医療問題-1


2025.09.22-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20250822-7HG6W232YZNHHAW5VRTVZKCOFE/
体内から寄生虫1キロ超、4歳女児が死亡 インドネシアで衝撃広がる 土遊び中に感染か

  インドネシア西ジャワ州の集落で、寄生虫に感染した女児(4)が死亡し、体から大量の回虫が摘出され、衝撃が広がっている。病院が推計した回虫の量は1キロ超。地元メディアが22日までに報じた。

  女児は7月13日に意識不明の状態で病院へ搬送され、9日後に死亡した。当初は結核が疑われたが、鼻から生きた回虫が見つかった。病院によると、土遊び中に感染した可能性があり、回虫は脳や肺にも広がっていた
  治療を支援した地元団体が今月経緯を公表。貧困家庭で、無償医療を受けるのに必要な身分証明書などがなかった。西ジャワ州知事は19日に謝罪、地域の福祉支援が機能せず早期に気づけなかったと指摘した。保健当局は、定期的な手洗いなど衛生的な習慣を身につけるよう呼びかけている(共同)


2025.08.24-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250824-UMK2ISB7IRLHTCXYN724XNBQLE/
がんを血液や尿から見つける「リキッドバイオプシー」 高精度で負担少ない方法として期待
(松田麻希)

  血液や尿といった体液から、がんなどのさまざまな疾患を高精度に発見できる新たな検査方法として、「リキッドバイオプシー」の研究が広がっている患者の負担が軽くて検査を受けやすく、がんの早期発見や治療につながる切り札として期待され、欧米では臨床試験が進む。

  リキッドバイオプシーは、リキッド(液体)とバイオプシー(生体検査=生検)を合わせた言葉で、血液や尿、喀痰(かくたん)などから病気の痕跡を見つける。特に血液からがん由来の微量の物質を検出し、その物質が持つ遺伝子の異常などを調べる研究が盛んだ。
  従来の生検では内視鏡や切除などで病変の組織を採取し、顕微鏡で観察する。これに対し、リキッドバイオプシーは採血や採尿で検体が得られるため、患者の負担が比較的小さい。生検では病変の部位によっては組織が採れないこともあるが、全身をめぐる血液なら、がん由来の物質を捉えられる可能性がある。
  英オックスフォード大・腫瘍部門の中村能章(よしあき)客員研究員によると、がんのリキッドバイオプシーの研究は2010年頃から爆発的に増えた。背景には、遺伝子の異常がどのようにがんの発生に関わっているか理解が進んだことがある。がんの有無や種類を知るために何を調べればよいかが分かってきたわけだ。
  血中を漂うがん由来の物質は非常に微量だが、それを検出して解析する技術が目覚ましく発展したことも大きい。
  これまでは進行がんの最適な治療方法を探ったり、手術後の再発リスクを予測したりといった目的で実用化の動きが進んできたが、がんの早期発見への応用も今後進みそうだ。英国や米国では、既に早期発見を目的とした大規模な臨床試験が実施されている。
  日本で推奨されているがん検診は▽胃がん▽大腸がん▽肺がん▽乳がん▽子宮頸がん-の5つにとどまり、日本人のがんによる死亡の半数以上は、これ以外のがんによる。推奨の対象外であるがんも早期発見できれば、死者数を減らせる可能性がある。中村氏は「1回の採血で、さまざまながんを見つけられるリキッドバイオプシーの実現に向け、世界中で開発が進められている」と話す。
  一方、大阪大の谷内田(やちだ)真一教授らの研究チームは、胃がん検診の際に膵臓から分泌される「膵液」を採取して膵がんを早期発見する技術を開発し、今年2月に発表した。膵がんは日本での患者数が増えているが、効果の高い抗がん剤が少なく治療が難しい。手術による早期治療が重要だが、早期発見できる高精度な検査法がなかった。
  らに膵がんでは、血液から変異を検出できるのはかなり進行した患者であるのが課題だった。そこでチームは、膵がんのほとんどが膵液の通り道である「膵管」から始まる点に着目。胃がん検診で胃カメラを行う際、膵管の出口となる十二指腸乳頭部を生理食塩水で洗浄し、膵液を含む液体を回収して遺伝子変異を検出する方法を開発した。液体は、通常の胃カメラに付け足した専用の器具により1、2分ほどで回収できるという。

