アメリカ宇宙計画-1


2024.01.09-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20240109/k00/00m/030/005000c
米月着陸船打ち上げ成功も“異常”報告 「軟着陸能力を脅かす」
【ニューヨーク八田浩輔】

  米民間宇宙企業アストロボティックの無人月着陸船「ペレグリン」は8日未明(日本時間同日夕)、南部フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。発射から約50分後にロケットから切り離され、月へ向かう軌道に入った

  しかし、アストロ社は約7時間後、機体の姿勢を太陽に向けて安定して保つことができないとする「異常」を報告。その後のX(ツイッター)への投稿で、要因は推進系の異常の可能性があるとした上で、事実であれば月面着陸が困難になると説明した。
  打ち上げは米航空宇宙局(NASA)が機材や貨物の月への輸送を民間に委託する「商業月面輸送サービス(CLPS)」の一環。アストロ社は民間企業で初の月面着陸を目指している。
  一方、ペレグリンを搭載した米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の新型ロケット「バルカン」は今回、初の打ち上げに成功した。ULAは航空機大手ボーイングとロッキード・マーチンの合弁企業。【ニューヨーク八田浩輔】


2023.09.28-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230928-4CJNMZ6E5NITPDY5X2B3QZW7SQ/
米国版「はやぶさ」 初代の偉業をつなげたい

  米航空宇宙局(NASA)の探査機オシリス・レックスが小惑星ベンヌで採取した岩石試料の入ったカプセルが回収された。小惑星からの試料回収は、日本の「はやぶさ」「はやぶさ2」に続いて3例目である。
  深刻なトラブルをいくつも乗り越え、2010年に小惑星「イトカワ」からの帰還と試料回収を成し遂げた「初代はやぶさ」の偉業が、「米国版はやぶさ」の成功の礎になった。米国チームは初代の取り組みを丹念に調べ、計画立案などの参考にしたという。

  日本の宇宙技術と経験が、宇宙大国である米国から必要とされ、敬意を持たれたことには、大きな意義がある。宇宙に限らず、科学技術で幅広く人類に貢献し、国際社会から必要とされ尊敬される国であることは、日本の安全保障の礎となる。
  初代はやぶさに続く小惑星探査では、日本のはやぶさ2と米国のオシリス・レックスの計画がほぼ同時に始動し、日米は情報交換と議論を重ねて計画を練り上げた。はやぶさ2とオシリス・レックスの成功は、日米の競争と協調の成果でもある。
  小惑星の岩石試料からは、太陽系の成り立ちや、地球生命の起源に迫る手がかりが得られる可能性がある。小惑星探査は経済成長に直結する分野ではないが、初代はやぶさの偉業とはやぶさ2の成功は、日本の存在感を高めた。経済波及効果も大事ではあるが、科学技術施策の基軸には人類と国際社会への貢献を据えるべきであろう。
  初代はやぶさの偉業は映画化もされ、子供たちが宇宙や科学に関心を寄せる契機になった。どんなに深刻な困難に直面しても決してあきらめず、「できることはやり尽くす」という姿勢を貫いたはやぶさチームに多くの国民が勇気づけられた

  あの感動から13年が過ぎた。日本の科学技術力は深刻な低落が続き、宇宙分野もロケット打ち上げ失敗などで沈滞ムードが漂う。初代はやぶさほどのドラマは起きなくても、各国から必要とされる技術を確立することで日本の存在感を高め、沈滞ムード打開の糸口にできる。
  9月に打ち上げられた実証機「スリム(SLIM)」が挑む月面へのピンポイント着陸に、その期待がかかる。できることをやり尽くして、初代はやぶさの偉業をつなげたい。


2023.09.25-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230925/k10014205671000.html
NASA 地球に帰還のカプセルを回収 小惑星の石など中身の確認へ

  日本の探査機「はやぶさ2」のように小惑星に着地して石や砂などを採取したNASA=アメリカ航空宇宙局の探査機のカプセルが地球に帰還し、アメリカの砂漠地帯で回収されました。小惑星の石や砂などの試料を地球に持ち帰るのは日本の「はやぶさ」「はやぶさ2」に次いで3例目です。
  2016年に打ち上げられたNASAの探査機「オシリス・レックス」は地球からおよそ3億キロ離れた小惑星「ベンヌ」に着地して、表面にある石や砂などを採取したあと、地球に向かって飛行していました。そして、24日、採取した石などが入ったカプセルを地球に帰還させるミッションが行われました。

