見送ったプーチン大統領に代わり、ラブロフ外相が出席した。オブザーバーとしてオンライン参加したウクライナのゼレンスキー大統領は「国連憲章と国際法に基づき、戦争を公正に終わらせたい」と訴え、ウクライナ領土からロシア軍の完全撤退を求めた。

  日米欧の主要7カ国(G7)はこれまでもG20の閣僚級会合で、ウクライナ侵攻が新型コロナウイルス禍からの回復途上にある世界経済を混乱させ、食料・エネルギー価格高騰による世界的なインフレ(物価上昇)を引き起こしていると非難してきた。これに対しロシアは西側の制裁が原因と主張している。
  サミットでは途上国の債務問題や国際保健についても議論し、支援強化が必要との認識を共有した。
  開幕前にインドネシアのジョコ大統領が各国首脳らを個別に出迎えたが、慣例の集合写真の撮影はなかった。地元メディアによると、米国などがウクライナ侵攻を続けるロシア側との撮影に反対しているためとみられる。【バリ高田奈実、石山絵歩】


2022.11.10-Yahoo!Japanニュース(CNN Co.jp)-https://news.yahoo.co.jp/articles/ba28807d3dbaefe9821b72fb53f4c876d20a476b
プーチン氏、G20サミットは欠席 オンライン参加を検討

  香港(CNN) 在インドネシアのロシア大使館は10日、プーチン同国大統領インドネシア・バリ島で今月開催される予定の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を欠席すると述べた。

  CNNの取材に明かした。同大使館の儀典長は、ラブロフ外相が代わりに出席するとした。ただ、プーチン氏はG20サミットの一部の会合にオンラインで参加するかどうかを検討中ともした。
  欠席を決めたことでプーチン氏はウクライナ侵攻などの問題で他の参加国の指導者と対立したり、疎まれたりする局面を避けられることとなった。
  ウクライナ侵攻を受け、西側諸国やウクライナはG20サミットの主催国インドネシアに対しロシアへの批判を強め、プーチン氏への会議の招待を撤回するよう圧力も加えていた。
  サミットに参加予定のバイデン米大統領は今年3月、G20からのロシアの追放も主張。バイデン政権の複数の高官はロシアの代表団との合流を嫌いG20関連行事からの退場にも踏み切っていた。
  インドネシア政府はこれらの圧力に抵抗する一方で事態を収める中立的な方途も模索。ウクライナのゼレンスキー大統領をゲスト待遇でサミットに招待してもいた。 ゼレンスキー大統領はプーチン氏が出席するなら会議には参加しないとの考えを表明し、G20サミットにはオンラインで加わる見通しとなっている。


2022.07.17-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220717/k10013721851000.html
G20閉幕も機能不全に 欧米とロシアの対立で再び共同声明出せず

  G20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議は、16日まで2日間、議論を行いましたが、欧米とロシアの対立が深まる中、4月に続いて再び共同声明をまとめられませんでした。インフレや通貨安といった世界経済のリスクに対し、一致した対応が取れないという機能不全に陥っています。

  インドネシアのバリ島で2日間の日程で開かれていたG20の財務相・中央銀行総裁会議は、16日閉幕しました。
  世界的に加速するインフレへの対応などについて議論が行われましたが、ウクライナ情勢をめぐって日本や欧米各国と、ロシアとの間で主張が対立し、議論の成果を示す共同声明をまとめられませんでした。
  記者会見した議長国、インドネシアのスリ・ムルヤニ財務相は「地政学的な緊張の高まりで、議長国として非常に難しい状況にある」と述べました。
  こうした間に世界ではインフレが加速しています。また、新興国は欧米の利上げの影響で通貨安に直面し、輸入物価の上昇によってインフレを招く事態にも直面しています。
  G20の財務相会議は前回、4月にも共同声明を採択できず、2回続けて一致した対応が取れないという機能不全に陥っています。


2022.04.28-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/world/20220428-OYT1T50227/
G20首脳会議にゼレンスキー氏招待…プーチン氏出席の可能性も取り沙汰

  ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は27日、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領と電話会談した際、11月にインドネシア・バリ島で開催予定の主要20か国・地域(G20)首脳会議に招待されたことをSNS上で明らかにした。G20を巡っては、ウクライナに侵攻しているロシアを排除すべきだとの主張がある一方で、20日のG20財務相・中央銀行総裁会議にロシア代表が参加した。首脳会議にも、プーチン露大統領が出席する可能性が取り沙汰されている。


2022.04.22-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20220422/ddm/005/070/100000c
社説-ウクライナ侵攻 分断深まるG20 苦境の途上国救う努力を