  谷内田教授は「2年に1回の胃がん検診が推奨され、胃カメラが普及している日本だからこそできる」と指摘。膵がんの克服を目指し、まずは膵がんになった家族がいるなどハイリスクを抱える人を対象に、リキッドバイオプシーを行う研究を進めている。
量子の力で微量の目印も見逃さない
  琵琶湖に落とした塩1粒に相当する微量な分子を検出できる、超高感度の次世代センサーを使ったリキッドバイオプシーの研究も進んでいる。
  電子や原子といった微小な粒子の総称である「量子」に特有の性質を用いた「量子センサー」は、感度が従来センサーの10万倍とされ、病気の目印となる分子が非常に微量でも発見できるという。
  量子は、周囲の環境や物質がわずかに変わっただけでも影響を受けて変化しやすい。つまり、量子の変化を計測すればセンサーとして機能する。センサーの材料は、緑色の光を当てると赤く光る特殊なダイヤモンドが主流。光り方の変化から量子の状態を調べ、遺伝子の変異といった、がんに関連する物質を血中から検知する。量子科学技術研究開発機構の五十嵐龍治グループリーダーは「こうした変異を発見することが、量子センサーは非常に得意だ」と話す。
  日常的な診療現場や勤務先での健康診断などで採血し、検査ができる装置の実現に向けて研究開発が進む。
  また、量子センサーは細胞1個の温度を測るなど、生体内の微小な現象を精密に調べられる悪性度が高いがん細胞のふるまいや発がんプロセスの詳細な解明などを通じ、早期の発見や治療、予防につながる期待もある
(松田麻希)


【専門家が解説】睡眠時の唾液誤嚥が起こる原因とは?高齢者に多い誤嚥性肺炎の対策を解説

一般社団法人 日本リハビリテーション栄養学会著者新田 実
専門分野:誤嚥性肺炎, 口腔ケア大学病院でリハビリテーション科医としての基本を学ぶ


  その後、市中病院や回復期病棟での勤務を経験する中で、誤嚥性肺炎予防や摂食嚥下診療の重要性に気がつく。現在はブログ「誤嚥性肺炎.com」やツイッターを通して誤嚥性肺炎予防や摂食嚥下についての情報を、医療従事者以外の方にも分かりやすく発信しています。

こんにちは、リハビリテーション科医の新田実です。
今回は「誤嚥性肺炎」について、よくある勘違いなどを踏まえながら、ぜひ知っておいていただきたい基本知識について解説していこうと思います。
誤多いことはなんとなくイメージできると思いますが、実際はどれくらいの割合の方が誤嚥性肺炎を発症しているのでしょうか。肺炎入院患者における誤嚥性肺炎および、非誤嚥性肺炎の年齢別の割合を報告した文献("Teramoto et al,J Am Geriatr Soc . 2008 Mar;56(3):577-9.")によると、50歳以上から誤嚥性肺炎を発症する人の割合が増加。 70歳以上になると、肺炎による入院患者の70%以上が誤嚥性肺炎とのデータが報告されています。
誤嚥性肺炎は高齢者に多い
  誤嚥性肺炎が高齢者に多いことはなんとなくイメージできると思いますが、実際はどれくらいの割合の方が誤嚥性肺炎を発症しているのでしょうか。肺炎入院患者における誤嚥性肺炎および、非誤嚥性肺炎の年齢別の割合を報告した文献("Teramoto et al,J Am Geriatr Soc . 2008 Mar;56(3):577-9.")によると、50歳以上から誤嚥性肺炎を発症する人の割合が増加。 70歳以上になると、肺炎による入院患者の70%以上が誤嚥性肺炎とのデータが報告されています。