  カプセルは直径およそ80センチ、高さおよそ50センチの円盤のような形で、探査機から切り離されて大気圏に突入したあと、パラシュートを展開してゆっくりと地上に降下し、日本時間の24日午後11時52分、アメリカ西部ユタ州の砂漠地帯に着地しました。そしてNASAなどの回収チームがヘリコプターで現場に向かい、カプセルは回収されました。
  小惑星の石や砂などの試料を地球に持ち帰るのは、日本の「はやぶさ」と、「はやぶさ2」に次いで3例目となります。
  カプセルの中にある、密封された容器には採取した試料およそ250グラムが入っていると推定され、このあと、容器がテキサス州にあるNASAのジョンソン宇宙センターに運ばれて特殊なクリーンルームの中で中身の確認が行われます。試料は、地球の生命の起源や太陽系の成り立ちについて貴重な情報をもたらすことが期待されていて、日本も含む世界中の研究者が解析を進める予定です。
  カプセルを切り離した探査機は現在、地球から遠ざかり、新たなミッションとして、別の小惑星の探査に向かっています
「はやぶさ2」責任者 JAXA津田雄一さんも祝福
  「オシリス・レックス」のカプセルが地球に帰還するのにあわせて日本の探査機「はやぶさ2」のプロジェクトの責任者を務めたJAXA=宇宙航空研究開発機構の津田雄一さんも現地を訪れていました。カプセルが無事、着地する様子を見守った津田さんは「すばらしかった。NASAのチームにはおめでとうと言いたい。地球と小惑星を往復し、『究極の探査』とも言えるサンプルリターンに、また一つ、大きな歴史の1ページが加わったと思う」と祝福していました。
  そのうえで「私たちの行ったリュウグウの成果に加え、ベンヌの科学的成果も出ると思うと楽しみだ。ただ、われわれをとりまく宇宙環境の理解と生命の起源を知るには、さらに遠くまで行かなければならない。今回の成果はそのための橋頭保=足がかりができたと考えている」と話していました。
NASA惑星科学部長“『はやぶさ2』チームの協力感謝”
  今回、小惑星の石や砂などを地球に持ち帰るミッションに挑んだ「オシリス・レックス」のチームは、同じ、小惑星からの「サンプルリターン」のミッションを成功させている日本の探査機「はやぶさ2」のプロジェクトチームからさまざまなことを学んでいました。
  プロジェクトを担当した、NASAのロリ・グレーズ惑星科学部長はNHKの取材に対し「カプセルの回収や開封、小惑星から採取したサンプルをどう評価するかなど多くのことを学んだ。『はやぶさ2』チームのすばらしい協力に感謝します」と述べました。
  NASAはこれまでに「はやぶさ2」が採取した、小惑星「リュウグウ」のサンプルの一部をJAXAから受け取り、今回は小惑星「ベンヌ」のサンプルの一部をJAXAに提供することになっていて、グレーズ部長は「2つの小惑星のサンプルを比べることでこうした小惑星が太陽系を周回する中でどのように形づくられてきたのか知ることができる。分析をともに進められることが楽しみだ」と述べて、今後の研究成果に期待を示していました。


2023.01.14-BBC NEWS JAPAN-https://www.bbc.com/japanese/64273176
米軍によるUFO目撃情報、500件超に増加=米政府報告書

  米軍による未確認飛行物体(UFO)の目撃証言が、新たに数百件に上っていることが、新たに公開されたべ政府報告書から明らかになった。
  アメリカの国家情報当局は、これまでに510件の目撃情報を把握している。情報機関が2021年に初めて行った調査で判明した144件から、大幅に増えた。
  報告書では、目撃情報の半数近くは「特筆する点がない」とされており、人間の活動によるものとされている。

  一方で、100件以上の目撃情報がなお、説明がつかないままとなっている。
「性質がつかめず、帰属も分からない」
  この報告書は、UFOにまつわる体験を「非正統化」し、航空安全を改善する対策の一部として編纂(へんさん)されたもの。
  それによると、「未確認飛行現象(unidentified aerial phenomena、UAP)」との遭遇は引き続き「制限空域や慎重を要する空域で発生」しており、国家安全保障と「安全についての懸念材料となる可能性がある」としている。
  一方で、遭遇の報告が増えているのは、まさに「UAPという話題を非正統化し、代わりに飛行安全上の危険と、潜在的な敵対行為のリスクを認識するための集中的な努力」の結果だとしている。
  新たに報告された366件の報告のうち、26件はドローン(小型無人機)、163件は風船、6件はレーダースクリーン上の乱れだと結論付けられた。
  しかし、171件については今なお、「性質がつかめず、帰属も分からない」とされている。これは、遭遇した物体を特定するのに十分な情報が集められなかったことを意味している。
  「未特定のUAPの中には、異常な飛行特性やパフォーマンス能力を示したと思われるものがあり、今後さらに分析が必要」だと、報告書は述べている。
「宇宙人を示唆するものはない」
  目撃報告のうち、地球外からの活動と結びつけられているものはない。
  米国防総省は昨年、全領域異常解決局(AARO)を設立し、UFOの目撃報告を調査している。
  AAROは今後、未確認現象による事件の通報と分析に重点を置き、情報機関と協力してそれらの事件の評価をさらに進めていくと、報告書は説明している。
  国防総省のロナルド・モートリー情報・安全保障防衛担当次官は昨年12月、「目撃物体に、地球外由来かもしれないものが含まれるなど、思えるような内容は目にしていない」と話した。
  「宇宙人の訪問や墜落、およびそれらを示唆するものは、これまでの収集データで見ていない」 その上でモートリー次官は、残りのUFOが地球由来のものかどうか、特定努力は続行すると話した。
  「正体を突き止めるまでは、敵対的なものかもしれないと仮定する(中略)ゆえに、その可能性を真剣に受け止めなくてはならない」



2022.12.12-Yahoo!Japanニュース(読売新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/f9ed645d9752bdbb75974e340911370e66957b2d
NASA宇宙船「オリオン」が無事帰還…半世紀ぶり有人月探査へ大きく前進