  これでは国際社会の分断が深まり、世界経済が一段と悪化しかねない。 
  日米露など主要20カ国・地域(G20)が財務相らによる会議を開いた。本来は経済の課題を議論する場だが、ロシアのウクライナ侵攻を巡る対立が際立った。
  ロシアの財務相がオンラインで発言した場面では、米英カナダが抗議の意思を示すため退席した。ロシアが「経済協議の場を政治の道具にするのは避けるべきだ」と反発し、中国も同調した。亀裂が鮮明となり、共同声明もまとめられなかった。

  国際秩序を踏みにじったロシアの責任は重い。だがG20が機能不全に陥ったままでは、主要国の責任は果たせない。
  世界経済は厳しさを増している。新型コロナウイルス禍からの回復途上、ウクライナ侵攻に伴い、エネルギーや食料の価格高騰に拍車が掛かった。国際通貨基金(IMF)は、今年の世界の成長率見通しを大幅に引き下げた。
  とりわけ危ぶまれるのは、物価高や食料不足の打撃を受けやすい途上国に影響が広がることだ。国連のグテレス事務総長は、世界で17億人が貧困や飢餓に苦しむ恐れがあると指摘している。
  多額の借金も重荷だ。コロナ禍で観光客が激減したスリランカは借金を返せない「デフォルト」の危機に直面している。世界銀行は12カ国前後が1年以内にデフォルトに陥りかねないと警告する。
  米国は利上げを進める考えだが、途上国の苦境に追い打ちをかける可能性がある。ドルの金利が上昇すると、ドル建て借金の返済負担が重くなるからだ。
  途上国経済が行き詰まれば、国際的な影響も大きい。率先して危機を防ぐのが主要国の役割だ。
  G20は政治体制の異なる国が集まる。民主主義や人権重視といった価値観を共有しないため、足並みをそろえるのは容易ではない。
  だがグローバルな課題を先進国と新興国が協議する枠組みは重要だ。リーマン・ショック時は米中が連携して危機を乗り切った。
  途上国の借金削減に向け、最大の貸手とされる中国も含めた話し合いを進める必要がある。日米欧が主導して、エネルギーや食料の支援にも取り組むべきだ。


2022.04.21-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220421-RJJDGBMTQFJTNGF376EO3PFZRM/
G20、対露抗議で米欧が退席 財務相・中銀総裁会議、共同声明見送り G7「露参加は遺憾」

  【ワシントン=塩原永久】20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が20日、米首都ワシントンで開かれた。ロシアのウクライナ侵攻と世界経済への影響が主に討議された。ロシア代表の発言時、抗議として米欧の一部参加者が一斉退席した。対露非難を避ける中国などとの亀裂は深く、議長国のインドネシアが共同声明の作成を見送る異例の展開となった。

  G20閉幕後、先進7カ国(G7)は会合を開き、ロシアのG20参加を「遺憾」とする声明を発表。G20や国際機関は「もはやロシアに関わる活動をすべきではない」と警告した。G20、G7の会議には日本から鈴木俊一財務相と日銀の黒田東彦総裁が出席した。
  G20にはロシアからシルアノフ財務相がオンラインで参加し、現地の会場では財務省高官が出席した。
  ロシア代表の発言時に退席したのは、米国のイエレン財務長官や連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長、カナダのフリーランド副首相兼財務相、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁と、会議に招待されたウクライナのマルチェンコ財務相ら。鈴木氏や黒田氏は同調しなかった
  シルアノフ氏は「G20は経済協議の場だ」と述べ、退席した欧米側を牽制(けんせい)した。
  インドネシアのムルヤニ財務相は閉幕後、多数の参加国が、侵攻を「言われがなく正当化できない」と非難したと明らかにした。すみやかな戦争終結を迫る声も上がったという。
  ムルヤニ氏は、戦争が新型コロナウイルス危機後の景気回復を妨げているとの見方を参加国が共有したと指摘。食料やエネルギー価格上昇への対応や、保健分野も議論したと説明した。


2022.03.25-au web ポータル(産経ニュース)-https://article.auone.jp/detail/1/4/8/221_8_r_20220325_1648154072493462
バイデン氏「化学兵器使えば相応の対応」 露のG20排除主張

  【ワシントン=大内清】バイデン米大統領は24日、訪問先のブリュッセルで記者会見し、ウクライナに侵攻したロシアが化学兵器を使用した場合、「われわれはそれに対応すると述べ、何らかの報復措置を取る考えを示した。「対応の性質は(兵器の)使用の性質による」とし、詳細は明らかにしなかった。ロシアを主要20カ国(G20)から排除するべきだとも主張し、G20の会合にウクライナをオブザーバー参加させる考えを明らかにした。