  誤嚥性肺炎で勘違いしやすい3つのこと誤嚥性肺炎に関して、間違えやすい以下の3つの勘違いがあります。それぞれ深く説明していきますね。
    1:誤嚥性肺炎の原因の多くは食事中の誤嚥ではない誤嚥性肺炎の原因といえば食事中の食べものによる誤嚥だと思っている方が多いと思います。しかし、誤嚥性肺炎の原因として多いのは「食事中の食べものの誤嚥ではなく、食事中以外の唾液の誤嚥である」ことはまだ広く知られていません。もちろん食事中の食べものの誤嚥によっても誤嚥性肺炎は発症しますが、頻度として多いのは食事中以外の唾液の誤嚥。特に就寝中の唾液誤嚥です。
    就寝中は健常な若者の場合でもごく少量の唾液(0.01〜0.2ml)を誤嚥していることがわかっています。さらに約50%の方は唾液の「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん:むせない誤嚥)」が起こっているとも言われています。嚥下(えんげ)機能が低下した方や高齢者の場合では、さらに多くの量・頻度で就寝中に唾液を誤嚥していることが予想されます。唾液には1ml中に約1億個の口腔内細菌が含まれていると言われおり、それをダイレクトに肺に誤嚥することで誤嚥性肺炎を発症してしまうわけです。
2:胃ろうの方も誤嚥する
  よく誤嚥性肺炎は食事中の食べものによって起こるというイメージが強いため、胃ろう(栄養を胃から直接注入する経管栄養法)を使っている患者さんは「口から食事をしていないので誤嚥性肺炎を発症しない」と思っている方がいますが、まったくの勘違いです。
  口から食事をしていない胃ろうを使っている患者さんも誤嚥性肺炎を発症します。さらに、胃ろうを使っているということは、それだけ嚥下機能が低下しているということ。つまり、就寝中の唾液誤嚥のリスクは一般の方より高くなっており、誤嚥性肺炎を発症するリスクも高いのです。
  胃ろうを使っている方であっても、嚥下機能が低下して口から食事をしていないからこそ、口腔ケアで口腔内の細菌を減らすことが大切なのです。
  繰り返しになりますが、誤嚥性肺炎の原因の多くは食事中以外の唾液誤嚥が原因。口腔ケアや、側臥位(そくがい:横を向いて寝た状態)で寝ることが、誤嚥性肺炎予防においてとても重要なのです。
3:誤嚥したら必ず誤嚥性肺炎を発症するわけではない
  「先程の話と矛盾するのではないか」と思う方もいるかも知れませんが、誤嚥をしても必ず誤嚥性肺炎を発症するわけではありません。理由は、人間の体には「免疫機能」と言って外部から細菌やウイルスなどが侵入した際に体を守る機能があるためです。食事中の食物誤嚥や就寝中の唾液誤嚥が起こってしまったとしても、体の免疫機能が正常に働き侵入してきた細菌をやっつけたり、痰として排出することができれば誤嚥性肺炎は発症しません。
  食物や唾液を誤嚥しないようにすることも大切です。しかし誤嚥性予防では細菌を誤嚥した際に侵入してきた細菌に負けない免疫機能を日頃から保つことや、細菌を外部へ排出する機能である咳嗽力(がいそうりょく:咳をする力)を維持することが大切です。
  そのためには、日頃からしっかりと栄養を取り適度な運動をすることで筋力体力を維持することや、咳嗽力が落ちないように姿勢を整えたり呼吸筋を鍛えるリハビリを行うことも有用でしょう。たばこ(喫煙)は免疫機能や呼吸機能の低下をもたらしますので、誤嚥性肺炎予防のためには控えた方が望ましいです。
  体の免疫機能や咳嗽力が低下している場合は誤嚥性肺炎を発症しやすくなってしまうので、日々の生活で改善できるところはしっかりと改善して誤嚥性肺炎予防につなげましょう。