  【ワシントン=冨山優介】米航空宇宙局(NASA)の新型宇宙船「オリオン」11日午後0時40分頃(日本時間12日午前2時40分頃)、メキシコ沖の太平洋上に着水した。有人月探査「アルテミス計画」第1弾の無人試験として11月16日に打ち上げられ、地球へ無事に帰還することに成功した。アポロ計画以来、約半世紀ぶりとなる有人月探査へ向けて大きく前進した

  オリオンは打ち上げ後、の近くを飛行し、地球に向かった。最後は、時速約4万キロ・メートルの速度で地球の大気圏へ再突入し、パラシュートで減速して着水した。
  船で回収後、点検が実施される予定だ。NASAのビル・ネルソン長官は記者会見で「ミッションは大きな成功を収めた。我々は国際的、商業的パートナーとともに月へ行く。新しい時代の始まりだ」と述べた。
  NASAは、宇宙飛行時のオリオン船内への放射線の影響や、再突入時の耐熱性能などを解析した上で、24年に有人での月周辺への飛行、25年以降に月南極付近への有人での着陸を目指す月面での長期滞在を実現し、30年代以降の火星有人探査につなげる方針だ。


2022.10.12-BBC NEWS JAPAN-https://www.bbc.com/japanese/63224629
NASA、小惑星の軌道変更に成功 無人探査機衝突実験

  アメリカ航空宇宙局(NASA)は11日、無人探査機「ダート」(DART)を小惑星に衝突させて軌道を変える実験に成功したと発表した。

  科学者たちは先月26日、探査機「ダート」を直径約160メートルの小惑星ディモルフォスに衝突させた。宇宙と地球上にある複数の望遠鏡で観測を行った結果、ディモルフォスの軌道が変わったことが確認された。
  これは、地球を脅かす可能性のある隕石(いんせき)の軌道を安全に変えることができるかを検証するのが狙い。
  今回のミッションの成果は、十分に早い段階にミッションを開始し、目標物が過度に巨大でなければ軌道変更がうまくいく可能性を証明するものとなった。
  「このミッションは、NASAが宇宙から私たちに向かってくるどんなものにも備えようとしていることを示している」と、NASAのビル・ネルソン長官は述べた。
  ネルソン氏は「NASAが地球の防衛者として真剣に取り組んでいることを証明したと、私は信じている」と記者団に語った。
  NASAは11日、ハッブル宇宙望遠鏡や衝突地点から約50キロ離れたイタリアの小型宇宙船がとらえた新たな画像など、その評価を裏付ける多くのデータを公表した。
軌道周期が32分短縮
  ダート(DART)とは二重小惑星進路変更実験(Double Asteroid Redirection Test)の頭文字をとったもの。実験は地球から約1100万キロ離れた空間で行われた。
  冷蔵庫サイズのNASAの探査機は、時速2万2000キロの相対速度で移動し、ディモルフォスに正面衝突した
  ディモルフォスは衝突前、ディディモスと呼ばれるより大きな小惑星(直径780メートル)を1周11時間55分かけて周回していた。
  衝突後の観測では、その軌道周期が32分短縮し、11時間23分になっていることが示された。つまり、ディモルフォスがディディモスに「数十メートル」近づいたことになる。
  NASAは衝突による周期変化について、最低73秒以上としていた。しかし、11日に発表された実験結果はこの想定を25倍以上上回っていた。
  「ディディモスを周回するディモルフォスの軌道周期を4%変化させたことになる。ダートがディモルフォスを少し押しただけで変化した。ただ、将来的に同じことをする場合には、何年も前に実行した方がいいだろう」と、米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所のナンシー・シャボット博士は述べた。
  「このような小惑星の軌道変更を、より大きな惑星防衛戦略の一部として将来役立てるには、警告する時期がとても重要になってくる」

  NASAのダート計画の科学者トム・スタトラー博士も、この実験から多くの結論を引き出すことに注意を促している。
  小惑星はさまざまな姿をしていると、スタトラー氏は指摘する。小惑星の組成や構造は多様であるということは、新しい天体を確認するたびに強調されてきた。
  「ある小惑星での実験が、同じ状況下にある他のすべての小惑星で起こり得ることを正確に示しているとは、あまり言うべきではない」と、スタトラー氏は強調した。「一方でこの実験を、異なる状況下でさまざまな種類の衝突がどのような結果をもたらすのかを示すシミュレーションの、物理的計算のためのヒントとして使うことはできる」
  欧州宇宙機関(ESA)は今後4年の間に、二重小惑星探査計画「ヘラ」として計4機の探査機をディディモスとディモルフォスへ向かわせ、今回の衝突の後の様子を観測する


2022.04.19-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20220419-I6OSWJOJCJNLDKGLJ2XSNRS6HY/
米、衛星破壊実験を禁止 中国とロシアを批判

  ハリス米副大統領は18日、米国は衛星攻撃兵器(ASAT)の発射実験を今後は実施しないことを確約すると発表した。中国やロシアのASAT実験により衛星の残骸(宇宙ごみ)が発生し宇宙飛行士らへの危険性が増大したと批判し、実験禁止を宇宙利用の新規範として確立する方針を強調した。西部カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地で演説した。

  ハリス氏は米国がASAT実験を実施しないと宣言した初めての国になったと強調。他国にも取り組みに同調するよう呼びかけた。
  ロシアは昨年11月にASAT実験を実施し、中国も2007年に実験した。ハリス氏は中ロの「向こう見ずで無責任な実験」が多くの残骸を生みだしたと訴えた。(共同)