  バイデン氏は、中国がロシアを支援することへの懸念をめぐり、18日に行った習近平国家主席とのオンライン会談で「恫喝したわけではないが、ロシアを助けることがどのような結果を招くか明確に伝えた」と強調。「中国は、経済的な未来がロシアよりも西側諸国とはるかに密接に結びついていることを理解している」とも話した。同会談では、ウクライナ侵攻を受けてロシアから撤退した米国をはじめとする外国企業の数などを示したという。
  これに関連しバイデン氏は、対露制裁の効力を高めるため、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)に制裁破りを監視する組織や仕組みの必要性を提起したことも明らかにした
  バイデン氏は、NATOをはじめとする西側諸国が現在、「かつてなく結束」しているとした上で、「プーチン(露大統領)はわれわれが団結を維持できるとは考えていなかった」とロシアの誤算の指摘した。
  一方でバイデン氏は、「欧州の穀倉」といわれるウクライナやロシアからの輸出が滞ることによる食料不足の危機は「現実のものだ」と認め、小麦の有力生産国である米国やカナダでの増産や市場へのすみやかな供給を検討していることや、各国に食料輸出制限の撤廃を働きかけることなどを協議していると説明した。



2021.11.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20211101-OBOS544P2ZL6VB5J4HBU6VD46Y/
温室ガス「今世紀半ば」の実質ゼロ目指す G20、声明採択して閉幕 法人税率の国際ルールへの支持も

  【ローマ=三井美奈】ローマで行われた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は31日、地球温暖化対策を討議し、2日間の日程を終えて閉幕した。首脳声明には、「今世紀半ば」までに温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」とする目標が盛り込まれた。巨大IT企業などの税逃れを防ぐ国際課税ルール導入への支持も確認した。
  声明は、2015年採択のパリ協定に沿って、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1・5度以内に抑える目標を明記。達成に向けて「効果的で意味ある方策」を取るよう呼び掛けた。米欧や日本は50年までの「実質ゼロ」を目標に掲げるが、途上国との立場の差が埋まらず、目標年次の明記は見送られた
  議長を務めたイタリアのドラギ首相は終了後の記者会見で、「誇れる内容だが、これは始まりにすぎない」と述べた。国連のグテレス事務総長はツイッターで「G20の公約は歓迎するが、希望は満たされなかった」と発信し、温暖化対策の目標があいまいだったとして失望感を示した。


2021.07.12-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/a0f5975482712e718d9861b8270e95ce215e1a06
炭素の価格付け推進 対応遅れた日本に負担も

  イタリア北部ベネチアで10日まで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明では、温室効果ガスの排出に応じて負担を課すカーボンプライシングの導入について、検討を進めることも明記した。

  脱炭素に向けて欧米や中国などでは導入が進むが、日本は検討が遅れている世界最大の排出国である中国が排出量を依然増やし続けるなど、対策をめぐる公平性も課題になり、国富の流出を防ぐため賢く立ち回る必要がありそうだ
  声明では、「適切であれば炭素に価格付けを行う仕組みカーボンプライシング)」を含む幅広い手法を組み合わせ、排出量が少なく持続可能な経済に移行していくべきだと指摘した。
  麻生太郎財務相は会議後の記者会見で「(カーボンプライシングの重要性を)言う国もあれば乗ってこない国もある」と指摘し、合意形成には時間がかかるとの見方を示す。ただ、G20では国際機関に制度の研究を求める方針で、次回の10月会合で制度全般への支持を打ち出す可能性がある。
  カーボンプライシングは、排出量に応じて企業や家庭に経済負担を求める制度。排出量に比例して課税する「炭素税」と、企業ごとに排出量の上限を定めて超過企業と下回る企業との間で排出権を売買する「排出量取引」が代表的だ。
  2050年脱炭素化への取り組みが広がる中、世界銀行によると既に64カ国・地域がカーボンプライシングを導入し、世界の排出量の約2割をカバーしている。脱炭素には革新的な技術の開発が不可欠だが、日本が13年比46%削減を掲げる30年までの中期目標には間に合わず、課金による強制的な排出削減や、炭素税収を財源にした政府の政策支援に頼る部分が大きい。
  先行導入した欧米では、規制が緩い国との間で国際競争力に差がでないよう、製造過程などで排出量が多い輸入品に課税する「国境炭素税」導入の動きもある。対策が遅れた日本企業は今後、事業活動で不利な立場に立たされる恐れがある
  こうした中、菅義偉政権はカーボンプライシングの本格導入を検討する。日本は平成24年に化石燃料の税率を上乗せする地球温暖化対策税を創設したが、欧州などに比べ負担は小さく、課税強化が課題になる。 ただ、産業界では負担増への懸念が広がり、秋の衆院解散・総選挙を前に議論は進まない。
  日本は京都議定書で実現困難な目標を掲げ、未達分の排出権を中国などから購入し数千億円の国富が流出した苦い経験があり、「空気の売買」に抵抗感が根強いのも事実だ。
  世界の排出量シェアの3割を占める中国は30年までかけて排出削減に転じる計画で、同3%に過ぎない日本が世界の温暖化対策に貢献できる余地は限定的。とはいえ先進7カ国(G7)は脱炭素の実施ルールを議論する11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向け、高い目標を掲げることで中国に対策強化を迫る構えで、日本も同調を求められる。企業の国際競争力を損なわないよう、カーボンプライシングの制度設計には知恵を絞る必要がありそうだ。 (田辺裕晶)