誤嚥してもむせない「不顕性誤嚥」
  前述した「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」という言葉をはじめて聞く方もいるかもしれませんが、不顕性誤嚥とは誤嚥しても「むせない誤嚥」のことを指します。「誤嚥したら必ずむせるはず」だと思うかも知れませんが、咽喉頭(いんこうとう:のど)の感覚が低下した場合は誤嚥してもむせません。
  健常な若い方の場合は、咽喉頭の感覚の低下により誤嚥してもむせないということはほとんどありません。しかし、高齢の方や特定の疾患(脳卒中やパーキンソン病など)で咽喉頭の感覚が低下している場合は、誤嚥してもむせない場合があります。そういった場合には、食事中に誤嚥しているのにどんどん食事を進めてしまい、食事が終わった頃には呼吸が苦しくなってしまうということもあるのです。
  さらに、先程説明した就寝中の唾液誤嚥はこの不顕性誤嚥になりやすく、就寝中に気づかない間に唾液を誤嚥してしまい誤嚥性肺炎の発症につながってしまうのです。誤嚥性肺炎の原因として就寝中の唾液誤嚥についての認識が広まらないのは、この不顕性誤嚥が原因のために気づかれにくいという側面もあると思います。
  就寝中に自分の咳で目覚めてしまう方や朝起きたときに痰絡みの多い方は、就寝中に不顕性誤嚥(唾液誤嚥)をしている可能性が高いので、誤嚥性肺炎に注意しましょう。具体的な対策としては、前述したように口腔ケアで口腔内細菌を減らすことや、寝る姿勢を側臥位(横向き)にして唾液誤嚥のリスクを減らすことなどが挙げられます。
肺炎球菌ワクチンは誤嚥性肺炎予防に一定の効果がある
  「肺炎球菌性肺炎」と誤嚥性肺炎はまったく異なる肺炎なので、肺炎球菌ワクチンは誤嚥性肺炎予防には効果がないと思っている方もいますが、肺炎球菌ワクチンは誤嚥性肺炎予防にも一定の効果があります。それは、誤嚥性肺炎の起因菌(誤嚥性肺炎の原因となる細菌)に肺炎球菌が約20%程度含まれるからです。
  つまり、誤嚥性肺炎の約20%を占める肺炎球菌が起因菌となる誤嚥性肺炎に対しては、その重症化予防においては一定の効果があると言えるので肺炎球菌ワクチンは誤嚥性肺炎予防にまったく効果がないという訳ではありません。リスクの高い高齢者の方は65歳以上から国の助成制度などもありますので、それらをうまく利用しながら肺炎球菌ワクチンの接種を受けることをお奨めします。
  特に最近では新型コロナ感染症が流行しており、新型コロナ感染症にかかった際に免疫機能が低下して肺炎球菌性肺炎を混合感染(ウイルス性肺炎と細菌性肺炎を同時に発症)してしまうこともありますので、肺炎球菌ワクチンの接種がさらに推奨されます。
  誤嚥性肺炎にまつわる基本知識いかがでしたでしょうか。知らなかった知識や勘違いしていた知識があれば、この機会にしっかり覚えていただければと思います。


2025.06.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250605-5Q6CHVCNRBN75AFH7SFK7L23UA/
出生前診断で「異常なし」、生まれた子はダウン症 30代夫婦が病院に起こした訴訟の行方
(藤木祥平)

  出生前診断で異常が見つからなかったのに、子供はダウン症だった。30代の夫婦は心の準備ができていなかったためショックを受けたが、実は、大阪市内の病院で受けた検査自体がダウン症の有無を調べるのには適さないものだった夫婦は病院側の説明に問題があったとして訴訟を提起。病院内という〝密室〟での会話内容が争点になった。