2021.09.16-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20210916/k00/00m/030/031000c
民間人だけで初の地球周回宇宙旅行へ クルードラゴン打ち上げ成功

  世界で初めて宇宙飛行士以外の民間人だけで地球を周回する宇宙旅行に向け、米宇宙企業スペースXは日本時間16日午前9時過ぎ、実業家や病院職員ら4人が乗った宇宙船クルードラゴンを米フロリダ州から打ち上げた国際宇宙ステーション(ISS)よりも高い上空約575キロの軌道を3日間にわたって周回する。宇宙船は、2020年11月から21年5月にかけて日本の野口聡一宇宙飛行士が搭乗した機体が再使用された。

  今年7月には米宇宙ベンチャーのヴァージンギャラクティックとブルーオリジンが、それぞれ民間人を乗せて宇宙飛行を実施したが、地球周回軌道には乗らずに降りてくる弾道飛行で、到達高度は86キロと107キロ、宇宙滞在時間は数分間程度だった。今回は1日で地球周回軌道を15周し、その間、ドーム型の天窓から地球を眺めることができる。民間企業による本格的な宇宙旅行の先駆けとなりそうだ。
  船長を務める実業家のジャレッド・アイザックマンさん(38)が全席分の代金をスペースXに支払い、残り3人を指名や公募で決めた。ミッションは「インスピレーション4」と名付けられ、アイザックマンさんは小児がん治療の支援のため2億ドルを目標に寄付を呼びかける活動の一つとしている。
  クルードラゴンは自動運転だが、緊急時には手動の作業が生じる。搭乗員の4人は約5カ月間にわたって訓練を受けた。帰還時はフロリダ沖の大西洋上にパラシュートで着水する。
  他の搭乗者は、骨肉腫を克服した医師助手のヘイリー・アルセノーさん(29)、募金に協力したエンジニアのクリス・センブロスキーさん(42)、公募で選ばれた地質学者のサイアン・プロクターさん(51)。男女2人ずつのメンバーとなる。【池田知広】


2021.07.12-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/business/news/210712/cpc2107120633001-n1.htm
米で宇宙旅行へ試験成功 実業家ら6人、1時間飛行

  米宇宙旅行会社ヴァージンギャラクティックは11日、開発中の有人宇宙船で試験飛行を実施、目標の高度80キロ超に到達して無事帰還した。創業者で著名実業家のリチャード・ブランソン氏(70)ら同社の6人が搭乗、約1時間飛行した。既に米連邦航空局(FAA)から一般客を乗せる免許を取得しており、試験飛行を重ねて、来年の商業宇宙旅行の開始を目指す。

  宇宙船「スペースシップ2」は、米西部ニューメキシコ州に建設した宇宙港の滑走路から母船の飛行機に抱えられて離陸。上空で分離した後、ロケットエンジンを噴射して高度80キロ超を飛び、数分間の無重力を体験できる仕組み。

  これまで2014年に墜落事故でパイロット1人が死亡したが、宇宙船を改良して高度80キロ超の飛行に3回成功していた。ブランソン氏は英ヴァージン・グループの創始者。(共同)



2020.11.16-BBC News Japan-https://www.bbc.com/japanese/54956357
米スペースXの民間宇宙船、打ち上げ成功 野口聡一さんら搭乗

  日本の野口聡一さんとアメリカの3人の宇宙飛行士が搭乗した米スペースXの新型宇宙船「クルードラゴン」が15日夜(日本時間16日午前)、米フロリダ州から国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられた。
  スペースXが、ロケットと宇宙飛行士らが乗り込むカプセルを提供したのは、これが2回目。
  米航空宇宙局(NASA)は、地球低軌道の旅を民間企業が実施する、新たな時代に入ったと述べた。
  今回搭乗したのは、アメリカ人のマイケル・ホプキンスさん、ヴィクター・グローヴァーさん、シャノン・ウォーカーさんと、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の経験豊富な宇宙飛行士、野口さんの4人。
  野口さんは、種類の異なる3つの宇宙船によって宇宙飛行をした、3人目の人物となった。これまで、ソユーズとスペースシャトルに搭乗していた。

  ロケット「ファルコン」とカプセル「ドラゴン」は、米東部時間15日午後7時27分(日本時間16日午前9時27分)に、南部フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。
  ISSには1日ほどで到着する。ドッキングは日本時間17日午後1時に予定されている。4人はISSに半年間滞在する。
  アメリカのジョー・バイデン次期大統領は、「今日の打ち上げについて、NASAとスペースXに祝意を表する。科学の力と、技術革新、創意工夫、固い決意によって何を成し遂げられるかを証明している。すべてのアメリカ人と日本の人々とともに、宇宙飛行士たちの旅の成功を祈念している」とツイートした。
  ISSには現在、NASAのケイト・ルービンスさんと、ロシアの国営宇宙公社ロスコスモスのセルゲイ・リジコフさん、セルゲイ・クド=スヴェルチコフさんが滞在している。地球から410キロ離れたISSの滞在者が7人になることで、特殊な微小重力環境で実施される科学実験が3倍に増える。