2021.07.11-日本経済新聞-G20、法人課税で「歴史的合意」 最低税率15%以上 財務相・中銀総裁会議が閉幕
G20、法人課税で「歴史的合意」 最低税率15%以上財務相・中銀総裁会議が閉幕

  【ベネチア=加藤晶也】20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は10日、国際的な法人課税の新たなルールの大枠で合意して閉幕した。世界共通となる最低税率の設定と、巨大IT(情報技術)企業などを念頭に置いたデジタル課税の導入が柱で、10月の最終決着へ前進した。実現すれば国際課税ルールの歴史的な転換になる。共同声明は「歴史的な合意に至った」と明記した。

  声明は経済協力開発機構(OECD)が1日に事務レベルで合意した内容をG20として「承認する」と強調した。制度の詳細を詰め、10月の最終決着をめざす方針も盛り込んだ。中国やインドなど欧米の主要国以外も含まれるG20の政治レベルで賛同を取り付けたことに意義がある。

  OECDの交渉に参加した139カ国・地域のうち、低税率国のアイルランド(12.5%)など8カ国がまだ合意に加わっていない。こうした国にも同意を呼びかける。
  現行制度が経済のグローバル化やデジタル化など時代の変化に追いついていないほか、新型コロナウイルス禍による各国の急速な財政悪化による財源確保のニーズも国際合意への機運を高めた。
  企業が負担する法人税の最低限の税率を「少なくとも15%」にする。多国籍企業が税率の低い国・地域に子会社を置き、租税回避するのを防ぐ狙いだ。具体的な税率は今後詰める。OECDは最低税率が導入されれば税収が年16兆円以上増えると予想する。
  1980年代以降、企業誘致や投資活性化を進めるため各国の法人税の引き下げ競争が過熱してきた。期待した効果が出ていないとの声は多く、消耗戦となっていた。
  デジタル課税は売上高200億ユーロ(約2.6兆円)、税引き前の利益率が10%超の企業100社程度を対象とする。
  米IT大手などへの課税強化を想定している。工場や支店などの物理的な拠点がなくても、サービスの利用者がいればその国で税金を徴収できるようにする。


2021.06.30-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210630/mcb2106301112009-n1.htm
途上国開発資金に「透明性」 G20開発相が確認

  【パリ=三井美奈】イタリア南部マテーラで開かれた20カ国・地域(G20)外相・開発相会合は29日、新型コロナウイルス禍からの復興で国際的取り組みを目指す「マテーラ宣言」を採択などし閉幕した。宣言は、新型コロナで世界的に食糧不足が深刻化したことを受け、食糧安全保障でも投資拡大などをうたった。
  開発相会合は別の共同声明をまとめ、途上国の開発をめぐり「透明性」のある「持続可能な資金調達」の重要性を確認した。日米欧には、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて投資先国に過剰な債務を負わせていることへの懸念がある。
  マテーラ宣言は、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」のうち、2030年までの饑餓撲滅を達成できる「方向には進んでいない」とし、新型コロナが食糧安全保障にも影響を与えていると指摘。農業など食料システムの気候変動への適応を加速させる必要性も強調した。
  議長を務めたイタリアのディマイオ外相は「新型コロナは国境を越えた緊急事態に対し、国際的取り組みの必要性を示した」と述べた。
  会合には、中国の王毅国務委員兼外相がオンラインで参加。ロシアは次官級を派遣した。ロイター通信によると、ドイツのマース外相は「われわれは中露との話し合いを必要としている」と述べ、中露外相の不在に失望を示した。


2021.06.18-高知新聞-https://www.kochinews.co.jp/article/465031/
米、中国と首脳会談調整へ G20で初の対面可能性