17週で超音波検査受け
  夫婦はオーストラリア人で、医師との会話は英語で行われた。妻は妊娠13週から同病院を受診。当時36歳で高齢出産になるため、胎児に染色体異常がないか、強い不安を抱いていたという。
  「胎児の異常の検査はできますか」。17週の診察でこう質問した妻に対し、担当医師は精密な超音波検査を提案。妻は翌週この検査を受ける際に、検査医師にダウン症への不安を相談したが、検査医師は結果を見て「異常は見当たらず、ダウン症の特徴もない」と説明した。しかし、その後生まれた男の子はダウン症と診断された
  超音波検査には、全妊婦が受ける通常検査と希望者向けの精密な胎児超音波検査があり、後者を11~13週に行えば、うなじ付近のむくみなどからダウン症を含む染色体異常の確率を算出できる。だが、それ以降の時期では精密検査も顔や体などの形の異常を見つけるのが主な目的となり、染色体異常は分からない
  夫婦は医師らからこうした説明を聞いておらず、異常を知った上で出生に備える機会を失ったなどと訴え、病院側に対し、計1100万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
問われたインフォームドコンセント
  夫婦がどういう検査を求め、医師らが何と説明したのか。双方の主張は大きく食い違った。
  夫婦側は17週の診察時点でダウン症の懸念を医師に伝え、染色体異常の有無を確認する「genetic test(遺伝学的検査)」を受けたいと希望したと主張。この時期の超音波検査がこの希望に合致しないとは知らなかった、と強調した。さらに検査医師が「(検査は)99%正確」と述べたとし、確定診断ができる羊水検査についての情報提供がなかったと訴えた。
  一方、病院側は遺伝学的検査の希望は「聞いていない」と反論し、検査医師の発言も否定ダウン症への懸念を知ったのは検査時が初めてだったとした上で、各場面で必要な説明は行っており、医療行為の内容や目的を十分に説明し、患者が理解した上で同意する「インフォームドコンセント」は適切に行われていた、と主張した。
判決「注意義務違反ない」
  やりとりは主に口頭で行われ、客観的な証拠が乏しい中、5月の地裁判決は病院側の主張を全面的に認め、夫婦側の請求を退けた
  判決は、懸念を伝えたのに検査内容が説明されなかったという状況や、「99%正確」という医学的知見に反した発言は、事実というには「不自然」と指摘。立証責任を負う夫婦側の主張を裏付ける「的確な証拠はない」とした。
  対して医師らの証言には「信用性を否定すべき事情はない」と判断。検査医師が行った「検査結果は(流産リスクがある)羊水検査を強く勧めるものではない」という説明の意味を、妻が「誤解した可能性がある」とは認めたが、病院側に「注意義務違反があったとはいえない」と結論付けた
  夫婦側は判決を不服として、大阪高裁に控訴している。
相談支援の充実必要
  出生前診断を巡っては近年、超音波検査だけでなく、妊婦の血液を用い、より高い精度でダウン症を含む染色体異常を調べられる「新出生前診断(NIPT)」の実施が広がっている
  だが、こうした傾向には安易な「命の選別」につながるとの懸念も根強い。だからこそ検査を受ける目的、結果にどう向き合うかを熟考した上で臨むことが求められる
  NIPTを行う医療機関の乱立状態を受け、日本医学会は令和4年7月に医療機関の認証制度をスタート。5年度には4万3136件の検査を行った。年齢別では30代前半が27・8%、30代後半が41・9%を占めた
  出生前診断は出産の判断に大きく影響するため、医療機関側の相談支援体制が重要だ。ただ、流産のリスクがないとされる超音波検査やNIPTを手軽に受けられるようになった分、特に検査実施前の説明やカウンセリングが十分に行われていない状況もあるとみられる
  原告女性が検査を受けたのとほぼ同時に発行された日本産科婦人科学会のガイドラインでは、全ての超音波検査について「事前に文書でインフォームドコンセントを得ることが勧められる」との記載が盛り込まれた。
  今回の訴訟では地裁が発行の時期を踏まえ、そうした運用が「検査当時の医療水準」ではなかったと判断したが、今後同様の訴訟が起これば、文書での同意の有無が重要になる可能性もある。
(藤木祥平)


2025.05.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250520-LXULHNBCBBEOZCIBXIPE5FG5HU/
「俺、分かんなくなっちゃうんだ…」認知症公表・橋幸夫さんの苦闘 事務所社長が明かす

  中等度のアルツハイマー型認知症であることを公表した歌手で俳優の橋幸夫さん(82)橋さんの所属事務所「夢グループ」の石田重廣社長は20日の記者会見で、橋さんが進行する病状に苦しむ様子を明らかにした