  スペースXの乗組員らは、少なくとも4回の船外活動を予定している。うち1回では、イギリスで開発された通信機器をISSのヨーロッパ研究モジュールに設置する。ISSの宇宙飛行士らが地球の科学者や家族らと、ブロードバンドの速度で通信できるようになるという。
  スペースXはNASAと30億ドル超の契約を交わしており、宇宙飛行士の「タクシー」サービスの開発と試験を進め、実施するとしている。
  その一環として、今年5月には宇宙飛行士2人をISSに運び、無事に帰還させるデモ飛行を実施した。
  契約には、6回の運用レベルの飛行も含まれており、今回はその最初となる。
  NASAは米ボーイングとも同様の契約を結んでいる。同社の開発は、スペースXより1年以上遅れを取っている。

  NASAは宇宙飛行を外注することで、数十億ドルを節約できるとしている。節約した分は、月と火星の探査に当てる意向だ。
  スペースXは、米電気自動車メーカー、テスラの最高経営責任者(CEO)を務める起業家のイーロン・マスク氏が設立した。



2020.5.31-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200531/k10012452151000.html
米 民間宇宙船「クルードラゴン」宇宙飛行士乗せ打ち上げ成功

  アメリカの民間企業が開発した宇宙船が、日本時間の31日朝早く初めて宇宙飛行士を乗せて国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられました宇宙船は予定どおり切り離されて打ち上げは成功し、31日夜遅く、国際宇宙ステーションに到着する予定です。
  アメリカが自国の宇宙船で国際宇宙ステーションに飛行士を送り込むのはスペースシャトルの退役以来9年ぶりで、宇宙開発に民間企業が本格的に参入する時代の象徴として注目されています。
  打ち上げられたのは、アメリカの民間企業「スペースX」が開発した宇宙船、「クルードラゴン」です。
  アメリカ人宇宙飛行士2人を乗せ、日本時間の31日午前4時22分にアメリカ・フロリダ州からロケットで打ち上げられ、クルードラゴンは予定した軌道に投入されて打ち上げは成功しました。
  クルードラゴンは31日午後11時半ごろに国際宇宙ステーションに到着する予定です。NASA=アメリカ航空宇宙局は、民間企業の有人宇宙船の開発を後押ししていて、今回は「クルードラゴン」の最後の試験として、初めて宇宙飛行士を乗せて宇宙ステーションにドッキングし、その後、地球に帰還します。
  試験に成功すると、「クルードラゴン」は運用段階に入り、その1号機には日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが搭乗する予定で、ことし8月30日の打ち上げを目標に準備が進められています。
  民間の有人宇宙船が宇宙ステーションに到着するのは初めてで、民間企業が宇宙開発に本格的に参入する時代の象徴として注目されています。
  また、アメリカが自国の宇宙船で宇宙ステーションに飛行士を送り込むのはスペースシャトルの退役以来9年ぶりで、運用段階に入るとアメリカはロシアの宇宙船に頼らず飛行士を運ぶことができるようになります。
NASA長官「帰還まで祝福を待ちたい」
  NASA=アメリカ航空宇宙局のブライデンスタイン長官は、宇宙船がロケットから切り離されたのを確認し、「新型コロナウイルスの流行の中という大変な時期だが、われわれが力を合わせれば何を成し遂げることができるのか、思い起こさせてくれた」と述べました。
  そのうえで「これまでの道のりは長かったが、ようやく安どのため息が出た。ただ、2人の宇宙飛行士が無事に帰還するまで、祝福するのは待ちたい」と述べました。
トランプ大統領「アメリカの新たな時代」
  南部・フロリダ州のケネディ宇宙センターで打ち上げを見守ったトランプ大統領は、NASA=アメリカ航空宇宙局や宇宙船を開発した「スペースX」のスタッフを前に演説し、「われわれがここに集ったのは、新しい宇宙船の打ち上げを祝うためだけではなく、アメリカの宇宙への栄光ある帰還を祝うためだ。今回の打ち上げによってアメリカの野心の新たな時代が始まった」と成功を誇示しました。
  そして、「近い将来、火星にも着陸し、想像もつかない強力な兵器を持つことになる。いまや世界の羨望の的だ。ロケットや飛行機などに巨額の投資をし、新たに宇宙軍も創設した。アメリカは月に人類を送り出した自信と想像力を取り戻している」と述べ、就任以来、NASAの宇宙開発を後押ししてきたのは自分だと強調しました。
  そのうえで「アメリカは再び世界のリーダーの座を取り戻した。宇宙で2番に甘んじていたら地球上で1番にはなれない」と述べ、宇宙開発で優位に立ち続ける考えを示しました。
「クルードラゴン」
  クルードラゴンは、NASA=アメリカ航空宇宙局の支援を受けたアメリカの民間企業、「スペースXが開発したもので、宇宙飛行士を乗せて国際宇宙ステーションに向かう初めての民間の宇宙船です。
  全長8メートル余りで直径は4メートルあり、円すい形をした「カプセル」と円柱形の「トランク」の2つの部分からできています。通常は宇宙飛行士4人が乗り込みますが、最大で7人乗ることができます。
  船内には3つの窓があり、タッチパネルで船の操作を行うほか、流線型のデザインを取り入れた先進的な作りになっているということです。
  クルードラゴンには小型のエンジンがあり、ロケットから分離された後、このエンジンを噴射して自動で国際宇宙ステーションにドッキングでき、緊急時には手動でドッキングすることもできます。
   また、トランクには太陽電池パネルや物資が収納されます。地球に帰還する際には、カプセルはトランクと分離されて大気圏に突入し、パラシュートを開いてフロリダ州沖の大西洋に着水します。
  スペースXの船が回収して、宇宙飛行士とカプセルはフロリダ州のケープ・カナベラル空軍基地に戻る計画です
  「クルードラゴン」は国際宇宙ステーションに20回物資を運んだ実績がある無人の貨物輸送用の宇宙船「ドラゴン」をベースに開発されています。
  去年3月、無人の状態で行われた「クルードラゴン」のテストでは、実際に打ち上げて、国際宇宙ステーションに自動でドッキングし、大気圏に突入して帰還していて、大きなトラブルなく終了しています。