  【ワシントン共同】サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は17日の電話記者会見で、バイデン大統領が中国の習近平国家主席との直接会談に意欲を示し、首脳会談開催に向けて調整に入ると明らかにした。両首脳が10月にイタリアで予定される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席する見通しも示しており、この場で対面式の会談を実施する可能性が浮上した。

 国際的な覇権を巡り激しく対立する米中の首脳が直接会談すれば1月のバイデン政権発足後、初めてとなる。



2020.11.23-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/201123/mcb2011230742007-n1.htm
サウジ、存在感示せず…アラブ初のG20議長「人権」拭えぬ不信

  【カイロ=佐藤貴生今年の20カ国・地域(G20)議長国は石油大国サウジアラビアがアラブ諸国で初めて務めた。21~22日開催の首脳会議(サミット)では各国首脳が一堂に会する場を利用し「中東の盟主」を国際的にアピールする狙いだったが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で対面式の開催は見送られ、存在感を発揮できたとは言いがたい。一方で人権侵害への批判が高まるなど、むしろサウジを取り巻く厳しい環境が浮き彫りになった。

  「(新型コロナの感染拡大など)私たちは地球規模の危機に直面している。首脳会議は重要で決定的な成果をもたらすはずだ」。サウジのサルマン国王は21日、首脳会議の開会演説でこう述べた。横にあったのはムハンマド皇太子の姿。次期国王と目される皇太子が内政・外交に大きな権限を握っている実態をうかがわせた。
  皇太子をめぐっては人権弾圧に関与しているとの観測が絶えない。2018年に在トルコのサウジ総領事館で起きた反体制記者殺害事件では犯行を主導したとの疑惑が浮上した。サウジは現在も女性の人権活動家らを不透明な司法手続きで長期間拘束している。
  サウジは今年、むち打ち刑や未成年の犯罪者に対する死刑を廃止すると表明した。国際社会の批判を和らげる狙いがにじむ。しかし、ロンドンやパリ、ニューヨークの市長らはG20関連イベントへの参加をボイコットし、強権的な姿勢が目立つ皇太子に対する欧米の不信感がぬぐい切れない実情を示した。
  サウジの財政もコロナ感染拡大で大きな打撃を受けている。原油需要の急落に加え、海外からの直接投資も鈍化する見通しだ。巨額の収入をもたらしてきた同国西部のイスラム教聖地メッカへの巡礼も、大幅な制限に追い込まれた。
  国際通貨基金(IMF)はサウジの国内総生産(GDP)実質成長率を前年比マイナス5・4%と予測。皇太子が産業や雇用の多角化を目指して主導している社会・経済改革「ビジョン2030」の停滞も確実視され、G20議長国となった昨年末に比べると、サウジを取り巻く経済環境は様変わりしている。


2020.11.22-Yahoo!Japanニュース(TBS ニュース)-https://news.yahoo.co.jp/articles/a519d20e5333a23311dce08578e3b52caac147f3
プーチン氏「ワクチン必要な国に提供用意」 G20サミットでワクチン外交アピール

  G20サミットでロシアのプーチン大統領は、新型コロナウイルスのワクチンについて「必要とする国に提供する用意がある」として、ワクチン外交を進める考えを示しました。
  プーチン大統領は21日、オンライン形式で開かれたG20サミットで、「予防接種のためのワクチンが世界の共有財産であるべきことは疑いようがない」と指摘。そのうえで、「ロシアはワクチンを必要とする国に提供する用意がある」と述べました。
  世界で初めて承認した「スプートニクV」など2つのワクチンに加え、間もなく3つ目のワクチンを承認する方針だとしていて、ワクチン外交を推し進めていく考えを示しました。
  また、新型コロナにより何百万人もの人が失業し、貧困の拡大を生み出していると述べ、「世界恐慌以来、 世界が経験したことがない経済危機だ」と訴えています。(22日02:49)


2020.11.22-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/sankei-plt2011220012.html
コロナ対策…各国とも債務膨張の懸念