  橋さんは最近、周囲に「俺、分かんなくなっちゃうんだ」「みんなに迷惑かけているのかな」などと苦しみを明かし、引退まで口にしたという。だが、医師の助言や歌い続けたいという橋さんの心情を勘案し、事務所や家族側はサポートしていく方針を決めたという。
  石田社長によると、事務所関係者が橋さんの「異変」に気づいたのは昨年夏ごろ。スタッフから「橋さんの言葉がおかしい気がする」と報告を受けた。
 異変の内容は、「同じことを何回も言う」「自分の(音楽の)先生の名前を繰り返し話す」-などで、石田社長は当初、「高齢者ならだれでもあること」と考え、あまり気に留めなかったという。
  ただ、昨秋ごろから症状が顕著になり始めた。石田社長と一緒にステージに立った橋さんは「(グループの)20周年おめでとうございます」とあいさつしたが、その直後に再び「20周年おめでとうございます」と同じ挨拶を繰り返した。その際、石田社長は観客に「橋さんは心配性だから、ぼくが忘れてしまうと思って繰り返すんですね」と冗談めかしてフォローしたという。
  同じ言葉を繰り返すだけでなく、質問とまったく異なる回答をするようなこともあった。今年1月ごろからは、歌詞も忘れることも見られ始めた。
  橋さんの様子を見てきた石田社長が「橋さんにとって一番つらかったと感じたのではないかと思う」ことが、「同じ言葉を繰り返す橋さんの様子を見て、客が笑ってしまうことのようだ」という。橋さんから「自分はまじめに話しているはずなのに、なぜおかしいのか」と相談されたこともあった。
  相談を受けて以降、石田社長は橋さんと一緒にステージに立つように。「笑われるなら橋さんではなく自分(石田社長)が笑われるような雰囲気づくりに徹してきた」と振り返る。
  だが、秋田県にコンサートで訪れた4月、橋さんは自身の居場所すら認識できなくなった。石田社長に「今、どこにいるんだ?」と尋ね、「秋田に何しに来ているんだ?」「俺は歌うのか」などの問答があったという。
  ただ、そうした中でも、橋さんはステージ上で自身の曲が流れると、途端に「人が変わったように歌う姿勢を見せてきた」(石田社長)。
  5月中旬に行われた大阪公演の際には、用意していた3曲を歌いきることができなかった。橋さんは「社長、俺、みんなに迷惑をかけているのかな。俺、何を話したのかがわかんなくなっちゃうんだ。休んで体調を整えてまた仕事をするから」と、手を震わせながら吐露したという。
  しかし、石田社長は「このような病気では、何もしなくなると一気に進行してしまうのではないか」と懸念。「それでも歌っていいと伝えると本当にうれしそうにしており、本当はやはり続けたいのだろう」と斟酌(しんしゃく)。その上で「継続してもらうことが最善」と判断し、橋さんの家族とも相談し、病状の公表に踏み切った。
  「声はつやがあり、伸びやかで音程も狂わない。持ち味は昔と全く変わっていない」と石田社長。「今後はお客様に状況を知っていただいた上で、橋さんにはステージに立ち続けていただきたい。できる限り橋さんを支え続けていく」と話した。


2025.04.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250407-GBB6XVNEGZM3JPOGDIPYKQFONA/
緩やかに死が迫る難病ALS、発症31年の男性が感じた「絶望」と「生きる」という選択肢-安楽死「さまよう日本」(3)
敬称略(小川恵理子 池田祥子)

  《こんにちは よく来てくれました》佐賀市の住宅の一室。ベッドに横たわる中野玄三(70)は、口の形や瞬きなどの「口文字」で意思を伝え、読み上げる介護士を通じて言葉を紡いだ。難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症して、今年で31年になる。

  筋肉が徐々にやせて力がなくなっていくALSは、意識ははっきりしているのに体を動かしたり話したりすることができなくなる。進行性で症状が良くなることもない
  人工呼吸器を付けなければ発症から2~5年で死に至るが、装着する患者は全体の約3割にとどまる。多くは自立心や介護による家族の負担への懸念などが理由という。絶望を感じる患者もいて、2019(令和元)年には女性患者=当時(51)=の依頼に応じた医師が薬物を投与したとして、嘱託殺人罪に問われる事件も起きた
  中野も、当初は緩やかに迫る死におびえたが、やがて、病を受け入れて生き抜く道を選んだ。19年前、人工呼吸器を装着。「目が悪くなれば眼鏡をかけるように、僕にとっては、食べて仕事をして、家族との団欒(だんらん)を楽しむために必要な手段でしかなかった」と話す。
  進行とともに胃瘻(いろう)を造設するALS患者も少なくないが、中野は自力での食事にこだわる。料理を小さく刻み、前かがみで、おろした山芋とともに喉に流す。今も家族と同じ料理を楽しんでいる。
背中押した言葉 「あなたにはまだ時間が残されている」
  最初は小さな違和感だった。地域の運動会で、走り出そうとして後ろ足が地面から離れなかった。その後も異変は続き、何度も検査したが原因がわからない。腕の脱力感など症状は改善せず、焦りと不安から医学書を読みあさり、ALSだと確信した。
  発症当時は立ち上げたアパレル会社が軌道に乗り始めたばかり。今後の生活や幼い子供2人の将来を考えると、恐怖で押しつぶされそうだった。
  ある日、混み合う駅の階段で突然、脚が震えて動けなくなった。周囲の突き刺さるような視線。「社会に自分の居場所はない」。孤独感、疎外感にもさいなまれた。
  絶望から抜け出すきっかけをくれたのは、ある末期がん患者の女性だった。ALSについて話すと、「あなたにはまだ時間が残されているじゃないの」と励まされた。
  「動けなくなっても死ぬわけじゃない。家族を残して死ぬわけにはいかない。治らないなら、工夫して乗り越えればいい」。再び生への意欲を沸き起こした。
「それぞれの選択肢があって当然」
  終末期の延命治療に関し、日本医師会総合政策研究機構が23(令和5)年、20歳以上を対象に行った意識調査(有効回答1162人)では、71・3%が「行わず、自然にまかせてほしい」と回答。「積極的に受けたい」は3・9%だった。