  また、ことし1月には、カプセルがロケットから緊急脱出する試験も成功させました。今回の試験飛行が成功して運用段階に入ると、その1号機には日本人宇宙飛行士、野口聡一さんが搭乗することになっています。
「ファルコン9」
  「ファルコン9」は、アメリカの民間企業、「スペースX」が開発した大型ロケットで、クルードラゴンを宇宙空間に打ち上げます。
  全長70メートル、直径3.7メートルの2段式で、燃料は灯油の一種であるケロシンを液体酸素で燃焼させる方式で、1段目には9つのエンジンが取り付けられています。
  2010年の初打ち上げから少しずつ改良を積み重ねてきていて、現在のファルコン9は、国際宇宙ステーションがある軌道には、最大で20トン余りを打ち上げる能力があります。
  国際宇宙ステーションに物資を運んだ初めての民間のロケットで、これまでに、無人の輸送用の宇宙船、ドラゴンを搭載して、20回国際宇宙ステーションに物資を運んでいます。
  商業衛星の打ち上げなども含めると、先月7日の時点で、83回打ち上げを行い、81回成功、2回失敗していて、打ち上げの成功率はおよそ98%です。
  2回の失敗のうち、2015年6月の事故では、国際宇宙ステーションに届ける物資を積んでいましたが、打ち上げから2分後にロケットが爆発していて、「スペースX」は2段目の燃料タンクに異常がおきたとしています。2016年9月には打ち上げ2日前にエンジンの燃焼試験の途中で燃料タンクが破損して爆発し、搭載していた人工衛星が失われています。
  ファルコン9は当初から有人宇宙飛行にも利用することを念頭に開発が進められてきましたが、実際に人を乗せて打ち上げるのは今回が初めてで、成功すれば国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り込んだ初めての民間のロケットになります。
  そして、打ち上げ後に、1段目のロケットはエンジンを噴射して着陸し、再使用できるこれまでにないシステムを本格的なロケットとしては初めて実用化しています。
  有人の打ち上げでは再使用したロケットは使いませんが、こうした新しい技術を積極的に取り込んで開発が行われてきました。
  物資の輸送ではこれまで、この再使用可能であることをいかして打ち上げコストを大幅に低くおさえ、商業衛星の打ち上げなどを受注して存在感を発揮してきました。
  商業衛星の打ち上げビジネスではアメリカのコンサルタント会社の調査によりますと、おととし(2018年)世界の商業衛星の打ち上げ市場の58%を占めるなど、打ち上げ経験を積んでいます。
「スペースX」
  「スペースX」創業者は、IT業界で成功し、電気自動車メーカー、「テスラ」を率いるイーロン・マスク氏で、2002年に創業され、本社はアメリカ・カリフォルニア州にあります。
  当初は実績が少なくロケットの打ち上げに失敗するなど事業が難航することもありましたが、NASA=アメリカ航空宇宙局からロケットエンジンの技術を学ぶなどしてきました。
  そして、創業から10年の2012年、民間企業として初めて無人の宇宙船で国際宇宙ステーションに物資を輸送することに成功しました。
  その後も、打ち上げコストを大幅に下げようと、打ち上げたロケットを着陸させ、エンジンなどを再使用する新しい技術の実用化に成功して実績を積み重ねていて、今では宇宙産業の有力な企業となっています。
  「スペースX」は、2018年に民間人を宇宙船に乗せて月を周回する計画を発表し、最初の搭乗者として日本人が公表され、話題を集めました。
民間宇宙船 背景と意義
  アメリカは地球周辺の宇宙空間は民間主体の利用を促し、NASAは月や火星など、より遠い宇宙開発に力を注ぐことでコストをおさえながら宇宙開発全体の主導権を取り戻すことを目指しています。
  民間企業の有人宇宙船が運用段階に入れば、これまでなかなか実現しなかった宇宙旅行などが加速され、宇宙の利用方法が大きく変わると見られています。
  宇宙開発はこれまで国家が威信をかけて行ってきていて、アメリカは2011年までの30年間、有人宇宙飛行の要としてスペースシャトルを運用しました。
  しかし、2度の大きな事故の影響で1回の打ち上げが500億円と言われるほどコストが高騰し、退役することになりました。
  国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送る手段はロシアの宇宙船、ソユーズだけとなり、アメリカの宇宙飛行士もロシア側に1人当たり数十億円の費用を支払って、ソユーズに搭乗していました。
  そうした中で、国際宇宙ステーションなど低軌道の宇宙空間は、民間企業が新たなビジネスの場として利用する戦略をたて、NASA=アメリカ航空宇宙局は「コマーシャルクループログラム」というこれまでにない計画を始めました。
  NASAは有人宇宙船を開発するために民間企業の「スペースX」と「ボーイング」の2社を選び、企業が互いに競い合うことで、低コストの宇宙船を開発し、運用することを目指しています。
  NASAはその顧客となって宇宙船を利用します。「スペースX」には2014年の選定時に日本円でおよそ2800億円の資金を提供して宇宙船の開発を支援し、今回の試験飛行のほかに運用段階の飛行を2回行うという契約を交わしています。
  経験が少ないベンチャー企業だった「スペースX」は、実績を重ねて、今では宇宙開発の有力な企業に成長しています。民間の宇宙船が運用段階に入れば、これまでなかなか進まなかった宇宙旅行ビジネスなどが加速すると見られます。
  NASAは宇宙ステーションの商業利用も進めていて、宇宙の利用のしかたが大きく変わるきっかけになるとみられています。また、アメリカが自国の宇宙船で国際宇宙ステーションに飛行士を送り込むのはスペースシャトルの退役以来9年ぶりで、運用段階に入ると、ロシアの宇宙船、ソユーズに頼らず宇宙飛行士を運ぶことができるようになります。
  中国が地球を周回する独自の宇宙ステーションの建設を計画する中で、アメリカは、低軌道については民間企業が主体となって利用し、月や火星などより遠い宇宙開発はNASAが力を注ぐことで、宇宙開発全体の主導権を取り戻すことを目指しています。
  NASAは今回の打ち上げを「LAUNCH AMERICA」、つまり「アメリカ発進」といった趣旨のキャッチフレーズでアピールしています。