  21、22日に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)では、新型コロナウイルス感染症対策や雇用など世界経済の回復について議論。コロナ禍で家計への現金給付など財政出動によって景気を下支えせざるをえない中、各国の債務が膨張するリスクをはらんでいる。G20ではコロナ禍だけでなく、地球環境問題も議論されたが、いずれも一国だけで解決できない課題だけに、さらなる国際協力が求められる。
  各国はコロナ禍に伴う外出自粛などで売り上げが減少した企業への補助金や、雇用を下支えする支援策を相次ぎ実施している。国際通貨基金(IMF)によれば、世界の経済対策は10月半ば時点で約12兆ドル(約1300兆円)に膨らんだ。
  G20に先立ち、IMFのゲオルギエワ専務理事は19日、「各国は財政支援などから早計な撤退を避けるべきだ」と発言し、インフラ投資などの継続を訴えた。欧米を中心に新型コロナが再拡大しており、景気に悪影響を与えかねないからで、さらなる債務の膨張も予想される。
  さらに、G20では新型コロナで打撃を受けた途上国の債務の一部免除を含む追加支援策でも合意している。途上国を支援し、世界経済を下支えする狙いだ。
  だが、財政出動にも限界がある。経済政策で一国の景気を刺激できても、多くの国が入出国制限を行っている現状では貿易や観光などの停滞が世界経済の下押し要因になる。
  これを念頭に、サウジアラビアのサルマン国王は21日の演説で「貿易と人の移動を促進するため、経済活動と国境の再開を支援しないといけない」と強調した。しかし、有力なワクチンが出始めているものの、ワクチンの普及や治療薬の開発にはなお時間がかかるとみられ、その分、貿易や観光の回復も遅れそうだ。
(大柳聡庸)


2020.11.13-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/politics/news/201113/plt2011130037-n1.html
G20、米国の国際協調復帰に期待  G7での中国対抗体制を再構築へ

  13日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、途上国への最大の貸し手である中国をどう救済策に参加させるかで苦慮する構図となった。米大統領選でバイデン前副大統領が当選確実となった米国が国際協調路線に戻れば、中国の押さえ込みに有効とも期待される。ただ、トランプ政権の4年間で、結束すべき先進7カ国(G7)の足並みは乱れており、協力体制の再構築が必要だ。

  途上国向け融資をめぐってはアフリカの資源国ザンビアがコロナ流行後で初となる債務不履行(デフォルト)の瀬戸際にある。先進国の金融機関は返済を猶予すれば、その資金が最大債権者である中国への返済に回ると恐れ、交渉に応じない。途上国の破綻が連鎖すれば、ワクチンの開発で光が見えてきた世界経済の新たな重しになる。
  世界銀行によると、G20が返済猶予の対象とした73カ国中、猶予を申請したのは今月10日時点で44カ国にとどまる。中国側の融資は途上国が返済猶予を求めた場合に天然資源や港湾などの重要施設を長期間接収される契約が多く、簡単に返済猶予を求められないためだ。
  こうした中国の「債務のわな」が巨大経済圏構想の「一帯一路」を通じ世界に広がったのは、米国第一主義のトランプ政権下で先進国の足並みが乱れ、中国に付け込まれた面もある。
  野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「トランプ政権では貿易や安全保障などで米国と各国が対立し、G7が形骸化した。米国が国際協調に復帰することで、G7が再びさまざまな問題に一致団結して対応できるようになる」と指摘する。
  ただ、存在感を増す中国をG7だけで押さえ込むのは難しい。木内氏は、G7が中国以外の新興国にも一定の配慮をすることで、G20の利害調整を図ることが必要だと指摘する。新興国勢を中国に取り込まれれば、G7と新興国の対立につながりかねないからだ。
  日本はバイデン氏と連携して亀裂が入った米欧の間を取り持ち、国際社会の利害調整をリードしてきたG7の機能を取り戻す仲介役になる必要がある。(永田岳彦)


2020.11.13-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/economy/news/201113/ecn2011130029-n1.html
G20、途上国債務の一部免除で合意 中国も「公平な負担」

  20カ国・地域(G20)は13日、テレビ会議形式で財務相・中央銀行総裁の臨時会議を開き、途上国が抱える公的債務を一部免除する新たな救済策で合意した。21、22日に開くG20首脳会議(サミット)に報告する。最大の債権国である中国は政府系の金融機関を民間に分類して救済策への参加を逃れようと抵抗を続けていたが、最終的には公平な負担を受け入れた形だ。

   G20が合意した途上国の救済策に関する指針「共通枠組み」には、債権を持つG20とパリクラブ(主要債権国会議)の全関係者が参加。中国を含む「全ての公的な2国間債権者が公平に負担」することを定めた上で、民間の債権者に対しても公的債権者と「少なくとも同程度」の削減率での救済策を講じるよう求めた。 また、債務免除の進捗(しんちょく)に関する情報を他の債権者にも提供することを求めた。
   G20は新型コロナウイルスの世界的流行を受け、途上国債務の元本と利子の返済を来年半ばまで猶予することで既に合意していた。負担逃れを図る中国は政府系金融機関の国家開発銀行が救済策への参加を義務付けられていなかった民間金融機関だとの主張を続け、日米欧が強く批判していた。