  中野にとり、安楽死や尊厳死は考えたことがなく、賛否もないが、「考えることが悪いわけではない。個々の人生観や価値観に基づき、異なる意見や選択肢があって当然だ」と捉えている。
  ただ、自身は誇りを持って生きる道を歩んでいる。病気や障害があっても「諦めるのではなく、何ができるか考える。そうやって試行錯誤してきた」。その経験は、ブログなどを通じて発信。文字の入力やパソコン操作は、わずかに動く左足の親指でマウスを使って行っている。
  「僕にとって、生きるとはただ命をつなぐだけではなく、自分の価値観に従って希望を実現すること」。難病であっても自分らしい生活を追求してきた。「生きるという選択肢もある。それぞれの選択が尊重される社会であることが重要だ」
敬称略(小川恵理子 池田祥子)


2025.04.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250403-A34BUOKSVFISBDFSJ2QYKROOZU/
虫歯治療後に患者が死亡 不安和らげる「静脈内鎮静法」の注意点 認定医など確認を
(前島沙紀)

  《うたたねしているような心地よい気分》《不安や苦痛を感じることは一切ありません》-。虫歯治療などの際、点滴や注射で鎮静剤を投与する「静脈内鎮静法」について、こう宣伝していた東京都内の歯科医院で令和元年、女性患者が低酸素脳症で死亡した警視庁は今年3月、当時の男性院長らを業務上過失致死容疑で書類送検。施術は適切に行えば安全性が高いとされるが、関係者は病院選びの際に認定資格者を確認することなどを推奨している。

「深く考えず」
  「口の中に器具が入ると、吐きそうになる」。捜査関係者によると、亡くなった女性患者=当時(57)=は歯科治療にそんな不安があり、公式サイトなどで静脈内鎮静法の利点を強調していた東京都新宿区の同院(現在は閉院)を訪れたという。
  女性は鎮静剤を投与された後、舌が気道をふさぐ「舌根沈下」を起こし呼吸が停止するなどして翌日に死亡した
  警視庁捜査1課は今年3月11日、鎮静剤投与の副作用を認識しながら、医療機器を使って血圧や脈拍を測定するなど必要な経過観察を怠ったなどとして、業務上過失致死容疑で当時院長の70代男性歯科医らを書類送検した。
  捜査関係者によると、同院は平成7年の開院以降、静脈内鎮静法を約1700件実施。催眠鎮静剤の過剰投与も繰り返していたとみられるが、男性歯科医は調べに「大惨事が起きていなかったため、深く考えていなかった」と話したという。
リスクも警告
  静脈内鎮静法は患者の不安や恐怖、緊張を抑制できる上、鎮静状態からの回復が早く、多くの場合は外来で受けられる。外科処置を伴うインプラント手術にも活用され、施術中の記憶をなくす効果も期待できるという。
  一方、一般社団法人「日本歯科麻酔学会」が29年に改訂したガイドラインでは、投与の量や速度によっては、低酸素症や心停止などの合併症が発生するリスクも警告。「十分患者監視を行うとともに、それに対する対策を準備しておくことが重要」としている。
  書類送検された歯科医らは催眠鎮静剤に副作用があると知りながら観察を怠り、歯科衛生士らにも指示しなかったとされる。歯科医らは当時、日本歯科麻酔学会には所属しておらず、学会関係者は「会員がモニタリングせずに静脈内鎮静法をすることはない」と話す。
認定施設は症例なし
  16年度に全国の歯科大学や総合病院歯科などを対象に行われた調査によると、歯科治療での静脈内鎮静法は77施設中、70施設で実施。1年間の実施総件数は1万7971件で、5割超の施設が「術中に患者の呼吸抑制と舌根沈下を経験した」と回答した。患者が一時的に呼吸停止に陥ったケースは8施設、心停止は4施設で発生していた。
  一方、日本歯科麻酔学会の認定を受けた32の歯科麻酔学指導施設で26~30年、行われた調査では12万7819件の静脈内鎮静法が実施されたが、麻酔関連の心停止、死亡症例はなかった。
  同学会の宮脇卓也理事長は「日本歯科専門医機構認定の歯科麻酔専門医や、当学会の認定医は歯科麻酔の研修を十分に積んでいる」と説明。静脈内鎮静法を受ける場合、同学会のホームページに掲載されている認定資格者を確認した上で医院を選ぶことを推奨し「歯科麻酔科医が勤務している歯科医院が一目見て分かるようにすることも必要」としている。
(前島沙紀)