宇宙飛行士『エンデバー』と命名
  宇宙船に搭乗している2人のアメリカ人宇宙飛行士は、打ち上げからおよそ3時間後に船内と地上を結んで中継を行い、宇宙船に名称をつけたことを語るなど楽しそうに過ごす2人の姿を伝えました。
  この中ではダグラス・ハーリー宇宙飛行士が「まず話したいのは、カプセルの命名です。記号ではなくもっといい名前をつけたい。『カプセル・エンデバー』にようこそ」と話し、今回の宇宙船を、2人が搭乗したスペースシャトルにも使われ、「努力」を意味する英語をとってエンデバー』と命名したことを語りました。
  また、ロバート・ベンケン宇宙飛行士は「無重力空間にいることを皆さんにお見せすることができ、とてもうれしいです」と話し、宇宙船の中で回転してみせました。
  そして、恐竜のおもちゃをだして、「これは、私たちの息子が大好きな恐竜のおもちゃです。息子たちは自分たちのおもちゃが一緒に浮いているのを見て、とても興奮していると思います」と楽しそうに話していました。
  そのうえで、「私たちは今回の試験飛行に参加できたことを誇りに思っていて、すばらしい経験です」と述べ、宇宙船の中で楽しそうに過ごす2人の様子を伝えていました。
民間企業のCEO「ほかの惑星に進出させる第一歩に」
  アメリカで民間企業として初めて有人の宇宙船の打ち上げに成功した、宇宙開発ベンチャー企業、スペースXのCEO、イーロン・マスク氏は、「人類をほかの惑星に進出させる第一歩になることを願っている」と述べました。
  今回打ち上げられた宇宙船やロケットはいずれもスペースXが開発したもので、打ち上げ後の記者会見でイーロン・マスク氏は、「18年間、この目標のために力を尽くしてきた。すばらしいことだが、こうした打ち上げをもっと繰り返して、日常的な出来事にしなくてはいけないという仕事が残っている」と述べました。
  そして「これが、人類をほかの惑星に進出させる第一歩になることを願っている。何百万もの人々が別の惑星に旅するまでには途方もない技術の進歩が必要だが、きょうの打ち上げによってその目標の実現がより現実的になった」と述べ、人類が自由に宇宙を旅することができるようになるという将来像に近づいたという認識を示しました。
  また、NASA=アメリカ航空宇宙局のブライデンスタイン長官は、今後の宇宙開発の在り方について「月への貨物輸送や、今後の月や火星の探査計画も、民間企業の参加でコストを下げることができるだろう。さらに、スペースXをはじめとした民間企業が、NASA以外にも顧客を開拓することが月や火星への定住の実現につながるだろう」と述べました。
専門家「宇宙開発の在り方変える象徴的な出来事」
  今回の打ち上げについて、アメリカ・スミソニアン航空宇宙博物館のマーガレット・ワイトキャンプ博士は、「国家機関が主導して民間に発注するというこれまでの宇宙開発が、民間が宇宙船を開発して運用まで担うという在り方に変わっていく象徴的な出来事だ」と評価しています。
  ワイトキャンプ博士は「鉄道や飛行機が発展・普及する過程をみても、有人宇宙飛行の開発は、政府から民間企業に移行していくだろう。民間企業にとっても宇宙開発に参入する経済的な動機が高まる」としたうえで、「今後、民間人が宇宙に行く機会はどんどん増え、宇宙空間の利用方法についてもさまざまなアイデアが出てくる。無重力状態を利用した映画の撮影も現実のものになるかもしれない」と話しています。
宇宙飛行士 野口聡一さん「行きたい人が宇宙に行く時代に」
  日本人宇宙飛行士の野口聡一さんは打ち上げの成功を受けてNHKの取材に応じ、「すばらしい1日でした。搭乗している宇宙飛行士やNASA、それにスペースXのスタッフが非常に落ち着いていたのが印象的で、減点のしようがない打ち上げでした」と振り返りました。
  そのうえで、民間企業の宇宙開発が本格化するとみられることについては、「宇宙観光や宇宙ホテルなどさまざまな利用方法が出てくると思います。航空機と同じように研究目的で作られた機体が民間の利用で自由に飛び回り、市場が広がったが、宇宙開発も同じように発展するのではないかと思っています。宇宙に行きたい人は行く時代になり、プロの宇宙飛行士は安全確保に関わることになっていくと思います」と話し、宇宙が一般の人にとってより身近な存在になるとの見通しを示しました。
  そして、日本の宇宙開発については「日本の民間企業も実績にかかわらずフットワークの軽さや新しい工夫、それにリーダーがいれば世界的な企業に太刀打ちできる時代になったと思います。日本の物作りを支えている信頼性や安全性を生かした宇宙開発に期待したいです」とエールを送りました。
  そして、今回の試験飛行に成功すれば、野口さんが搭乗する運用1号機の打ち上げが8月30日を目標に準備が進められていることについて「こんなに次は自分だということを意識させられたことはこの10年間なかったので、気分を引き締めてあすから努力していきたい。見ている人に興奮と感動が伝わるような打ち上げになればいいです」と意気込みを語りました。
宇宙飛行士 土井隆雄さん「打ち上げ 今回はより感動した」
  アメリカのスペースシャトルで2回の宇宙飛行の経験がある日本人宇宙飛行士で京都大学特定教授の土井隆雄さんは、今回の打ち上げについて、「宇宙の商業化を始める打ち上げで、すべてがスムーズに進行し、これまで宇宙船の打ち上げは何回も見てきたがその中でも感動するものでした。より多くの人が安く宇宙に行けるようになり、宇宙にホテルができたり、工場ができたりと商業的な利用が始まるようになることが今回のいちばんの目的です。多くの人が宇宙に行ける道が開かれるので、安全にすべてが進行することがいちばんだが、乗り心地も大切です。宇宙飛行士には乗り心地や新しい技術が機能しているか確認してほしい点だと思う」と感想や思いを語りました。
  また土井さんは2008年に、今回、民間の宇宙船に搭乗したロバート・ベンケン宇宙飛行士と一緒にスペースシャトルに搭乗していて、「当時、一緒に搭乗した宇宙飛行士の中でいちばん若かったが、冷静沈着で的確に仕事をこなしていた。その一方で、笑顔で『ドイサン』と話かけてくるのが印象的で、食事の準備もよく手伝ってくれた。日本食も好きで特に『いなりずし』が大好きだった。NASAの宇宙飛行士やスタッフからの信頼が厚く、民間の宇宙船の開発計画にも長く携わってきたので、きょうの打ち上げにはまさに適任者だ」と話しました。