2020.10.15-gooニュース(産経新聞)-https://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/finance/sankei-ecn2010150022.html
途上国債務問題、先進国と中国のつばぜり合い続く

  14日夜に行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、新型コロナウイルスで経済が悪化している発展途上国の公的債務の返済猶予をめぐる先進7カ国(G7)と中国のつばぜり合いも浮かび上がった。一部公的機関を民間金融機関に分類し、返済猶予の枠外として負担逃れを図る中国に対し、G7は途上国向け債権を持つ民間金融機関も返済猶予に参加する仕組みを模索したが、共同声明では民間金融機関の参加までは義務付けられなかった。危機回避に必要なG7と中国の協調体制構築の難しさが改めて裏付けられた形となった。
   「(債務問題は)透明性がはっきりしないとできない」。麻生太郎財務相は会議出席後の会見で中国を念頭にこう指摘した。
   焦点となったのは国内外のインフラ案件などに貸し付ける中国の政府系金融機関国家開発銀行」だ。中国は同行を民間金融機関に分類し、G7の公的機関が支払いを猶予した債務が、中国の民間金融機関への返済に流れる「抜け道」を模索。これに対し、G7は返済猶予に公的機関だけでなく、民間金融機関も同等に参加することで「抜け道」を使えなくすることを検討したが、声明では「民間債権者の(返済猶予への)参加の欠如に失望。要請があった場合、参加することを強く奨励する」との表現にとどまった。
   財務省幹部は「民間金融機関の自発的な参加を期待したが、実際には参加していない。公的機関が返済を猶予しても浮いた分で、民間に返すとなれば全然実効性がない」と強調する。
   中国は途上国への多額の融資で影響力を拡大してきたが、各金融機関がさまざまな形で融資をしており、保有する債権の全体像は不明な点も多い。返済猶予には、保有する債権情報を明らかにする必要もあり、中国の途上国向け融資の問題点があぶりだされる可能性もある
   返済猶予の「抜け道」をふさがれなければ、コロナ禍で増大する途上国の公的債務の救済措置の実効性は担保されない途上国のリスクが高まれば、現在は返済猶予の対象外だが債務残高が多い、トルコやブラジル、インドなどの新興国に問題が波及し、世界的な債務危機にもつながりかない中国にはG7と協調し、誠実に危機に対処することが求められている。(永田岳彦)


2020.2.22-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200222/k10012297511000.html
G20開幕 新型ウイルス 世界経済への影響を議論