2025.03.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250325-2CHEJEHB6NJEPMPCBUI5UNPA64/
遺伝子改変で光るサルが誕生、滋賀医大が成功 新たな治療法開発などに期待

  蛍光タンパク質を作る遺伝子を組み込んで、皮膚が緑色や赤色に光るようにしたカニクイザルを、ウイルスを使わない遺伝子操作手法を用いて誕生させることに成功したと滋賀医大などのチームが25日、発表した。複数の遺伝子を同時に組み込む複雑な操作が可能になり、がんなどのメカニズム解明や治療法開発に役立つことが期待されるとしている。

  チームによると、「トランスポゾン」と呼ばれる動く遺伝子を使って組み込む方法を採用。この方法では、挿入できる遺伝子の数量に制限がないとされる。
  チームはカニクイザルの卵子に、赤色と緑色に光る2種類の蛍光タンパク質を作る遺伝子を精子と一緒に入れ、受精胚を作った。母ザルの体内に戻して生まれてきたサルに対し、発光ダイオード(LED)ライトを当てたところ、光らせることに成功。遺伝子が正しく組み込まれていることを確認できたという。


2025.01.08-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20250108-HKV6JIO2GFMPTJDLWGMDWZ3F2Y/
中国のヒトメタニューモウイルス感染は「予想の範囲内で異常な報告ない」 WHOが公表

  ヒトメタニューモウイルスなどによる呼吸器感染症の増加が報じられた中国の状況について世界保健機関(WHO)は7日、「報告数は冬の時期に予想される範囲内だ。異常な感染拡大の報告もない」との情報を公表した。

  利用したのは、昨年12月29日までのデータ。最も報告が多い感染症はインフルエンザだという。中国の保健当局からは医療体制の逼迫が起きているとは聞いていないとも付け加えた。
  症状が軽くても出歩かないことや、人混みではマスクを着けることなど、通常の対策をとるよう勧めた(共同)


2025.01.06-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20250106-JPDLCWUR3ZPKBCZA3U4OUQSTUI/
中国で呼吸器感染症「ヒトメタニューモウイルス」拡大 インドも感染者確認、ベトナム注視

  中国呼吸器感染症の一つ「ヒトメタニューモウイルス」感染症が拡大していると中国メディアが6日までに伝えた。インド政府も6日、感染者確認を公表した。ベトナム当局は中国の状況を注視していると明らかにした

  2001年に発見されたヒトメタニューモウイルスは乳幼児を中心に感染し、肺炎などの急性呼吸器症状や発熱の原因となる。中国メディアによると、同ウイルスはインフルエンザウイルスと感染症状が似ており見分けるのが困難という
  インド政府は6日、南部カルナタカ州ベンガルールで生後3カ月の女児と8カ月の男児の計2人がヒトメタニューモウイルスに感染していたと明らかにした。保健省が監視を強めている(共同)







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