2020.5.27-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200527/k10012447341000.html
米の民間有人宇宙船 あす早朝 打ち上げ 米では9年ぶり

  アメリカの民間企業が開発した宇宙船が、日本時間の28日早朝、初めて宇宙飛行士を乗せ、国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられます。アメリカが自国の宇宙船で国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り込むのはスペースシャトルの退役以来9年ぶりで、宇宙開発に民間企業が本格的に参入する時代の象徴として注目されています。
  打ち上げられるのは、アメリカの民間企業「スペースX」が開発した宇宙船、「クルードラゴン」です。
  今回、初めてアメリカ人宇宙飛行士2人を乗せ、日本時間の28日午前5時半過ぎにアメリカ フロリダ州から「ファルコン9」ロケットで国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられます。
  アメリカは、NASA=アメリカ航空宇宙局が民間企業の「スペースX」と「ボーイング」の2社を選んで資金を提供し、それぞれの企業が開発する宇宙船で国際宇宙ステーョンに宇宙飛行士を送り込む計画を進めています。
  今回は「クルードラゴンの最後の試験として、実際に宇宙飛行士を乗せて国際宇宙ステーションにドッキングし、地球に帰還するまでの試験を行います。
  試験に成功すると、「クルードラゴン」は運用段階に入り、その1号機には日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが搭乗する予定で、ことし8月30日の打ち上げを目標に準備が進められています。
  民間の有人宇宙船が国際宇宙ステーションを目指すのは初めてで、民間企業が宇宙開発に本格的に参入する時代の象徴として注目されています。
  また、アメリカが自国の宇宙船で国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り込むのはスペースシャトルの退役以来9年ぶりで、運用段階に入ると、ロシアの宇宙船、ソユーズに頼らず宇宙飛行士を運ぶことができるようになります。
  NASAは今回の打ち上げを「LAUNCH AMERICA」と、「発射」や「ビジネスなどの立ち上げ」を意味することばを使って、新しい宇宙開発の時代の到来をアピールしています。
専門家「民間企業の宇宙開発への本格参入の象徴に」
  宇宙政策に詳しい笹川平和財団の角南篤常務理事は今回の打ち上げについて、「民間企業が有人宇宙飛行に参入する大きなハードルを乗り越えるものだ。民間企業や、ベンチャー企業が宇宙開発に本格参入する時代の象徴で、人類の歴史に残る出来事だと思い期待をもって見ています」とその意義を語りました。
  そして、「民間と政府がうまく連携することで新たな宇宙開発の仕組みを作っていくことが1つの主流になると思います。日本は日本のやり方で新しい民間活用の仕組みを取り入れ、日本の民間企業に宇宙ビジネスへの参入を促すきっかけになると思います」と期待していました。







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