G20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議が日本時間の22日夜、サウジアラビアで始まりました。
  新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響や、景気を下支えするための各国の対応策などについて議論が交わされます。今回の会議はサウジアラビアの首都、リヤドで22日、日本時間の午後8時に始まり、日本からは麻生副総理兼財務大臣と日銀の黒田総裁が出席しています。
  新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、G20の閣僚が集まる会議は初めてで、世界経済への影響が主な議題となります。
  中国人旅行者の減少によって各国の観光業が打撃を受けているほか、中国からの部品や原料の供給が滞って生産活動にも影響が出ており、世界経済を下押しするとの見方が強まっています。
  初日の討議ではこうした懸念を共有したうえで、景気を下支えするための対応策などについて議論が交わされます。
  会議が始まるのを前に日銀の黒田総裁は、「中国の経済活動がどのように動いていくか、コロナウイルス自体がどういうタイミングで終息するかも分からないので不確実性が大きい」と述べ、必要な場合には追加の金融緩和に踏み切る姿勢を示しました。
  海外では、感染者が増えている日本で経済活動が停滞することへの懸念も出ていることから、会議では麻生財務大臣が感染拡大防止への日本の対応などを説明する見通しです。
中国経済の減速不可避の見方広がる
  新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、中国経済は大幅な減速が避けられないという見方が広がっています。
  成長率に与える影響について中国の複数の民間のシンクタンクは、2003年に新型肺炎「SARS」が流行した際に四半期の成長率が2ポイント程度落ち込んだことを参考に、ことしの第1四半期は1992年以降最低だった前の期を2ポイント程度下回る4%前後に落ち込むと見込んでいます。
  これ以上に悲観的な観測もあります。今回の感染拡大では消費が大きな打撃を受けているうえ2003年に比べて工場の生産停止の規模も拡大していることから、中国経済への下押し圧力はさらに大きく、第1四半期の成長率がマイナスになるという見方も出ています。
  そして、中国経済の減速が世界経済に与える影響も一段と大きくなる可能性があります。SARSが流行した2003年、中国経済が世界全体のGDPに占める割合は4%余りでした。ところが、去年は16%程度にまで拡大していて、世界第2の経済大国である中国経済の冷え込みは、2003年をはるかに上回る規模で各国経済に影響を与えるおそれがあります。
  中国政府は、短期的には消費や生産も大きな打撃を受けるものの、事態が収束したあとは落ち込んだ需要を補うため、経済活動は急速に回復するとして強気の姿勢を崩していません。
米経済も影響不可避
  新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、アメリカ経済も避けられない状況です。
  アメリカの主要な経済メディア、ウォール・ストリート・ジャーナルの調査では、新型コロナウイルスによる企業活動の停止などの影響で、8割を超えるエコノミストがアメリカの1月から3月のGDP=国内総生産が0.5%未満押し下げられるとしています。
  このうち、中国への生産依存度が高い大手IT企業のアップルは今月17日、新型コロナウイルスの影響で「iPhone」の中国での生産台数が減っていることから、1月からの3か月間の売り上げが当初の見込みを達成できない見通しになったと発表しました。
  また、アメリカにとって中国はカナダやメキシコに次ぐ輸出先で、年間の総額が11兆円にのぼり、中国経済が減速すればアメリカ企業に影響するおそれもあります。
  とりわけ、トランプ政権が先月、中国との間で合意したアメリカ産の農産品や石油の輸出を1.5倍に増やすという計画の実現も不透明になっています。
  トランプ政権は新型コロナウイルスの影響は一時的なもので、春ころには解消されるという強気な予測を立てていますが、感染の拡大が続く中、影響がどこまで広がるかは見通せない状況です。
  IMF=国際通貨基金は19日、サウジアラビアで開かれるG20・主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議を前に世界経済の報告書を公表しました。
  この中でことしの世界経済の成長率の見通しについて、プラス3.3%に据え置いて変更しませんでしたが、下向きに修正することに含みを持たせていて、新型コロナウイルスの影響がどこまで広がるのか注視するとしています。
ドイツの専門家 「景気を落ち込ませる一撃のおそれ」
  中国でモノの製造が停滞していることは、遠く離れたヨーロッパにも影響を及ぼしています。
  ドイツ南部に拠点を置くメーカーは自動車や換気装置などさまざまな製品に使われるファンを製造し、日本企業を含む1万を超える取引先に納めています。
  使う部品のうち中国から調達する数はおよそ750にのぼりますが、ファンの動きを制御する電子基板など重要な部品は今月から入ってこなくなっています。
  この会社は対応にあたる特別チームを設置し連日、中国にいるスタッフから現地の状況を確認しながら替わりの部品を調達する方法を探しています。このままだと来月には在庫が尽きて、生産を止めざるを得なくなるということです。
  シュテファン・ブランドルCEOは、「世界の産業にとって中国は最も重要な部品の供給元です。もし、この状況が長期化すればドイツでの生産が止まり、顧客への供給が滞る事態になりかねません」と話しています。
  こうした中国からの部品供給が滞ることへの懸念は、ドイツだけでなくヨーロッパの製造業全体に広がっています。
  ドイツ経済研究所のマルセル・フラッチャー所長は、「ドイツやヨーロッパの経済は米中の貿易摩擦やイギリスのEU離脱をめぐる混乱ですでに弱まっている。そこに新型コロナウイルスの影響が広がれば、景気をさらに落ち込ませる一撃となるおそれがある」と警鐘を鳴らしています。
東南アジア各国 GDP見通しを引き下げ
  新型コロナウイルスの感染拡大は、観光業を中心に東南アジアの経済に深刻な影響を与え始めています。
  東南アジアは中国人の主要な旅行先の1つで、このうち、タイは年間1100万人近くが訪れる人気の観光地となっているほか、ベトナムも外国人旅行者のおよそ30%を中国人が占めています。
  しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、中国人旅行者の減少などの形で東南アジアにも波及し、各国がことしのGDP=国内総生産の見通しを引き下げる動きも相次いでいます。
  このうちシンガポールは、これまでプラス0.5%から2.5%の間としていた見通しを、マイナス0.5%からプラス1.5%と、1ポイント引き下げたほか、タイはプラス2.7%から3.7%としていた見通しを、プラス1.5%から2.5%と1.2ポイント下方修正しました。
  新型コロナウイルスの感染者がまだ見つかっていないインドネシアもプラス5.1%から5.5%としていた見通しを、プラス5.0%から5.4%へとわずかながら引き下げました。
  また、ベトナムは新型コロナウイルスの感染拡大の終息がことし6月まで長引いた場合、GDPの伸び率は目標のプラス6.8%を下回る5.96%となる可能性があるとしています。
  さらに、東南アジアの製造業の間では、中国からの部品や原材料の調達の遅れなどが生産活動に悪影響を及ぼす懸念も広がっています。







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